◇28日 センバツ高校野球大会準々決勝 星稜5―0阿南光(甲子園)

 星稜(石川)は阿南光(徳島)に快勝し、石川県勢初の4強進出を決めた。星稜の戸田慶星(けいた)投手(2年)は入学後初先発で完封した。

 ニュースターが誕生した。戸田が四死球ゼロで9イニングを2安打無失点。テンポ良く投げ込んで、阿南光打線を105球で完封した。

 「今日は絶対に佐宗さんを投げさせたくなくて、僕がいけるところまでいこうという気持ちで投げた。(今までで)一番です」とにっこり笑った。入学以来初先発で見せた快投。2回戦で141球を投げたエース佐宗翼投手(3年)を温存できた。

 チームは昨秋の明治神宮大会で日本一に輝いたが、戸田の秋の登板機会は北信越大会1回戦の2イニングのみ。同学年の道本想投手が佐宗と両輪で活躍し「ベンチで見ている悔しさと、チームが日本一になったうれしさもあった」と振り返る。

 球の強さを持ち味とする一方、不安定な制球が課題だった。冬場は下半身を中心にウエートトレーニングに励み、4キロほど増量。「走るメニューなら1人だけ1本多くしたり、あいつは負けず嫌い」と仲間も認めるほどストイックに追い込んだ。ひと冬を越えて制球が安定し、直球の最速は5キロアップの143キロを計測した。

 ベンチで好投を見守った佐宗は「この冬、チームで一番成長した選手。安心して見ていられたし、自分がしたかったくらいいい投球だった」と褒めちぎった。

 戸田が憧れるのは、OBの奥川恭伸(現ヤクルト)。小学6年だった2019年夏の甲子園大会で星稜を準優勝に導いたエースの姿が星稜中に進むきっかけになった。いつか対面できた時には「ピッチングを教えてくださいと伝えたいです」と照れくさそうに語る。

 偉大な先輩でも成し遂げられなかった春4強。「絶対日本一を取れるように頑張りたい」。能登半島地震が発生した今年。石川県勢の悲願である甲子園初制覇へ、一歩ずつ進んでいく。