ドジャース・大谷翔平の通訳だった水原一平容疑者は12日(日本時間13日)、銀行詐欺容疑でロサンゼルスの連邦地裁に出廷。保釈金2万5000ドル(約385万円)で保釈が認められた。米連邦検察の告訴状によれば、違法スポーツ賭博で約4100万ドル(約63億1000万円円)の負けを抱え、大谷の銀行口座から少なくとも1600万ドル(約24億6000万円)を違法ブックメーカーに不正送金した。

 水原容疑者はサッカーやNBA、NFL、大学アメフトに賭け、決して野球賭博は行わなかったと強調しているが、米メディアはあらためて野球賭博に手を染めていた可能性を指摘している。

 17日の米ジ・アスレチックは、ラトガース大ギャンブリング研究所のリサ・ナウアー所長が「強い衝動を抱えるギャンブラーは、状況をコントロールできるという幻想にとらわれる。スポーツ賭博がスロットマシンなど他のギャンブルと違うのは『自分は専門知識で優位に立てる』という思いに駆られることだ」と語ったと報じた。

 3月に米スポーツ専門局ESPNが行ったインタビューで、同容疑者は「誰かが家に押しかけて来るのではないかと、身の安全も怖かった」と語っている。命の危険さえ感じていた絶望的な状況で、情報を金に換えられる野球賭博に手を出した可能性は高いとの考えは米メディアで根強い。

 米スポーツ賭博サイトのネイトリバーは「水原が負けたのは、いったい『1600万ドル』と『4000万ドル』のどちらなのか? この2つの金額にはあまりにも大きな差がある」とし、説明がつく可能性の一つに「実際には野球賭博があった。水原が野球に関するインサイダー情報を教える代わりに、ブックメーカーが『(無料で賭けさせる)フリープレー』をさせたり、信用貸しの金額を拡大したりしていた」としている。

 また、自身がギャンブル依存症に苦しんだ米放送局FOXスポーツ1のクレイグ・カートン・ホストは「水原一平のような大負けしているギャンブル狂は、自分が一番良く知っているスポーツで負けを取り戻そうとするもの。それは野球だ」と断言。さらに「根っからのギャンブル狂が負けに負け続け、崖っぷちに陥ると、『賭けで穴を埋めるしかない』と考える。じゃあ、何に賭けるか? 『内部の人間しか知らない情報を持っているものに賭けよう。そうだ、エンゼルス戦、ドジャース戦だ』となる。これは自然な流れだ。だって、借金が何百万ドルもあるのに『野球に賭けたことはありません。信じてください』って、そりゃあ無理がありすぎだ。俺は信じない。そういう人生を生きてきたからね」と語っている。

 大リーグは関係者(球団職員や審判も含む)の野球賭博を厳しく禁じ、違反した場合は球界を永久追放処分を科される。1979年に野球賭博で追放されたピート・ローズ氏はいまだ処分が解かれていない。ただし、野球以外のスポーツへの合法賭博は禁止されていない。他のスポーツの『違法な』賭博に関与した場合、処分の軽重はコミッショナー(現在はロブ・マンフレッド氏)の判断に一任される。