◇16日 サッカー パリ五輪アジア最終予選兼U―23アジア杯1次リーグB組 日本2―0UAE(ドーハ)

 この試合だけをみれば素晴らしい試合だったと思う。絶えず主導権を握り、前半27分にセットプレー(CK)から木村がヘッドで先制。さらに後半21分に完璧に崩して川崎がヘッドで追加点を決めた。そして相手のカウンターに気を付けながらしっかりとリスク管理し、完封した。

 準々決勝まで中2日の試合が続く。その過密日程を考慮し、中国戦からスタメンを7人入れ替えて、それでも危なげなく勝ち点3を積み上げ、中国に2―0で勝った韓国と並びB組首位で決勝トーナメント進出を決めた。申し分ない戦いぶり。それでも、あえていうなら、3点目にこだわってほしかった。

 2点目を奪ってからも大岩監督は松木、細谷を投入し、選手のコンディションを考えながら攻撃の手を緩めなかった。その狙い通り、2点目を決めた後、決定的なシーンが3度あった。細谷、松木、佐藤。しかし決めきれなかった。

 中国戦もそうだったが、このチームは選手個々の技術は高い。パススピードが速く、コントロールも正確。戦術的にも全員の共通意識が高く、少ないタッチでボールを動かしながらワイドに攻め、なおかつポケット(相手ゴールエリアとペナルティーエリアの間)に走り込み、そこから速いクロスを入れる。中国戦は不用意な行為で退場者が出て、1―0と僅差の試合になったが、11人で戦っている時間帯は相手を圧倒した。そしてこの日も…。他のチームと比べても質の高さは頭ひとつ、抜けている。

 しかし、短期決戦では何が起こるか分からない。そのことを”ドーハの悲劇”で思い知らされた。31年前のその戦いを目の当たりにしたものとして、8大会連続五輪出場の確率を少しでも高めるためにあと1点を決めてほしかった。

 1993年W杯アジア最終予選、初戦のサウジアラビアに引き分け、2戦目のイランに敗れて崖っぷちに追い込まれた日本代表は、第3戦の北朝鮮に3―0で快勝。試合後、オフト監督に「ナイスゲーム」と声をかけたら「あと2点取れた。得失点差を考えれば決めなければならなかった」と、指揮官はにこりともせずに、そう答えた。その後、日本は韓国に1―0で勝ち、首位に立ったが、最後のイラク戦、追加時間に衝撃的な同点ゴールを喫し、3位に後退してW杯切符を逃した。最終戦で北朝鮮を3―0で破って出場権を得た2位の韓国とは同勝ち点だったが、得失点差、総得点で2点、及ばなかった。

 今大会、準々決勝はA組のチームと戦う。2戦を終え、A組の首位はホスト国のカタール。B組2位通過だと、完全アウェーの戦いを強いられる。第3戦、韓国との戦いを考えると、この日のUEA戦であと1点奪っておけば引き分けでも得失点差で上回ることができる。有利な立場でゲームプランを立てることができるのだ。心配性? 勝負の世界は、なにが起こるか分からない。だからこそ、次の次を考えたとき、3点目を決めてほしかった。

 ◆大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、94年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため?指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)