【大塚浩雄のC級蹴球講座】

◇3日 サッカー パリ五輪アジア最終予選兼U―23アジア杯決勝 日本1―0ウズベキスタン(ドーハ)

 攻撃は、ボールを奪うところから始まる。後半追加時間1分、ハーフウエーラインを越えた位置で、センターバックの高井幸大は相手がコントロールした瞬間を狙いボールを奪取した。

 いい形でボールを奪うといい攻撃が生まれる。高井はそのまま攻め上がり藤田にヒールパス。藤田が荒木に縦パスを入れ、荒木がダイレクトで流し、最後は山田が左足で決めた。

 流れるような攻撃を生み出した高井の守備、そして攻撃参加。まだ19歳ながら192センチの高さを生かし、大会を通して相手のハイボールをはじき返し続けた。そして決勝の大舞台、劣勢の中、最高のカウンター攻撃を生み出した。今大会、U―23日本代表が手にした最大の収穫が高井ではないだろうか。

 まだ線が細いが、当たり負けすることはない。スピードのある選手にも対応できるし、足元の技術もある。難しいプレーを当たり前のように堅実にこなしてしまうからあまり目立たないが、パリ五輪の活躍次第で海外のクラブも注目する存在になるだろう。

 もう一人、今大会、最も輝いていたのがGK小久保玲央ブライアンだ。守りを固めてカウンターを狙ってきたこれまでの相手と違い、ウズベキスタンは真っ向勝負を挑んできた。前線から激しくプレスをかけ、しっかりとつないで押し込んでくる。前半は圧倒されたが、小久保が高いゴールキーピングの技術と決断力、そして的確な指示と時には味方を鼓舞する声でフィールドプレーヤーに勇気と安心感を与え続けた。

 全体が見えているGKの声はディフェンダーの見えない部分をカバーしてくれる。ディフェンダーにとって後ろからの的確なコーチングほど、頼りになるものはない。

 圧巻は1点をリードした追加時間10分のPKストップだ。迷うことなく右に飛び、強いシュートをしっかりとはじき飛ばした。キッカーがちらりとゴール右に目をやったのを見逃さず、右に飛んだ。この決断力こそ、GKにとって大きな武器だ。

 退場者を出して10人になった中国戦でもゴールを死守。そして劣勢に立たされたウズベキスタンでもチームを救った。まさに守護神。193センチの大型GK。年下の鈴木彩艶がA代表で正GKとなっているが、今大会の小久保は技術面でも守備範囲の広さでも素晴らしいものを見せた。パリ五輪でもぜひ、日本のゴールを守ってほしい。同時に、A代表でもその守護神ぶりを見てみたい。

 大会前は不安視されたU―23日本代表。しかし、試合を重ねるごとにチームとして成長し、楽しみな選手が次々に台頭してきた。パリではアジア王者の誇りを胸に、思う存分に戦ってほしい。(写真はAP)

 ◆大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、94年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため?指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)