◇5日 ヤクルト3―6中日(神宮)

 中日の高橋宏斗投手(21)が本来の頼もしい姿を取り戻した。5日のヤクルト戦(神宮)で6者連続三振を奪うなど快投。完封目前の9回に自らの連続失策がからんで3点を失い、悔しさ半分の今季初勝利とはなったが、6―3の快勝に導いた。

 1軍、2軍ともに試合がなかった4月15日。中日の高橋宏斗投手はバンテリンドームナゴヤへ向かった。本拠地のロッカーに残していた自分の荷物を全て片付けるためだった。

 「僕はすぐ1軍に戻って来られると思っていました」。これが3月16日に2軍降格が決まったときの本音だった。内容次第で昇格もあった4月13日のウエスタン・リーグのオリックス戦(佐藤薬品)で6イニング6失点(自責1)。勝負どころでことごとく痛打を浴びた右腕は自身を省みた。

 「今の考えのままでは、野球選手として終わってしまう。そう思ったんです」。そんなに甘くない―。心の底から抱いた危機感は、その2日後に自然とその足を本拠地の荷物整理へと向かわせていた。今のままでは自分の居場所は1軍にないということを自覚するためだった。それから3週間。神宮で腕を振る21歳の表情は少しだけ大人びて見えた。 (長森謙介)