◇番記者が見た

 ドジャースの先発ウォーカー・ビューラー(29)が18日のレッズ戦で2022年5月24日以来、自身725日ぶりの勝利を挙げた。同年8月、2度目の右肘靱帯再建術(トミー・ジョン手術)を受け、昨年は全休。今季復帰して3戦目で6回無失点と好投し、新たな一歩を踏み出した。

 そのビューラーの試合前行動に驚いたのが、同じ歳の大谷翔平だ。5月12日の敵地ペトコ・パークでのパドレス戦。大谷はその日、腰に張りが出た影響で休養した。

 試合開始2時間ほど前。大谷がドジャースのクラブハウスに入ると、ビューラーがいてペトコパークのクラブハウス名物のゲーム台でゴルフゲームに熱中していた。何か、ゾーンに入っているように画面に向き合っている右腕をみて、大谷は「今日、先発だよね?」とウィル・アイアトン通訳に問いかけながら目を丸くしていた。

 「打者・大谷」は緊張しないが、「投手・大谷」は試合前に緊張するとよく話す。試合後も、投手をした時は興奮で寝られないこともあるという。先発投手の試合前のルーティンはそれぞれ全く違う。大谷は出てくる緊張感をコントロールしながら、マウンドに向かう。一方、ビューラーをよく知る米記者は「彼は今、野球人生で一番、不安だと思う。だからゲームをしていたのかも」と語った。

 2度目のトミー・ジョン手術から復帰して、本当に以前のような投球に戻れるのか。5月6日の復帰初戦は4回3失点と不安定だった。5月12日の試合前、ゴルフゲームをしていたのは、不安な気持ちをかき消すためでは? 米記者はそう推測した。12日の試合も4回途中3失点でKOされた。

 ただ、ビューラーはカーショーを敬愛するエース気質で、「少しとがっている感じだけど、本来はメンタルが強い男」という声がある(米記者)。チームもビューラーに期待するのはプレーオフがある10月の戦いだ。多少、シーズンは目をつぶっても、以前のような試合を支配できる投手に戻ることを望んでいる。短縮シーズンとなった2020年を除き、プレーオフで失望が続くドジャース。新加入の大谷とビューラーの「同じ歳」コンビが10月の主役になれば、視界は明るくなる。(阿部太郎)