■BEVならではの駆動方式の変更で、走行フィールや快適性に差はあるのか?

ボルボは、2025年に販売比率のうちバッテリーEV(BEV)を50%にする目標を掲げています。2030年にBEV専業メーカーになると主要自動車ブランドで初のBEV化を宣言したとおり、着実に計画を実行しています。

ボルボC40の2024年モデル
ボルボC40の2024年モデル

その先兵を担ってきたのが、XC40とC40で、XC40はBEVのほかに、48Vマイルドハイブリッドを設定。ほかにも、2023年11月中旬に発売される予定のコンパクトSUVのEX30、3列シートSUVのEX90(日本導入時期などは未定)など、新世代BEVも控えています。

ボルボC40の2024年モデル
ボルボC40の2024年モデル

2021年にボルボ初のBEVとして発売されたC40 Rechargeは、クロスオーバータイプのSUV。XC40は、コンパクトSUVとして日本導入以降、約1年待ちの納期もあったほど人気を誇ってきました。

以前お伝えしたように、C40/XC40は、2024年モデルでシングルモーター仕様に変更。しかも、前輪駆動から後輪駆動に変わるという、フルモデルチェンジなどを除き、同じ世代では例を見ない大胆な変革を遂げています。

2024年モデルでは、グーグル搭載のインフォテイメントシステムの進化(精度)も実感できた
2024年モデルでは、グーグル搭載のインフォテイメントシステムの進化(精度)も実感できた

2024年モデルの中でC40に試乗する機会がありましたので、駆動方式が変わった最新仕様のご紹介をしていきます。

駆動方式の変更に伴い、モーターが自社設計(デザイン)に変わったほか、駆動用バッテリーは従来の69kWhから73kWhに向上。

最高速リミッターは従来の160km/hから180km/hに引き上げられています。バッテリー容量のアップにより、航続距離は502kmから590km(WLTCモード)に延びています。

ボディカラーでは、「クラウドブルー」、「ヴェイパーグレー」の新色に加えて、メタリックペイントが無償化されています。

ボルボC40のフロントシート
ボルボC40のフロントシート

そのほか、「Ultimate」にピクセルLEDのヘッドライトの標準化、「Plus」に新デザインの19インチアルミホイールが用意され、PM2.5センサー付「エアピュリファイアー」が標準装備されています。

後席頭上まわりは身長171cmの筆者であればそれほど窮屈には感じられなかった
後席頭上まわりは身長171cmの筆者であればそれほど窮屈には感じられなかった

前輪駆動から後輪駆動に変わったことで、前後重量配分が改善しているほか、低重心化、ハンドリングの向上などのメリットがあるとしています。

一方で、後輪駆動に変わったことで、天候などの条件次第では走行安定性などに不安を覚える方もいるでしょう。ボルボでは、最新の電子安定性制御システムと重量配分の改善により、安定性、安全性の面で同等レベルにあるとしています。

●特に高速道路では「ワンペダルオート」が走りやすい

ボルボC40の2024年モデル
ボルボC40の2024年モデル

また、走り(回生機能)の面では、「ワンペダルオート」機能が追加されているのもトピックス。アクセルオフ時に、前方車両を検知していない場合、コースティング(滑走)が可能になり、先行車との距離に応じて自動的に制動力を制御する機能です。

メルセデス・ベンツもEQSやEQEシリーズで、先行車に応じて回生具合を調整する「インテリジェント回生」を設定しています。

C40(XC40)でも「ワンペダルオート」に入れておくと、特に速度域の変化が激しい首都高速などで重宝しました。「ワンペダルオート」は、アダプティブクルーズコントロール(ACC)をオフにしておくことが条件になります。先行車を検知して自動で制動力を調整するため、高速道路ではACCのように減速していく感覚も印象的。

ボルボC40の2024年モデルの走り
ボルボC40の2024年モデルの走り

なお、回生機能では、従来の「オン」、「オフ」も用意されています。「オン」にすればかなり強めの回生ブレーキが得られ、「オフ」にすれば文字どおり、回生ブレーキはかからず、滑るように走り、自在にロールするような姿勢が得られます。「オフ」にすると慣れるまで、かなりの減速フィールが得られる一方で、運転していても酔いそうな感覚もあり、同乗者であればなおさらそうなるかもしれません。

「ワンペダルオート」機能が追加された2024年モデル
「ワンペダルオート」機能が追加された2024年モデル

シングルモーター、後輪駆動になったC40に乗り込み、街中から走り出すと、BEVらしいスムーズな発進性を享受できるだけでなく、中間加速の鋭さ、力強さも印象的。内燃機関がFFからFRに変われば走りは劇的に変わるでしょうが、BEVであるXC40の場合、前輪駆動から後輪駆動に変わったことで、特に市街地でそこまでの違いは抱きませんでした。

首都高速や郊外路にシーンを移すと、後輪駆動らしいすっきりしたステアフィール、前後重量配分の改善効果を実感できます。よりシャープでスポーティになった軽快感のあるハンドリングは、C40(XC40)の新たな魅力。

20インチを履く「Ultimate」
20インチを履く「Ultimate」

また、乗り心地は、路面が良ければフラットライドである一方で、荒れた道路では多少揺すぶられ感もあるものの、良好な乗り味が得られるのも美点です。

フロントフード内にも積載スペースを用意
フロントフード内にも積載スペースを用意

クロスオーバータイプのC40でも、大人4人で十分に快適に移動できる居住性に加えて、フラットで多彩なアレンジ(フロアボードの折りたたみなど)を備えるラゲッジを有するなど、使い勝手の良さもピカイチです。

なお、後席の広さ(頭上まわり)やラゲッジスペースなどを優先するのであれば、もちろんXC40が有利になります。

2024年モデルでは、先述したように、バッテリー容量のアップにより航続距離が502kmから590km(WLTCモード)に大幅に伸張。BEVの泣き所である一充電あたりの航続距離が延びたことで、1台で日常使いからファミリーユース、アウトドアレジャーなどでもより使いやすいBEVに進化を遂げています。

●お買い得感の高い「Ultimate Single Motor」

ボルボC40のラゲッジスペース
ボルボC40のラゲッジスペース

2023年モデルと比べると、航続距離の伸張や走りのブラッシュアップ、メタリックペイントの無償化、PM2.5センサー付「エアピュリファイアー」の標準化などが盛り込まれた一方で、シングルモーター仕様同士の比較だと、下記のように40万円の価格アップとなっています(原材料費などの高騰もあるはず)。

とはいえ、人気グレードになりそうな「Ultimate」は、ツインモーター仕様からシングルモーター仕様に変わったことで、20万円のプライスダウン。既述のように、航続距離や爽快な走りが得られますから、2024年モデルの「Ultimate Single Motor」の買い得感が目を惹きます。

ボルボC40の充電イメージ
ボルボC40の充電イメージ

なお、「Ultimate」には、パワー・チャイルドロック、スウェードテキスタイル/マイクロテック・コンビネーション、harman/kardonプレミアムサウンド・オーディオシステム(600W、13スピーカー)サブウーファー付、ピクセルLEDヘッドライト(フル・アクティブ・ハイビーム付)/LEDフロント・フォグライト(コーナリング・ライト機能付)、20インチアルミホイールが標準になります。もちろん、ボルボ自慢の安全装備(ドライバーサポート機能)は全車標準です。

●C40ボディサイズ:全長4400×全幅1875×全高1595mm

●C40価格(2024年モデル)
「C40 Recharge Plus Single Motor」:699万円
「C40 Recharge Ultimate Single Motor」:739万円

●C40価格(2023年モデル)
「C40 Recharge Plus Single Motor」:659万円
「C40 Recharge Ultimate Twin Motor」:759万円

(文:塚田 勝弘/写真:井上 誠)