「生活保護を受けているのに、ギャンブルなんてしてもいいのか?」

生活保護を受給している人がパチンコを楽しむ姿を見てそんな風に思うかもしれないが、実は問題ない。

しかし、負けたのに「収入扱い」となり、受給額が減らされることもあるので注意が必要だ。

この記事では、生活保護制度の仕組みや生活保護受給者がパチンコをする際の注意点について紹介する。

■生活保護制度とは

生活保護制度とは日本国憲法第25条1項「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」を保障するため、国や自治体が設けている生活扶助制度だ。

生活保護制度における扶助は具体的に8種類あり、食べ物・服・光熱費を扶助する生活扶助、家賃などをカバーする住宅扶助、病気やケガの治療を扶助する医療扶助などがある。

年金や児童扶養手当などを受給している場合でも、生活保護制度によって足りない分を扶助してもらうことが可能だ。

■実際いくら支給される?

生活保護は、下記の計算式により支給金額が決まる。

【最低生活費】−【世帯全員の収入合計額や年金、預貯金など】=【生活保護費の支給額】

最低生活費は、「地域・年齢・世帯構成・個別の事情により決まる。日本弁護士連合会の資料から、最低生活費の具体的な金額を紹介する。

Aさん世帯の場合 (東京都23区で一人暮らし、45歳)
最低生活費は13万5,140円(11〜3月は3,080円加算)

Bさん世帯の場合 (大阪市在住、3人家族(母子家庭)、母33歳・子14歳・子8歳)
最低生活費は26万6,090円(11〜3月は4,570円加算)

Cさん世帯の場合 (宮崎市在住、2人家族、夫73歳・妻68歳)
最低生活費は14万3,070円(11〜3月は3,630円加算)

引用:日本弁護士連合会

この最低生活費から世帯全員の収入合計額や年金、預貯金などを差し引いた金額が生活保護費の支給額だ。

■生活保護でパチンコは認められる?注意点あり

生活保護を受ける人は、生活保護法により、年齢や体力に応じて働き、支出を節約して生活の維持に努めなければならない。

しかし、生活保護費の使い道は基本的には自由であり、パチンコに行くこと自体に問題はないとされるケースが多い。ただし注意が必要だ。

●注意点1 パチンコで最終的に負けても収入扱いとなる

パチンコで勝ったお金は収入扱いされる。ここで注意したいのが、パチンコで1万円勝ったあとに2万円負けると1万円の赤字だが、収入としては勝った1万円を申告する必要がある。つまり、最終的にパチンコで負けたとしても、収入認定をされた分は次回から受給額が少なくなる可能性もあるのだ。

●注意点2 収入を申告しないと不正受給となる

パチンコで勝った収入を申告しない行為は、不正受給とみなされる。その結果、生活保護費の返還や追加徴収が求められるケースがあるため注意が必要だ。

■生活保護受給者はパチンコができるが収入が増えれば生活保護費は減る

生活保護受給者がパチンコをしても罰則などはない。ただし、パチンコで勝った分は収入としてみなされ、認定され翌月の生活保護費が減額される。つまり、生活保護費の使い道は自由ではあるが、生活保護受給者はギャンブルしても儲からない制度設計になっているのだ。収入を申請しないと、不正受給としてみなされ、後から生活費の変換を求められたり、追加徴収されたりするリスクもある。そのため、生活保護受給者は、パチンコから距離を取った方がいいと言えるだろう。

文・勝目麻希(ファイナンシャル・プランナー)
新卒で総合職としてメガバンクに入行し、法人融資・金融商品販売等を担当。自分の金融知識や実務経験を活かしたいと独学でライターの道へ。現在はファイナンシャル・プランナーの知識を活かして金融系メディアを中心に執筆。