■エクストレイルのプロパイロットを試す

道のカーブや高速路出口でも頭のいい走りをしてくれました。
道のカーブや高速路出口でも頭のいい走りをしてくれました

今回はエクストレイルの360°セーフティアシストのプロパイロットを実際に使ってみてどうだったかを述べ立てていきます。

●おさらい・エクストレイルの360°セーフティアシスト

まずは前回の復習。

エクストレイルに与えられている日産の先進安全デバイス・360°セーフティアシストの内容は以下のものでした。

1.インテリジェントエマージェンシーブレーキ
2.インテリジェント FCW(前方衝突予測警報)
3.インテリジェント DA(ふらつき警報)
4.プロパイロット(ナビリンク機能付)
5.プロパイロット緊急停止支援システム(SOSコール機能付)
6.SOSコール
7.インテリジェント BSI(後側方衝突防止支援システム)+BSW(後側方車両検知警報)
8.インテリジェントルームミラー
9.エマージェンシーストップシグナル
10.RCTA(後退時車両検知警報)
11.プロパイロットパーキング
12.踏み間違い衝突防止アシスト
13.インテリジェントアラウンドビューモニター(移動物検知機能付)
14.インテリジェント LI(車線逸脱防止支援システム)+LDW(車線逸脱警報)
15.標識検知機能
16.アダプティブLEDヘッドライトシステム
17.ハイビームアシスト

すべての機能を試すことはできないため、以下の7つについて試しました。

順を変えながら述べていきます。

1.プロパイロット(ナビリンク機能付)
2.インテリジェント LI(車線逸脱防止支援システム)+LDW(車線逸脱警報)
3.標識検知機能
4.アダプティブLEDヘッドライトシステム
5.インテリジェントアラウンドビューモニター(移動物検知機能付)
6.プロパイロットパーキング
7.インテリジェントルームミラー

このうち、プロパイロット、インテリジェントLI、標識検知機能の3点については本稿で、他は別の項で採りあげます。

●実践・プロパイロット

1.プロパイロット(ナビリンク機能付)
2.インテリジェント LI(車線逸脱防止支援システム)+ LDW(車線逸脱警報)

都合よく取扱説明書の記載を丸パクリすると、プロパイロット(ナビリンク機能付)の機能内容は次のとおり。

1.車速・車間制御機能

・先行車を検出していないときは、ドライバーがセットした車速を維持するように制御。
・先行車を検出しているときは、ドライバーのセット車速を上限に、車速に応じた車間距離を保つ。

2.ルート減速支援機能

・地図データから、カーブ・出口などの道路形状に合わせて車速を調整する。

3.制御速度支援機能

・標識検知機能で検出した速度を、自動または手動で設定車速に反映する。

4.ハンドル支援

・レーン中央付近を走行するようにハンドルをコントロールし、ドライバーのハンドル操作をアシストする。

これらひとつひとつを、例えばトヨタ、ホンダなら「Toyota Safety Sense」「Honda SENSING」のうちの一員に充てているだけですが、日産は「360°セーフティアシスト」の中でさらにグループ化し、「プロパイロット」と称しています。

何といっても2015年だったか、「2020年に自動運転車を販売」と狼煙(のろし)を上げた日産だけに、何か名称を与えてもうひとくくりしたかったことがうかがえますが、機能は他社のものとそう大きく変わるところはありません。

さて、これら4つの働きをさせるためのセンサーは3つ。

プロパイロットを使うのに必要なセンサー類
プロパイロットを使うのに必要なセンサー類

フロントグリルNISSANマーク裏に隠されたフロントレーダーセンサー、フロントガラス上部のマルチセンシングフロントカメラ、そして前バンパーナンバープレート高さに6つセットで仕組まれたソナー・・・レーダーとソナーーは前方車両を捉える役を担い、カメラはレーン認識およびハンドル操作のために用いられます。

スイッチはハンドル右スポークにあり、こちらも配列や機能は他社ACCとおおかた同じ。

というわけで、ここではプロパイロットの中の「車速・車間制御機能」をアダプティブクルーズコントロール=ACCと呼ぶことにします。

インパネ右ひざ部にもうひとつ、ハンドル支援スイッチがある。
インパネ右ひざ部にもうひとつ、ハンドル支援スイッチがある。
プロパイロット関連のスイッチ
プロパイロット関連のスイッチ

右のタテ長の、いっけん指紋に見えて実はまわりから楕円でクルマを囲んでいるマークのプロパイロットスイッチを押すと、プロパイロットのシステムが起動し、待機状態となります。

その左のスイッチはシーソースイッチで、下チョン押しの「SET-」でそのときの車速を上限にACC走行に移行、ACC中のチョンチョン押しで1km/h刻みで設定車速ダウン。押してACCキャンセル、キャンセル中の上「RES+」チョン押しでキャンセル前の状態に復帰し、ACC中のチョンチョン押しで1km/h刻みで設定車速アップ。

さきの指紋スイッチの下は車間距離設定スイッチで、追従走行時の先行車との距離を、長・中・短の3段階で調整。

もうひとつ、計器盤右側・ハンドル右スポークに隠れる位置にハンドルマークのハンドル支援スイッチがあります。

プロパイロットスイッチを入れると、待機状態がメーター右上の白の指紋マークで示され、SET-押しのACC作動で青に変化。

メーター表示では、パワーメーターと速度計の間にエクストレイルのリヤスタイルイラストと両脇レーンが表示され、先行車をキャッチすると先行車の絵が現れます。

ハンドル支援をONにしているときにACCを作動させると、クルマが「ハ。わかりました。あとは私が。」といわんばかり、まるでドライバーからハンドル権限を奪い取ったかのようにハンドルががっちり固くなり、即、自車をレーンセンターに収めてのACC走行に入ります。

同時に同じマークの赤ランプもメーター盤右下に出現
同時に同じマークの赤ランプもメーター盤右下に出現
ハンドルから手を離し気味にするとただならぬ赤の警告画面が現れる。
ハンドルから手を離し気味にするとただならぬ赤の警告画面が現れる。

だからといってドライバーが調子に乗って手放したり、もしくはただ軽く手を添えるだけの状態をしばらく続けたりすると警告してくるし、ドライバーが強制的にハンドル操作をすればハンドル硬さが途端にほどけ、ハンドル権限は返還されるわけですが、このあたりの動作はなかなかメリハリがあります。

渋滞などで停車中の表示。
渋滞などで停車中の表示。

先行車が停止すればこちらも停止、先行車発進後にアクセルペダルかRES+をチョン操作すると発進。先行車の動きに応じてクルマが自発的に発進することはありません。

ただ、いまどきこれほどのデバイスの持ち主の割に「先行車発進お知らせ機能」がないのは大きな痛手。これこそ筆者がほしいと思っているものなのに。マツダCX-60試乗のときに書き忘れましたが、CX-60にもなかったヨ。

ましてやCX-60やエクストレイルほどの値段のクルマなら、先行車発進にとどまらず、青信号&矢印信号の告知までしてほしいぞ!

それはともかく、この手のACCはよほどの安い軽自動車でもない限り、新車を買えば必ずついてくるといっていいくらい広まり、いまやどこのメーカーのものでも大きな範囲での働きに差はなくなりました。操作法さえ心得てしまえば何の違和感を抱くことなく使うことができるでしょう。

ただし、ただのACCだと思って使っているとクルマが思わぬ挙動を示したり、メーターに見慣れぬ表示が現れたりするので、やはり取扱説明書の熟読が必要です。

ACC走行中、設定車速以下の先行車に到達して自車速度が落ちたとき、追い越しのために右ターンシグナルを点灯して右車線に移るとクルマ自ら加速します。これは追い越し操作をアシストする「追い越し時加速機能」の働き。トヨタにも似たような機能があり、以前採り上げたヴォクシーのToyota Safety Senseはターンシグナルを灯すや車線変更からやってのけましたが、プロパイロットはそこまで面倒は見てくれません。車線変更のためのハンドル操作はドライバーに委ねられています。

新しいクルマだなと思わせるのが「ルート減速支援機能」で、これは高速道路や自動車専用道路のACC走行時、ナビ地図データを拾ってカーブや出口などに合わせて車速を調整するものです。

ルート支援機能のカーブマーク。
ルート支援機能のカーブマーク。

この機能が働いているときは速度計内に小さなカーブ路のマークが表示され、筆者も首都高走行中にこの表示を確認しましたが、白状すると、筆者はこの制御による加減速が、混雑気味だったこともあって実感できませんでした・・・それだけ自然に機能していたということにしよう(いい訳)。

そのいっぽう、高速路走行時、関越道上り終点・練馬IC出口に差し掛かったからだと思うのですが、出口ETCレーンに接近するにつれて車速が落ちたのは明らかに「ルート減速支援機能」によるものだとわかりました。このときは先述カーブ路マークの部分に出口マークが出るのだそうで、「おっ!」と感嘆していたのでまぬけにも見逃しましたが、おそらく出口マークが出ていたはずです。

このぶんならETC各レーン状況と後続車の有無を併せ見て、空いているレーンにハンドル誘導するようになるのもそう遠くないことでしょう。完全なる自動運転がどうこう取り沙汰される昨今、実験段階では実現できているにちがいありません。

2.インテリジェント LI(車線逸脱防止支援システム)+LDW(車線逸脱警報)

名のとおり、自車位置を車線中央に収めて走らせる機能で、「車速・車間制御機能」の項で述べたハンドル支援スイッチを入れると起動。これは全機種標準装備で、すなわちプロパイロットなしのクルマにもついている・・・というわけで、プロパイロット付車でもACCとは無関係に単独でも機能します。

スイッチ押しの待機状態ではメーターの車両イラスト脇のレーンが灰色、レーンを検知すると緑に変わり、ハンドル支援状態となります。

前述のとおり、ACC使用時はハンドル権をクルマが奪取(?)し、クルマ自らレーンセンターを走ろうとするので、基本的に自車が白線寄りになるはずがありませんが、ACC未使用で試しに白線に近づくとレーンがオレンジ色に変化、同時にメーター内では先述の赤いハンドルマーク(この色が赤鬼のような赤でけっこうこわい)、メーター右下に同じハンドルマークの赤い警告灯が点灯し、ドライバーにハンドル操作を促します。

それでもとぼけてそのままでいると、ハンドルが動いてレーン収束に努める・・・別段他社の同類デバイスと変わったところはありません。

3.標識検知機能

フロントカメラでキャッチした道路標識をメーター内に表示する機能。

検知するのは以下の3つ。

・進入禁止
・一時停止
・最高速度

検知する標識は「進入禁止」「一時停止」「最高速度」の3つだけなのはもの足りない。
検知する標識は「進入禁止」「一時停止」「最高速度」の3つだけなのはもの足りない。

たった3つなのはもの足りず、「指定方向外進入禁止」と、もうひとつ、個人的なことをいうなら、過去に見落としてケーサツからえらい目に遭わされた「転回禁止(Uターン禁止)」も見逃さずにキャッチしてほしいところ。

さて、検知する標識がたったこれだけの割に、ここにも「新しいクルマだな」と思わせる機能が潜んでいます。

この「標識検知機能」はただ標識をメーター表示するだけにとどまらず、プロパイロットの「制御速度支援機能」にも用いられているのです。

これは走行中に制限速度が変わって新たに検知した最高速度をACCの設定車速に反映させる機能で、検知した車速を自動で切り替えるオートモード、ドライバー手動で変更可能であることを知らせるにとどめるマニュアルモードのふたとおりがあります。

ACC走行時、オートモードなら速度計内の設定車速表示の脇に「A」が表示され、例えば設定車速が80km/hで走行中に100km/h標識を検知すると、クルマが自動で設定車速を80km/hから100km/hに引き上げます。

「↑」が出れば、もうちょい速度を上げてもいいことを知らせ・・・
「↑」が出れば、もうちょい速度を上げてもいいことを知らせ・・・

マニュアルモード時、検知標識の速度より設定車速が上であれば「↓」が現れて「あのう、設定車速を落としたほうが・・・」と進言し、下であれば「↑」が表示され「もうちょい設定車速を上げても大丈夫ョ」と教えてくれる・・・上げるも下げるもドライバー判断なのがマニュアルモードで、そのときは「SET-」「RES+」でチョンチョン操作。

要するに、検知した制限速度値に対して設定車速をどうするかを自動なり手動なりで切り替えて走らせる機能なわけ。

速度標識に設定を合わせる機能なので、速度変更はひたすら丁目の丁かというとそうでもなく、割合に柔軟性があって、カスタム画面で、検知した標識速度に対する再設定速度を-10km/h〜+10km/hの範囲で1km/h刻みで設定することも可能です。

「追い越し時加速機能」であれ「ルート減速支援機能」であれ「標識検知機能」であれ、「おおっ!」と思う付加機能ですが、事前知識なしでいると「クルマが勝手に加速した!」「速度が落ちた!」と勘違いしかねないので、使いこなすには取扱説明書の熟読が必須です。

日産のプロパイロットに限らず、この手のデバイスを要らないというひとがいますが、筆者は、運転が苦手or下手というひとが緊張しいしいで自前運転するくらいなら、いっそクルマ任せで走るほうがずっと安全だろうという考えを持っています。道走っていると、ほんとひどいのがいるからねェ。

ましてや遠方でひと仕事終え、疲れ気味で長距離運転をしなければならない場合や、身体にハンディキャップを背負っているひとには大きな助けになることでしょう。

筆者がACCおよびその付加機能を使うたびに抱く疑問…というよりも懸念は、運転不得意の自認派が、果たして複雑な取扱説明書に読破してまで(!)、この支援デバイスを使ってくれるかどうかということです。

決めつけるわけじゃありませんが、運転不得意組がクルマ好きだったり、新技術に興味を抱いているとは思えない・・・現状、運転ベタを運転上手のようにしてくれる先進デバイスをメーカーの意図どおりに使いこなしているのは、実は本当に使ってほしい不得意組ではなく、初めから運転上手orクルマ好きなひとなのではないか。

自己矛盾だなぁと思うのは、機能や操作法について、もし自分がプロパイロットの設計者だったらやはりこのようにするだろうなとは思う反面、いざ使う段になるとちょっと複雑というか、使いこなしにくいなと感じることです。

肯定しながらもどこかひっかかりを感じる操作法が解決されればいいと思うと同時に、ユーザーもクルマを買ったらただただ浮かれて乗りっぱなしでいるのではなく、自分が買った現代的なクルマを現代的に使いこなすためにきちんと勉強する必要があると思います。

というわけで今回はここまで。

次回は「メーター編」です。

(文/写真:山口尚志 モデル:星沢しおり)

【試乗車主要諸元】

■日産エクストレイル G e-4ORCE アクセサリー装着車〔6AA-SNT33型・2022(令和4)年7月型・4WD・ステルスグレー&スーパーブラック2トーン/ブラック内装〕

★メーカーオプション(税込み)
・アダプティブLEDヘッドライトシステム(オートレベライザー付):3万3000円
・クリアビューパッケージ(リヤLEDフォグランプ):2万7500円
・BOSE Premium Sound System(9スピーカー):13万2000円
・ステルスグレー/スーパーブラック 特別塗装色:7万7000円
・ルーフレール+パノラミックガラスルーフ(電動チルト&スライド、電動格納式シェード付):18万1500円

★販社オプション(税込み)
・グリルイルミネーション(インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):6万3840円
・日産オリジナルドライブレコーダー(フロント+リヤ):8万6302円
・ウインドウ撥水 12ヶ月(フロントガラス+フロントドアガラス撥水処理):1万1935円
・ラゲッジトレイ:1万7800円
・デュアルカーペット:3万9800円
・滑り防止マット:1980円
・アドベンチャーズパッケージ(リモコンオートバックドア・インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):16万3118円(セット内容:フロントアンダーカバー、リヤアンダーカバー、フロントバンパーフィニッシャー(ブラック))
・フードディフレクター:2万9800円

●全長×全幅×全高:4660×1840×1720mm ●ホイールベース:2705mm ●トレッド 前/後:1585/1590mm ●最低地上高:185mm ●車両重量:1880kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:235/60R18 ●エンジン:KR15DDT型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:1497cc ●圧縮比:8.0-14.0 ●最高出力:144ps/2400-4000rpm ●最大トルク:25.5kgm/2400〜4000rpm ●燃料供給装置:ニッサンDi ●燃料タンク容量:55L(無鉛レギュラー) ●モーター型式(フロント):BM46 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:204ps/4501-7422rpm ●最大トルク:33.7kgm/0-3505rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●モーター型式(リヤ):MM48 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:136ps/4897-9504rpm ●最大トルク:19.9kgm/0-4897rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):18.3/16.1/19.9/18.4km/L ●JC08燃料消費率:-km/L ●サスペンション 前/後:ストラット式/マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格478万8700円(消費税込み・除くメーカーオプション)