茨城・那珂市にある「木内酒造」は江戸時代から続く老舗酒蔵。この蔵の魅力は日本酒や梅酒にとどまらず、世界に評価されているクラフトビール「常陸野ネストビール」や、国産ウイスキー「日の丸ウイスキー」など挑戦し続けていること。本店のショップでは有料できき酒もできるので、お気に入りの1本を探しに出かけてみませんか。ウイスキー造りで生み出されたおいしい「常陸野ハム BARREL SMOKE」も注目の逸品です。

創業200年、幕末に誕生した銘酒「菊盛」

「木内酒造」の創業は江戸時代後期の1823(文政6)年。本店がある那珂市鴻巣で初代の木内儀兵衛氏が酒造りを始めました。日本酒「菊盛(きくさかり)」という銘柄名は、近所で交流のあった水戸藩士であり学者の藤田東湖の思想「尊王攘夷」を支援するために名付けたといい、歴史を感じます。

「木内酒造」で使っている仕込み水は、酒造内の地下からくみ上げる井戸水。那珂川や久慈川などに挟まれたこの地は水が豊富で、良質の水があることが酒造りの決め手になっています。仕込み水はクセがまったくなく、飲みやすくおいしい水ですよ。

「木内酒造」の日本酒の特徴は、すべて酒米のみで造る純米酒。酒造りにかかせない米は、酒米「山田錦」の本場・兵庫県の契約農家をメインに、茨城県内の契約農家からも仕入れています。酵母は蔵で開発した自家培養のものを使用。

10月終わりから5月の連休ごろまで、蔵人たちが丁寧に仕込んだ「菊盛」は、純米大吟醸など13種類の定番酒と季節限定のお酒がそろいます。米と水と職人の手仕事がうまく融合し、おいしいお酒が醸されていますよ。今後は個性豊かな日本酒を造ることに力を入れていくといいます。

「木内酒造」が造るお酒がすべてそろう

那珂市鴻巣にある本社「木内酒造」の敷地内には、きき酒処を併設するショップ「木内酒造 本店」、蔵造りの建物でおいしい手打ちそばが味わえる「蔵+蕎麦 な嘉屋」、「菊盛」などのお酒を醸造する酒蔵、オリジナルビール造りが楽しめる「手造りビール工房」があります。

大正時代に建てられた酒蔵の長屋門の一部と蔵を利用した趣あるショップ内にはお酒がずらり。銘酒「菊盛」をはじめ、極上の「木内梅酒」や、多くの人々から愛されている「常陸野ネストビール」、2022年に発売開始した国産ウイスキーの「日の丸ウイスキー」、ジャパニーズクラフトジンの「日の丸ジン 蔵風土」など、お酒が好きな人にはたまらないラインナップです。

日本酒好きにおすすめの「菊盛」は

「菊盛」のおすすめの日本酒を2本ご紹介しましょう。まずは「菊盛 山廃原酒」。自然の乳酸菌を使って発酵させ、山廃仕込みで造った純米酒です。1年以上、酒蔵の中で熟成させているそう。酸味があり、日本酒好きの方におすすめです。

もう1本は「菊盛 ピュア茨城純米大吟醸 風と水」。「ピュア茨城」とは、同じ名前で茨城県内の酒蔵が独自に造っているお酒のこと。茨城県産の酒造好適米「ひたち錦」と、茨城県産酵母を共通で使いますが、各蔵の個性が出ているお酒です。「菊盛」は、華やかな香りと柔らかな風味を感じられる純米大吟醸を造っています。

しゅわしゅわスパークリングのお酒が人気

日本酒初心者や女性が飲みやすい、人気のお酒もご紹介しましょう。淡いブルーのさわやかなボトルは純米発泡清酒 木内「淡雫」。アルコール12度の低アルコールで、やや甘口の発泡性純米酒です。白麹を使っているので、すっきりした酸味が特徴です。

ピンクのボトルの「淡雫HOPS」は、「淡雫」にビールに使う希少なホップを漬け込んだもの。化学反応で淡いピンク色になるそうですよ。ホップがはいることで、ほんのりビールのような味わいで甘みもあり、さわやかな柑橘系の香りも楽しめます。

「木内梅酒」は「常陸野ネストビール」の製造過程から生まれた梅酒。ビールを蒸留したスピリッツに、県産の梅の実を漬け込んで造ったお酒です。ホップのさわやかな香りも楽しめますよ。体にやさしい果糖のみを加え、さわやかでさらりとした甘みの梅酒に。炭酸を加えた「しゅわしゅわ木内梅酒」は、微炭酸が心地よいです。缶タイプもありますが、こちらは少しドライに仕上げているそう。

淡い色合いの瓶も美しいこの3本は、持ち帰りもしやすく、飲み切りやすい300ml。しゅわしゅわと発泡するスパークリング系三姉妹は、おみやげにもぴったりです。

蔵元ならではのきき酒処で1杯いかが

ショップの奥には、有料の「きき酒処」があります。本格的なバーのようなおしゃれで落ち着いた空間。カウンター席に座り、試してみたいお酒を注文しましょう。どんなお酒が飲めるかは、聞いてみてくださいね。

きき酒処で味わえる春のお酒は「菊盛 純米吟醸うすにごり酒 春一輪」。酵母が活きた状態で瓶詰した、うすにごりの純米吟醸酒です。瓶内で2次発酵しているので、シャンパンのようなさわやかな発泡が楽しめます。

フクロウでおなじみの「常陸野ネストビール」

ビール好きならおなじみのフクロウラベルがついた「常陸野ネストビール」。日本酒の醸造技術や水を生かし、ビール造りも始めました。1996年の誕生以来、国内外のコンテストでさまざま賞を受賞しているビールです。現在は15種類の定番に加え、季節限定があります。

なかでも「ニッポニア」はオールジャパンで造る珍しいビール。日本のビール麦「金子ゴールデン」を茨城県の農家とともに復活させて作った麦芽、日本で開発されたホップ「ソラチエース」、酒造りで使用している酒米「山田錦」を使って造っています。コクもあり、すっきりとした味わい。ホップのさわやかな柑橘系の風味も感じられますよ。

きき酒処にはビールサーバーがあり、ホワイトエール、ペールエール、アンバーエール、季節のビールの4種類が味わえます。「BEER TASTING SET」は、3種類のビール各180mlが飲み比べできるセット。一番人気の「ホワイトエール」は小麦麦芽を使い、ほどよい酸味となめらかなのど越しで、苦みが少ないビール。オレンジピールやナツメグなども加えているので、ほのかな柑橘系やスパイスの香りもします。

お酒のおつまみにぴったりの特製ハム&ソーセージ

2023年に誕生した「常陸野ハム BARREL SMOKE」。ウイスキー造りの過程で排出された麦芽粕を蒸溜所近くで養豚している「常陸野ポーク」の飼料の一部に使い、その豚でハムやソーセージを作っています。仕上げにはウイスキー樽をチップにしてスモーク。「木内酒造」ならではの風味豊かな逸品です。

ハムやソーセージ、スモークベーコン、発酵サラミなどさまざまな種類があるので、お酒にあわせておみやげにいかがでしょうか。

幸運を呼びそうなフクロウグッズをおみやげに

愛らしいフクロウをモチーフにしたアイテムも種類豊富。ビールがおいしく飲めるグラスや陶器のビアマグは、お酒好きならぜひ欲しいアイテム。マグネットタイプのフクロウの栓抜きや、北海道の染物店が染めたオリジナルの手ぬぐいなどもおすすめです。

これからの季節は日本酒やビールも一層おいしく感じる時期。ぜひお気に入りを探してみてはいかがでしょうか。敷地内にある手打ちそば店「蔵+蕎麦 な嘉屋」で食事をしたあとに、ショップを訪ねるプランもおすすめですよ。