セレブ御用達のデスティネーションスパ、タイ・ホアヒンにある“チバソム”が待望の2軒目をオープン。2022年カタールにお目見えした「ズラル・ウェルネス・リゾートbyチバソム」にはアラビアで受け継がれる伝統療法をベースに、あらゆるウェルネスのメソッドが大集結! カウンセリングによって組まれた3日間の濃密滞在メニュー+1日観光で、果たして何が変わった? 最旬のホリスティック・ウェルネス・リトリートをリポート!
カラダにいいことに専念できる、究極のウェルネスリゾート
ドーハ・ハマド国際空港で迎えのBMWに乗り込み、カタールの北端に向けてドライブすること約1時間半。土砂漠の一本道を走り抜けた先に、蜃気楼のように現れた「ズラル・ウェルネス・リゾートbyチバソム」。
タイ・ホアヒンでウェルネスのパイオニアとして世界的な評価を得ているチバソム・インターナショナル・ヘルスリゾート(以下、チバソム)の2軒目にあたり、2022年3月に満を持してグランドオープン。チバソムで30年近く蓄積したノウハウと、現代流に再解釈したアラビア・イスラム伝統医学(TAIM)を融合した独自のメソッドでゲストそれぞれのゴールを目指す、ウェルネス特化型リゾートです。
約28万平方メートルもの敷地は浅瀬に面したオンザビーチにあり、敷地内には水路のように人工ラグーンが配置されています。乾いた砂漠の先に、うるおいに満ちた水のある風景は、まるでオアシスのよう。ちなみに、“ズラル”とはアラビア語で“純粋な水”を意味します。
リゾートはロビーやオールデイダイニングのあるメイン棟を中央に、「セレニティ」と「ディスカバリー」の2つのエリアに分かれています。
60室ある「セレニティ」は16歳以上の大人オンリーで、それぞれの部屋の広さは60平方メートル以上。客室から直接人工ラグーンに入ることができ、リゾート気分も味わえます。
「セレニティ」にある、1室のみの「カタフスイート」は、このリゾートのハイエンドな客室。サウナ付きのリビング&ダイニング棟と、スチームルーム付きのマスターベッドルームの2ユニットからなります。大きなプライベートプールもしつらえられたこの客室は、いわば“リゾートの中のリゾート”といったところでしょうか。
あらゆる世代がウェルネスに親しめる“ファミリーウェルネス”
もう一方の120室からなる「ディスカバリー」は、すべての年齢に対応するファミリー向け。家族みんなでウェルネス体験をシェアすることで、絆を深めるとともに、子供にとっては予防医学や自然と調和した健康的なライフスタイルを学べる格好の場となります。「セレニティ」に比べると、こちらはカジュアルな雰囲気。客室は44平方メートル以上あり、コネクティングルームも。
「セレニティ」と「ディスカバリー」、どちらの客室タイプも、部屋に用意された装備やアメニティは配慮の行き届いた、気の利いたものばかり。たとえば、動きやすい作務衣(さむえ)風リゾートウエアや、タオルや水着を持ち歩くのに便利なバッグは、滞在中に大活躍。1日に3枚(スポーツウエア)まで、ランドリーが無料なのもうれしいサービスです。
ベッドはカラダの形を形状記憶するフォームと、ポケットスプリングのマットレスを組み合わせたもの。バスローブは肌触りが気持ちよく、吸水性の高いエジプシャンコットンを使用。バスアメニティにはビタミンが配合されています。とにかく、五感で心地よさが味わえるのです。
ちなみにチバソムは、あらゆる世代がウェルネスに親しむ“ファミリーウェルネス”を、ブランドビジョンに掲げています。チバソムCEOのクリップ・ロジャナスティン氏は昨年11月に開催された、世界中のホスピタリティ業界が一堂に会する「第17回グローバル・ウェルネス・サミット」にて登壇し、ファミリーウェルネスの取り組みについて、ズラル・ウェルネス・リゾートby チバソムでのケースを紹介しました。
できることなら年1回、自分をオーバーホールするために訪れたいウェルネスの園
本格的なウェルネスリゾートには、ウェルネスの哲学や施術の方法の根底に、古くから受け継がれている伝統医学の礎があるものです。具体的にあげるなら、アーユルヴェーダや中国伝統療法など。ここズラルがウェルネス哲学の指針にしているのは、アラブ・イスラム教諸国で育まれた“TAIM(Traditional Arabic & Islamic Medicine)”。日本ではあまり聞き馴染みのないものですが、世界三大・伝統医学のひとつとする説もあるものです。
TAIMとは、かつて中東が世界の文化の中心であった時代、交易によってインド・中国・パキスタン・ペルシャに伝わる伝統的療法が伝播し、イスラムの宗教的影響が加わったもの。その考え方をざっくりまとめると、こうなります。
人のカラダは4つの体液からなり、それぞれに1熱性、2冷性、3湿性、4乾性の性質があります。このバランスが取れた状態が健康な状態であり、バランスがくずれると病気になってしまいます。食べ物や飲み物、薬などもこの4つの性質に分かれ、その人の性質に合ったものをバランスよくとることが大切。また、人はこの4つの性質によって性格や行動パターンまでも異なります。
ズラルでは、このTAIMに基づき、カタールというアラビアンな空気と海辺の穏やかな環境のもと、充実したファシリティや経験豊かなスタッフのサポートを受けながら、自分に合ったウェルネスに勤しめるのです。
ウェルネス三昧の休日、いざスタート!
滞在初日にカウンセリングを受け、予約時にリクエストしたプログラムの微調整をして、スケジュールを組んでもらいます。タイムスケジュールはゲストによって異なりますが、たとえば私はこんなメニューを体験しました。
腹部にフォーカスしてもみほぐし、活力を長続きさせる「マッサージ・アル・バティン」、頭からつま先までのリズミカルなマッサージ「リラクシング・アル・カダム」などのトリートメントから、ストレッチクラスや暗闇でろうそくに集中するメディテーション、サウンドセラピーやクッキング&ミクソロジークラス、TAIMについてのお話などまで、その内容はバラエティ豊か。
プログラムの合間は、豊富なウェルネス施設を利用しない手はありません。ピラティスなどのスタジオやワッツプールなどを備えたフィットネスパビリオン、ハマムやサウナ、プールなど各種の水にまつわる温浴施設などが勢ぞろい。ストレッチやタイチなどのデイリープログラムに参加するのもおすすめです。また、64種類のオーガニックなハーブティーが並ぶ「ティー・ハウス」で好みのお茶をブレンド、あるいは「アポセカリー」で薬草を調合してもらうこともできます。スキマ時間もムダになることはありません。
もちろんヘルシー! こんなに美味しいのは、もはや反則!?
今回の滞在で目指した目標のひとつは、ダイエット。滞在中は1日1,000キロカロリーに抑えて摂取するよう、スタッフからアドバイスを受けました。けれど、このアドバイスを実践するには強靭な精神力を要しました。悩ましいことに、ズラルは食事が美味しいのです。
「セレニティ」「ディスカバリー」それぞれにメインダイニングがあります。朝食はヘルシーなビュッフェに加え、ホットディッシュのオーダーもできます。ビュッフェに並ぶメニューは、パン類がグルテンフリーなのはもちろんのこと、おなかのクレンジングが期待できる炭を練り込んだクロワッサンや、非加熱の生はちみつなど、気になるものばかり。それぞれにカロリーも明記されています。
一食300キロカロリーまでと心に誓い、食べたい気持ちをガマン。けれど、2日目のランチですでに目標のカロリーをオーバー、ファインダイニングの「アカシア」のディナーでついに「食事制限は家に帰ってから!」と、欲望を解放。もともとズラルの料理はTAIMの思想にのっとったバランスのとれたものですから、カラダにいいわけです。よって無理にガマンするのは逆効果。
ちなみに「アカシア」でのある日のディナーは前菜、メイン、デザートの3コースからなり、パンを合わせても371キロカロリー。メインの「穀物で飼育されたテンダーロインビーフ 照り焼きソース」は、たんぱく質14グラム、炭水化物3グラム、脂質8グラムでなんと140キロカロリー。調理法でカロリーを抑えてくれているので、大満足なディナーが楽しめました。
Zulal Wellness Resort by Chiva-Som(ズラル・ウェルネス・リゾートbyチバソム)
所在地 Al Ruwais, Qatar
電話番号 +974-4477-6500
https://www.zulal.com/
古関千恵子(こせき ちえこ)
リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/
文・撮影=古関千恵子