「コーチェラ」に出演

 米カリフォルニアで開催された世界最大級の野外音楽フェス「コーチェラ」に出演した韓国の5人組ガールズグループ・LE SSERAFIM(ルセラフィム、以下ルセラ)のSAKURAこと宮脇咲良が、晴れ舞台となったステージについて異例の“声明文”を発表し波紋を広げている。

 同グループは日本時間14日午後2時50分(現地時間13日午後10時50分)に登場。ライブ会場となった「Sahara(サハラ)」はコーチェラ全体の中で最大の規模を誇るサブステージで、ルセラにとってはアメリカの音楽フェスデビューを飾る歴史的イベントとなった。22年5月2日にデビュー以来、2年もたっていないアーティストがコーチェラのSaharaステージに出演を果たすのは極めて異例で、ルセラの人気がアメリカでも拡大していることを物語っている。

 メンバーのチェウォン、サクラ、ウンチェ、カズハ、ユンジンは、ルイ・ヴィトンのアーティスティック・ディレクターを務めるニコラ・ジェスキエールが今回のステージのために特別に製作したきらびやかな衣装を身にまとい、美しいボディーラインを披露。だが、ステージでのルセラのパフォーマンスに関して、賛否両論が渦巻き炎上する騒動となっている。

 K-POPに詳しい音楽ライターがこう明かす。

「実はメンバーの生歌が不安定でX(旧ツイッター)には『歌が下手』『他のK-POPアーティストに比べて実力不足』などと批判する声があふれています。19年に4人組K-POPガールズグループのBLACKPINKがSaharaステージでK-POPガールズグループ史上初のコーチェラデビューを果たしているため、歌唱力をめぐってルセラとBLACKPINKが格好の比較対象となっています。ルセラ批判を繰り返しているのはBLACKPINKの英語圏ファンが多いという印象です。BLACKPINKの記録をルセラが上回ってしまったためですが、まるで“内ゲバ”を見ているかのようです」

大迫力のステージ

 こうしたアンチに敢然と立ち向かったのがサクラだ。15日夜に所属事務所HYBE(ハイブ)が運営するグローバルファンプラットフォーム「weverse」を更新し、以下の文章を投稿した。

≪ステージに立つというのは、どういうことなのか。
完璧な姿を見せることなのか?
観客を楽しませることなのか?
あるいは、1つのミスも許されず、ステージをこなすことなのか?
人によって基準は違うでしょう。
どんなステージか?によっても、変わってくるでしょう≫

 この文面から伝わってくるのはコーチェラの舞台を単なる歌唱披露の場ではなく、アーティストと観客が一緒になって盛り上がることを最優先する姿勢だ。実際に現地でルセラのステージを見た観客が本番の様子をこう明かす。

「Saharaステージは客で埋まり外まで人があふれる熱気でした。1曲目の『ANTIFRAGILE』からすでにサクラの気合いが半端なく、まるで“覚醒”したような迫力でしたし、中盤の『UNFORGIVEN (feat. Nile Rodgers)』で伝説のギタリストのナイル・ロジャースがサプライズで登場すると、さらに熱気が高まりました。彼はデヴィッド・ボウイ、ダイアナ・ロス、デュラン・デュラン、ミック・ジャガーなどを手がけた大プロデューサーですからね。英語曲の『Perfect Night』では大合唱と大歓声。メンバーは息切れや音程のズレなど多少のミスはあまり気にせず、ステージの熱気をぐんぐん高めようとしているように見えました」

 サクラはこうも投稿している。

≪私は、このステージを私たちを知らない人たち、曲を初めて聞く人にも、とにかく楽しかった!今日という日が、忘れられない素敵な一日だった!と感じてもらえるような、そんなステージにしたかったです。≫

LAの砂交じりの風

 前出の音楽ライターがこう感想を語る。

「宮脇はHKT48時代からステージ慣れしているアイドルですが、コーチェラのステージは人格が変わったみたいに観客をあおっていました。それがフェスだからです。生バンドを入れステージと観客が一体となって熱気を高め盛り上がることがフェスの最大の楽しみです。それだけに批判の声には我慢ができなかったのでしょう。現在26歳と最年長なので、まだ17歳の末っ子ウンチェや年下メンバーの努力の結晶を無駄にしないために体を張って投稿したのだと思います。確かに歌唱に不安定な部分はありましたが、ルセラのダンスの激しさ、難しさはあまりに有名です。全10曲、40分強に及ぶステージを息切れ一つなしで続けられるはずがありません。これはスタミナや歌唱力の問題というより曲の配列の問題。事務所はメンバーの体が途中で少し休めるようなセットリストを工夫すべきですね」

 ルセラは2月29日にMnetの音楽番組「MCountdown」に出演した際、アンコール・ステージで新曲「Easy」を披露。その時の生歌が「音痴」と酷評されたこともあって、韓国のオンラインコミュニティでは今回も「歌唱力が酷い」の声が上がっている。その一方で、60年以上の歴史を誇る英音楽紙「NME(ニュー・ミュージカル・エクスプレス)」が運営する音楽サイト「NME.com」は今年のコーチェラを特集し、ルセラのステージの点数を、ヘッドライナー(主役アーティスト)を務めた米ラッパーのタイラー・ザ・クリエイター、歌手のラナ・デル・レイと同じ「星4つ」と高く評価した。

 ちなみにコーチェラにはこんな“魔物”も潜んでいるようだ。

「アジアにルーツを持つアーティストが出演したコーチェラの88rising FuturesステージにNumber_i、YOASOBIらと一緒に立った韓国のR&B歌手BIBIは、22年のコーチェラのステージについて『歌おうと息を吸った瞬間、LAの砂交じりの風を吸い込んでしまいゴホッという声しか出なかった』と番組で明かしていました。歌って踊るK-POPアーティストにとって決して環境の良いフェスではないのです。ステージ名が“Sahara(サハラ)”“Mojave(モハーヴェ)”“Gobi(ゴビ)”などと名付けられているようにコーチェラがコロラド砂漠の一角にあるコーチェラ・バレーで開催されていることを忘れてはなりません」(同)

 ルセラは現地時間20日(日本時間21日)、コーチェラ2度目のステージに立つ。セットリストに変更があるのか、気になるところだ。

デイリー新潮編集部