「“爵位が欲しい”とよく言っていた」

 昭和天皇の第四皇女、つまり上皇陛下の姉君に当たる池田厚子さん(93)が養子を迎えていたことが分かった。天皇陛下にとっては新たな「いとこ」である。“息子”となったのは「ジューC」で知られる菓子メーカー「カバヤ」の代表。異例の組み合わせの理由とは……。【前後編の後編】

 ***

 今年3月、菓子メーカー・カバヤの野津基弘(現在は「池田基煕」と改名)代表から、岡山を中心とした国会議員や財界人、旧華族の下に、一斉に手紙が届けられたという。その内容は、昭和天皇の第四皇女の池田厚子さんと養子縁組をしたとのこと。背景にはどのような事情があったのか、池田さんが園長を務める池田動物園を支援する「池田動物園をおうえんする会」の清水努会長が言う。

「池田家には跡取りがいないでしょう。16代も続いた家ですから、地元では心配する声は多かった。厚子さんも池田家の親族から養子は探していたそうですが、なかなか見つからなかった」

 そこで基弘氏に白羽の矢が立ったのでは――と見られるのだ。

 昨年の8月には、カバヤの取締役に池田厚子さんが就任している。

「この話は、基弘君にとっては、実に“良い”話であったと思いますよ」

 と述べるのは、基弘氏の古くからの知人である。

「彼は野津家の長男に生まれ、若い頃はアメリカにいた。帰国後、カバヤに入社しますが、その頃から、エスタブリッシュメントが大好きで……。“爵位が欲しい”とよく言っていましたね」

“これで日本を変えたい”

 実はカバヤと華族とは結び付きがある。野津家の先代の妻、つまり基弘氏の母(故人)は琉球王朝・尚(しょう)家の出身であるという。

「彼女は尚本家の現当主の姉です。尚家はれっきとした旧華族ですから、基弘君は自分も『霞会館』に入れないものかと常々口にしていました」(同)

 霞会館とは、旧華族の関係者のみが入れる親睦団体のこと。当主以外は入会NGで、他にも厳しい条件があるとされる。

「尚本家の当主であれば、霞会館に入る資格を持つ。そんなこともあり、一時、基弘君は叔父である当主の元に養子に入ろうとしていたほどでした」(同)

 なるほど、そうした“大望”を抱く基弘氏にすれば今回の養子入りは願ったりかなったりということだろう。

 岡山財界の関係者によれば、

「本人は今回の養子縁組について“池田さんからお願いされたので……”と口にしているそうです。一方で、ごくごく近しい人には“これで日本を変えたい”などとも言っていますね。社内にチームを作り、霞会館に入会するための策を練っているそうです」

「足腰は弱っていますが、お元気でした」

 ちなみに、池田厚子さんはこの3月で93歳となったご高齢の身。

 自宅は動物園の中にあり、ここでお手伝いさんの助けを借りながら生活しているというが、心身の具合はいかがだろうか。

 園の関係者によれば、

「1月、あいさつに行きましたが、足腰は弱っていますが、お元気でしたよ」

 とのことだが、

「5年ほど前までは、ポストまで歩いて新聞を取りに行くとおっしゃっていましたが、今は通例の取締役会にも出ていらっしゃらないそうです」(別の関係者)

 ともいうから、やはり年相応のご容態ということであろう。

 池田動物園にこの度の養子縁組について尋ねると、

「お答えできません」

 カバヤの持株会社にも聞いてみたが、

「プライベートに関する内容ですので、回答を控えさせていただきます。池田厚子氏は弊社の取締役でございますが、それに伴うご質問につきましてはいずれも公表しておりません」

 と言うのみであった。

「10年ほど前に相談された」

「10年ほど前になりますか。厚子さんから“養子を取りたいんだけどどういう人がいいか”との相談を受けたことがあります」

 と振り返るのは、前述の霞会館で理事長を務める鷹司尚武(たかつかさなおたけ)氏。

 鷹司氏は同家に昭和天皇の第三皇女・和子さんが嫁ぎ、また、尚武氏自身が伊勢神宮の大宮司を務めたこともあって、厚子さんと近しい間柄だ。

「その際は“それならお身内が良いのでは”“関係の薄い人を迎えると厄介ですよ”と申し上げた記憶があります。養子縁組のことを知ったのは、昨年の秋ごろのことでした。厚子さんのお見舞いに行った際に、その旨を伺いましたよ。野津さん自身も、この2月か3月には、霞会館にあいさつに来ていましたね」

 続けてこう語る。

「養子縁組に当たっては、厚子さんと野津さん、双方の意思があって行われたことではないでしょうか。ただ、あくまで個人的な意見を述べれば、この場合、やはり家の存続ということに重きが置かれるわけです。その点、野津さんにはお子様がいない。その意味では、急いで決めなくてもいいという思いもあり、厚子さんの周囲にはそう伝えてきた。ただ、厚子さんもご高齢ですから、そうも言っていられなかったということでしょう。いずれにせよ、池田家は400年続いてきた名家。厚子さんがお元気でいられるうちはいいでしょうが、その後はどうなるか。今後の成り行きを見守っていきたいと思います」

 折しも5月26日、全国植樹祭が岡山で開催され、天皇皇后両陛下も臨席される。改めて、皇位継承の議論にも、より関心が深まろうというわけである。

 前編では、動物園の関係者が明かしたカバヤと池田家の結び付きについて報じている。

「週刊新潮」2024年4月18日号 掲載