自民党の派閥裏金事件を巡る処分に関して、安倍派「5人衆」の一人だった萩生田光一前政調会長が後ろ指をさされている。

「2728万円もの裏金は、自民党内で3番目の多さ。それでも“1年間の党役職停止”という、痛くも痒くもない処分に終わりました」

 と言うのは政治部デスク。

「早くも本人は復権に向けて意欲的ですが、党内には“処分が軽すぎる”“なんでアイツだけ”と、強い不満がくすぶっています」

 騒動の発覚以降、言い訳と逃げ口上ばかりが目につく萩生田氏だけに、足を引っ張る動きも出始めた。自民党関係者が解説する。

「党執行部は、裏金の額が萩生田氏より少ない1542万円だった世耕弘成前参院幹事長を離党勧告に、100万円の西村康稔前経済産業相を党員資格停止1年と予想より厳しく対応した。萩生田さんの役職停止との処分は名ばかりのものに過ぎず、それどころか東京都連の会長職は続投となった。“都連会長の職は党本部の役職ではない”との理屈ですが、詭弁ですよ」

「森さんは暴露されることを恐れている」

 不可解な決着に、党内には「いまでも“ウラで何かあったのでは?”といぶかる声が多いのは事実」(自民党ベテラン議員)という。

「森喜朗元総理が岸田文雄総理に“萩生田だけは助けてくれ”と頼んだとか。森さんは萩生田さんが大のお気に入りで、以前に同じ安倍派の松野博一官房長官(当時)を外して、彼を後釜に据えるよう総理に求めていたのは有名な話だよ」(同)

 当の萩生田氏にしても、

「裏金や統一教会、五輪汚職などの不祥事に絡み、萩生田さんは森さんに関する秘密を少なからず把握しているとか。森さんは、それが暴露されることを恐れているんでしょう」(同)

 つまり、二人は文字通り一蓮托生の身。強力な後ろ盾を持つ萩生田氏は、岸田総理を相手にえげつない駆け引きを行った。総理の周辺からはこんな声が。

「総理に森さんからの働きかけがあったのは間違いない。実際、森・萩生田が結託して安倍派議員をたきつけ、“反岸田”で動かれたら、弱小派閥出身の総理はひとたまりもないよ」

 萩生田氏については、

「自分の処分が下るまでの間に子分を引き連れて“ポスト岸田”をうかがう茂木敏充幹事長と会食し、総理に“分かってるだろうな”と言わんばかりの圧力をかけた。やむなく総理は萩生田に対し“9月の総裁選で安倍派を岸田支持でまとめる”ことを条件に、不自然に軽い処分を容認したんです」

周囲は“誰が付いていくものか”

 無論、保身にきゅうきゅうとする萩生田氏には反発が根強い。

「あの男は幹部だったくせに、上の指示に従っていただけの中堅や若手を守ろうとしない。派内のほとんどの議員が“誰が付いていくものか”と吐き捨てていますよ」(安倍派中堅議員)

 自民党都連関係者も、うごめき出した反萩生田の動きを証言する。萩生田氏は今月28日投開票の衆院東京15区補選を巡り、小池百合子都知事が擁立した乙武洋匡氏の推薦を画策していた。

「都知事とのパイプを生かして圧勝し、復権を果たす腹だったようですね」

 が、自民党は乙武氏への推薦方針を撤回した。

「党所属の都議や職員の多くも反対でしたが、最大の理由は萩生田が復権することへの嫌悪。実は、公明党都議たちも萩生田失脚に向けて動き出しています」

「週刊新潮」2024年4月25日号 掲載