第106回全国高校野球選手権大会の地方大会が始まった。虎戦士にとっても忘れられない夏の大会。阪神ドラフト3位・山田脩也内野手(18)が仙台育英時代を振り返る。高2の夏に東北勢初となる甲子園優勝に貢献し、連覇を目指した最後の夏は準優勝。喜びも悔しさも知る先輩が後輩にエールを送った。

 仙台育英時代に山田は甲子園に3度出場した。高2の夏、高3の春、夏。「楽しかったですし、悔しい思いもしました。いろんな感情が湧きましたし、本当にいい経験をさせてもらいました」。高校3年間は人生にとって大きな時間だったと振り返る。

 21年に入学。センバツで8強入りした直後のチームだったが、1年春に遊撃のレギュラーに定着した。夏の甲子園出場も最有力候補。しかし、宮城大会4回戦で仙台商に1点差で敗れた。「甲子園は簡単には行けないところだと実感しましたし、出たいという気持ちも強くなりました」と特別なものだと実感した。

 初めて聖地の土を踏んだのが2年夏。初の大舞台で歴史を変えた。全試合に遊撃で出場し、春夏通じて東北勢初となる甲子園優勝に貢献。「3000を超える高校の頂点というのは本当に新鮮というか、実感はなかなか湧かなかったです。仙台駅ではたくさんの人が祝福してくれましたし、いろんな方から注目してもらった」。深紅の大旗が“白河の関”をようやく越えた瞬間だった。

 悲願を達成し、3年生は卒団。新チームには山田が主将に就任した。周囲が期待するのは連覇。甲子園に出ることは当然とされる中で、戦う重圧を感じていたという。「勝って当たり前と思われる苦しさはありました。何としても勝たないといけない。甲子園に出ないといけないという思いでした」と、責任感を背負いながら3年春のセンバツ出場を果たした。

 「一生に1度といったらあれですけど。高校生活のほとんどを野球に打ち込んできたからこそ、味わえる3年最後の夏の大会は最高の舞台だと思います」

 高校野球の集大成となった夏の甲子園。決勝で慶応に敗れたが、悔いはなかった。それ以上に仲間と3年間取り組んだこと、最後までやり遂げたという思いが強かった。

 「勝つことも大切ですけど、楽しむことも大事。自分たちは楽しむことをテーマにやっていましたし。楽しんだほうがいい結果も出ると思う。自分は帽子に『笑顔』と書いてました。笑うことがいい影響を与えると思います」

 それぞれの思いで挑む夏。山田は勝敗よりも仲間と戦う1分1秒を大切に思う。(デイリースポーツ・井上慎也)