フェアレディZのカスタマイズ&チューニングは今も世界中で様々なアプローチが試されている。この個体は埼玉県の「水上自動車工業」が、自らのもつ技術をつぎ込んで製作された、究極のカスタムZだ。とはいえ乗りにくさは皆無。カスタムの新たなステージに到達した、奇跡の1台だ。

圧倒的スタイルと究極のカスタマイズ。

パンデムのボディキットを加工して装着。これにスピードフォルムのリアバンパーや定番デザインの三分割リップを組み合わせて独特のスタイルに。比較的凹凸の目立たない白い塗装だが、それでもなおワイルドだ

旧車に快適に乗るためのアプローチは数あるものの、ここに紹介する個体は、見た目からは想像もできない方法で追求した一台。オーナーの坂本和則さんの情熱と水上自動車の高い技術力で成し遂げた意欲作だ。

モノトーンのカラーとホイールデザイン、そしてエアロパーツの組み合わせで旧車っぽさを払拭

まずエンジンはL型にこだわったオーナーのリクエストで、乗りやすくパワフルなエンジンを製作することからスタートした。排気量はL28をベースにワイセコピストンを使って3リッター化。これに水上自動車のオリジナルカムや、ポート研磨、ビッグバルブを含めたヘッド加工をプラスして中低速域からトルクを発生し高速域までスムースに回るエンジンとなった。

そんなパワーを受け止めるべくトランスミッションは、S15用のNI SMO製6速マニュアルを換装。リアデフもファイナル4.1のLSD付きR200を採用。駆動系全体に手が加えられている。

次に増加したパワーをしっかり受け止めて路面に伝えるべく、ホイール&タイヤは、かなりワイドなものを選んでいる。ホイールはオーナーがスペシャルオーダーで製作したというオリジナルデザインで、フロント16×9.5J、リア17×12Jという前後異径の極太リムをにしている。これにアドバンネオバを前後に装着する。

そしてそんな強大なパワーをより有効に活用するために、この車両は、ボンネットやリアゲートだけでなく、なんとルーフもドライカーボンで製作したカスタムメイドのパネルを使用している。驚くほど軽量なので、全体の車両重量を低減するだけでなく、車体の重心を大幅に下げることに成功しているのだ。

ワイドボディをまとって走る姿は迫力そのもの。また見た目だけでなくカーボンルーフなどによる低重心化によって、驚くほど俊敏に動く。カーボンボンネットに合わせて、フロントバンパーもブラックアウトしている

合わせて張り出したホイールを納めるべく、パンデムのボディキットをベースに、リアはさらに1インチ拡幅して装着。結果、このブラック&ホワイトのワイドボディが完成したのだ。

実はこれほど見た目はスパルタンながら、快適に乗るというキーワードはしっかりと追求している。ビンテージエア製のエアコンを装着し、電動パワステも装着。さらにロベルタカップ装着で、緊急時の車高調整も可能となっている。

フロントフード、ルーフ、リアゲート、リアのガーニッシュはすべてドライカーボンで製作された超軽量のパネルに交換される。これによって大幅な軽量化とともに低重心化を実現している フロントフードはカーボン風とは異なり、ドライカーボン独特の「本物感」が漂う。もちろん軽量で強度がある ミラーはブラックタイプをチョイス ホリの深い4本スポークのホイールはオーナーがオーダーしたカスタムメイド。フロント16×9.5J、リア17×12Jという極太サイズを履く リアガラスはアクリルを使用し軽量化 リアバンパーはスピードフォルムのパーツを使い バンパーレス化。マフラーはワンオフのステンレス製となる

1977 FAIRLADY Z|強大なパワーを有効活用するカスタマイズ仕様。

エンジンはL28改3リッター仕様。水上自動車でポート研磨やビッグバルブを組み込んだヘッドや、オリジナルカムを使用し、乗りやすい3リッターに。ボディ剛性確保のためにストラットタワーバーを装着している。

キャブレターはソレックスのφ 50で、排気熱の悪影響を排除すべくエキマニとの間には遮熱板を装着する。

ラジエターはあえてアルミ製ではなく、純正スタイルのままコア増しをしたものにしている。経験上、街中ではスティールラジエターの方がよく冷えるとのこと。

見た目こそオリジナル然としたダッシュ周りだが、実は細部をアップデートすることで、快適に走るための工夫が随所に詰まっている。NISMO6速のシフトレバーは違和感ない位置に収まっている。

メーター類は全てスタック製で統一。タコメーターの周囲にはワーニングランプを配置。ステアリングコラム上にはAF計をセットする。

エアコンは、アメリカヴィンテージエアー社製のユニットを使ってコンパクトにマウント。ダッシュ中央にビレットの操作スイッチが備わる。

点火系はMSDで強化。助手席足元に設置している。

そしてシートはBRIDEのヒストリックスローバケットを左右に搭載。旧車のハイパフォーマンスカーに最適なシートのひとつだ。

ボディはアルミ製の11点式のロールバーをセットする。またリアのストラットタワーバーにはシートベルトマウントを追加し、タカタの4点式ハーネスを装着する。

BRIDEのシートはローバック形状で旧車に似合うだけでなく、筐体にカーボンを採用し驚くほど軽量なのも水上さんがチョイスした大きなポイントだそう。

センターコンソール後部にはロベルタカップの操作スイッチを設置。段差などを超える際には、スイッチ操作で車高が上がる仕組み。

バケットシートが深いため、ステアリングは脱着式となっている。

ラゲッジスペースはカーボンパネルで覆われ、その下には安全タンクを装着。綺麗に並んで配置されたアルミパイプの配管が美しい。

この角度から見ると、如何にリアホイールが張り出しているかがよくわかる。パンデムのフェンダーをさらに1インチ拡幅させたのだ。

【SPEC】
●エンジン:L28型改3リッター ●トランスミッション:NISMO6速MT(S15用加工) ●サスペンション:アラゴスタ車高調+ロベルタカップ ●ホイール:カスタムメイド(F)16×9.5J(R)17×12J ●タイヤ:ADVAN NEOVA(F)225/45-16(R)245/40-17

【DATA】
MIZUKAMI AUTO
〒362-0808 埼玉県北足立郡伊奈町小針新宿717-1
TEL048-729-1330
営業時間:9:00〜20:00

※情報は取材当時のものです。

(出典/別冊Lightning Vol.231「VINTAGE AUTO 快適旧車のススメ。」)

著者:Lightning 編集部