JR秋葉原駅の電気街口から総武線ガード沿いに西へ。1990年代〜2000年代初頭には数多くの新作・中古・裏ゲーム、自作PC関連ショップが軒を連ね、現在はメイドカフェや推しグッズショップなどが並ぶ雑居ビル群。その一角にある「スーパーポテト」で、オレたちの想い出が詰まったお宝が全世界へ向けて高額取引されている!?

コロナ禍の巣ごもり需要で超高額落札続出!

2020年初頭から全世界を未曾有の混乱に陥れたコロナ禍は、一方で巣ごもり需要を呼び、世界中にコンピュータゲームのプレイヤーを増加させた。その流れに乗ってか、テキサス州ダラスに本拠地を置く多国籍オークションハウス、偶然にも「昭和50年男」版元と同様な社名の「ヘリテージ・オークションズ」が、驚愕の競売結果をSNSで発信。

まずは21年4月2日、NES(海外版ファミコン)用ソフト『MegaMan(ロックマン)』14万4,000ドル(約1,600万円)、同5日、NES『Super Mario Bros.』66万ドル(約7,300万円)。さらに3ヶ月後の7月9日には、NES『The Legend of Zelda(ゼルダの伝説)』87万ドル(約9,600万円)、トドメが同12日、NINTENDO64用ソフト『Super Mario 64(スーパーマリオ64)』156万ドル(約1億7,200万円)の超高額落札だ。

もっともこの一連の流れは、直後の8月にオーストラリアの調査ジャーナリストであるユーチューバーによって、中古ゲーム市場のバブルを人為的に引き起こしたものとして、糾弾されもした(もちろんオークショニア側は否定)のだが。そんなニュースの見出しだけを拾い読み「ひょっとしたらオレが昔買ったレトロゲームも高額に?」と目論んだ筆者は、押し入れの古いダンボール箱を開き、4ハードのソフトを1本ずつ小脇に抱えた。

実際、昭和50年男世代が愛したほとんどのゲーム(コンシューマ、アーケード問わず)は、現行機向けに当時のまま移植され、数百円からダウンロードして購入できる状況。人気作ならリメイクやリマスターにもこと欠かず、ブツ自体に強烈な思い入れがなければ、手放すのもやぶさかでない。

メイドの誘惑を断ちいざ混沌の店内へ

こちらのビルの3〜5階が今回取材したスーパーポテト秋葉原店。3階はFC、SFC、MDなどカセット系、4階はPC-E、PSなどディスク系で、5階にはなんとゲーセンも!

そうは言っても大手リサイクルチェーンではザックリ値付けでガッカリ不可避…。ならば、その道のプロに委ねるべし! というわけで向かったのは、日本が誇るデジタルシティ、東京・秋葉原の「スーパーポテト」。株式会社 J・フィールド運営の中古ゲームショップとして大阪・日本橋に誕生し、売買以外に本体修理やバックアップ電池交換なども引き受け(※1)、2000年代よりゲームファンに愛されてきた。現在は東名阪に6店舗を構え、なかでもレトロゲーム在庫数国内1の呼び声も高いのが、この秋葉原店なのだ。

出迎えてくれたのは店長の小村さん。ソフトやグッズがところ狭しと陳列された棚に圧倒されながら話を聞いた。それにしても、平日の昼間だというのに、外国人の客がひっきりなし!

「そうですね、ウチのお客さんはもうほとんど外国人。だから他店とはちょっと値付けが違っていて、やや高いかもですね」

各国の旅行ガイドに掲載され、近年はマンガやアニメをアートの域で論じてくれる欧州や、先進ジャンル、文化への関心が高い中東からの客が多いそうだ。

店内のガラスケースには販売価格5ケタ超えのソフトがギッシリ

「人気はやはりマリオやソニック、ロックマンなど世界的に有名なキャラ、(少年)ジャンプ系のマンガ原作ゲームですね。『ファイナルファンタジー』を筆頭に スクウェアブランドも売れ筋です。仕入れ数も多いですが、並べた端からすぐ売れていきます」

メイド・イン・ジャパンなキャラの原作(日本版)を手に入れるのがうれしいのだろう。

「逆に国内で人気のプロ野球モノや、『ゲゲゲの鬼太郎』、『六三四の剣』といったマンガ原作のゲームは、あまり出ないかな」

階段の壁には高価買取ソフトのラインナップが貼り出され、眠るお宝を呼び寄せる

年度版の多いスポーツ系は売却候補にもなるので残念だが、『ウイニングイレブン』だけは売れるようで、サッカー人気と客 層が符号するのもおもしろい。

売却時に気になる査定ポイントとは?

「状態、希少性、付属品の有無ですね。外国人のお客さんが多いといっても、国内コレクターが探しているモノも把握していますので、滅多に出ないようなシロモノは逃しません」

気になる価格設定は、どんなタイミングで行っているのか?

「高額オークションのニュースやリメイク作品の発表はもちろんチェックしますし、意外なソフトがゲーム実況動画でバズっ たりもするので、価格の調整は常にしています。販売も買取も」

最後に、筆者の持ち込みソフトは果たして“お宝”だったのか? 左のカコミをご覧あれ。買値が3割なら店頭に並べば5ケタの売値は必至! 身も心もホクホクで帰路に着きましたとさ。

※1…修理・電池交換などのサービスは、現在では終了し非対応。

1985年発売の「ファミリーコンピュータ ロボット」も発見、しかも箱アリ! もちろん他にも、各ハード用の周辺機器は販売・買取とも絶賛取扱中。懐かしの連射パッドや6ボタンパッドなども、店頭に出すと即売れてしまうらしい 拡張機器が多く、合体させると異様な高さで“メガドラタワー”とも呼ばれたMD関連各種も販売。横置きの後期型「メガドライブ2」は「メガCD2」と合わせて2〜3万円ほどの価格 マニアにはお馴染み、世界で3番目に売れなかった64ビット機、アタリの「ジャガー」も箱入りで複数在庫。日本では1994年のクリスマスシーズンに発売も爆死 『魔界村』のはなやま玩具製ボードゲームは3万9,800円! 人気作の当時モノ関連グッズはお宝確定だ ファミコン以前のゲームと言えば、「昭和50年男」連載「デジとの遭遇」でも紹介している携帯液晶ゲーム機。「ゲーム&ウオッチ マルチスクリーン」の『ドンキーコング』 は3万9,380円! 未FC化のキャラものも多く、箱あり美品の希少性は高い 攻略wikiの台頭で死滅寸前の攻略本だが、全盛期には相当なマイナー作でも出版。貴重な公式グッズとしてお宝化が加速中。 下のPS用『夕闇通り探検隊』本は2万5,080円!

「スーパーポテト」で懐かしのゲームを市場調査!

【価格・メーカー名について】ソフト紹介の「定価」は発売当時の価格で税抜、黄色で示したスーパーポテト店頭価格は取材当日のもので税込で表記。メーカー名も発売当時のもの。

ファミリーコンピュータ(FC)|任天堂/1983年〜

本体発売から今年ではや40周年 。SNS全盛の昨今、コレクターや動画クリエイターによる国内販売カセット1053本、ディスク199本、計1252本(通説)のコンプリート達成も散見され、相場は安定しているかと思えた。が、後期希少品の高騰は止まらない。

『地底戦空バゾルダー』(ソフエル/’91)

美少女モービィと地底探索用戦車バゾルダーを操り、縦横奥と多彩なスクロールで飽きさせないシューティング&アクション。 グラフィックの評価も高い。定価6,300円→27万2,800円

『ロックマン』(カプコン/’87)

最新ナンバリング『11』の長寿シリーズ。『X』『エグゼ』なども人気で外国人にも認知度が高い。実は初代はミリオン未達成、美麗品なら驚きの高額買取! 定価5,300円→11万円

スーパーファミコン(SFC)|任天堂/1990年〜

発売後1995年頃までが黄金期で、多くの名作 RPGやシミュレーションが誕生し ミリオンヒットも多数。ただし安易なキャラゲーや大爆死ソフトも多く、そもそもソフトの価格が高かっただけに、お宝化しているならありがたい!?

『ドレミファンタジー ミロンのドキドキ大冒険』(ハドソン/’96)

名門ハドソンの『ボンバーマン』精鋭スタッフが多数携わった良作アクション。パステルな色調と表情豊かなキャラ、音楽など高評価ポイントも多かったが、RPG全盛期に埋もれて希少品に。定価6,800円→7万4,580円

メガドライブ(MD)|セガ/1988年〜

“時代が求めた16ビット”機も発売35周年。日本ではややマイナー感が漂うが、音速のハリネズミ「ソニック」が世界で大ウケし、海外ではスーファミ(SNES)と互角の人気に。洋ゲーの日本移植版も多く、訪れる観光客を喜ばせる。

『バトルマニア大吟醸』(ビック東海/’93)

MD屈指の良作バカゲー『バトルマニア』(’92)の続編。パッケージからは想像できないが横シュー。多重&ラスタスクロールを駆使する美麗演出は“技術のムダ使い”とマニアに讃えられている。定価7,800円→20万6,800円

PCエンジン(PC-E)|NECホームエレクトロニクス/1987年〜

FC、 SFCのライバルとなった高性能8ビット機。本体発売翌年に家庭用機初のCD-ROMドライブも投入、ディスク版ソフトを浸透させた。ナムコ、アイレム、コナミ、日本ファルコムなどの実力派メーカーも参入し、名作多数。

『コリューン』(ナグザット/’91)

アーケードやPCからの移植が多かったPCエンジンだが、こちらは完全オリジナル作のファンタジー系横シュー。ていねいに作られ遊びやすいが新鮮味はなく、数が出ず希少に。定価6,800円→12万9,800円

プレイステーション(PS)|ソニー・コンピュータエンタテインメント/1994年〜

気づけば来年30周年、すでにレトロの域に達した初代PS。任天堂の牙城を崩した豊富なラインナップのなかには、非ゲームメーカーによるサブカル色強めで、レアかつカルトな作品も多く、価格高騰の真っ只中。

『LSD』(アスミック・エース エンタテインメント/’98)

マルチメディアアーティストの佐藤理が制作。楽曲はケン・イシイ、μ-Ziqなどのテクノアーティストが担当し、欧州サブカル組にも刺さる逸品。定価4,800円→14万800円

ライターが当時からの所有ソフトを持ち込み! 果たして買取査定は…HOWマッチ!?

お宝候補筆頭は、元祖が MSXでFCでは「いきなり外伝!?」だったシューティングアクション『ガーディック外伝』。巨匠・加藤直之の箱絵が海外でも人気。後は、『忍者くん』好きで 信頼のUPL『ロボキッド』、最近リメイク発売の『ライブ・ア・ライブ』、そして当時の最大容量40メガROMを誇る『スパストII』MD版と選りすぐり。保存状態には自信アリ!

1.『ライブ・ア・ライブ』(SFC/スクウェア/’94/定価9,900円)
2.『ガーディック外伝』(FC/アイレム/’88/定価5,500円)
3.『スーパーストリートファイターⅡ The New Challengers』(MD/カプコン/’94/定価1万900円)
4.『アトミックロボキッド スペシャル』(PC-E/UPL/’90/定価6,700円)

定価の倍以上を叩き出した『ガーディック外伝』の高額査定ポイントは、珍しい縦開きの取扱説明書と、折りたたんで同梱された布製の大型イメージマップ(取説の8倍サイズ)もバッチリな完品だったこと。

続く高値の『ライブ・ア・ライブ』は、やはり参加マンガ家7名の絵力の強さでオリジナル版は人気が高いそう。4本トータルの定価超えはならずだったが、店頭 価格の3割と考えれば十分お宝でした!

総額2万4,000円に!

【DATA】
スーパーポテト 秋葉原店
東京都千代田区外神田1-11-2 北林ビル3〜5階
TEL03-5289-9933
http://superpotatoakiba.jp

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「昭和50年男 2023年5月号 Vol.022」)

著者:昭和50年男 編集部