楽天・田中将大

 プロ野球の開幕が1週間後に迫る中でシーズンでの戦いが“心配”される2チームがある。

 それはセ・リーグのヤクルトと、パ・リーグの楽天だ。負傷の選手が続出し、若手も伸び悩み、そしてベテランの衰えなどが感じられ戦力が整ってこない。

 オープン戦終盤を迎えた中、ヤクルトは怪我人が多くオーダーを組むのさえ難しい状況だ。

「もう、このままじゃね。大変なことになりますね」と3月19日の日本ハム戦(神宮)後にヤクルト・高津臣吾監督は悲痛なコメントを発していた。

 投手ではエースの小川泰弘、奥川恭伸がコンディション不良で離脱。抑えの田口麗斗は先日復帰したばかりだ。野手も内山壮真は上半身のコンディション不良で二軍調整中、塩見泰隆は16日に行われた試合で受けた自打球の影響で翌日のゲームを欠場するなど、主力選手にアクシデントが続出している。

「オープン戦とはいえ、ここまでメンバーを固定できないのは異常事態。少しずつ選手も戻りつつあるが調整遅れは明らかで、実戦感覚を含めて時間はかかる。しばらくはプレーできる戦力でのやり繰りになりそう」(ヤクルト担当記者)

 特に球団関係者、ファンにとってショックだったのが、完全復活が望まれた2019年ドラフト1位右腕の奥川の離脱だった。春季キャンプでは2年ぶりに一軍スタートとなり、昨シーズンにリーグワーストの防御率(3.95)だった先発陣の中で救世主になれる存在だっただけに悔やまれる。

「故障した箇所に関しては球団内でも情報が極秘とされ、現場以外は共有されていない。営業的にも目玉選手で戻ってきて欲しいのだが……不透明な部分が多い」(ヤクルト関係者)

 先発投手陣は小川、奥川の2枚が出遅れ、その他も心許ない。抑えの田口も3月19日に一軍で復帰登板したばかりで昨シーズン苦しんだ投手陣は今年もポジティブな要素が少ない。

 開幕からしばらくは打線でカバーしなくてはならない状況だが、その打撃陣も心強いとは決して言えない。

「好調だった山田哲人が調子を落とし始めた。オスナ、サンタナの両外国人(ともに今季で32歳)は年齢的に衰えが出てもおかしくない。昨年の成績低下を経て体を絞った村上宗隆の活躍が重要になる」(在京球団編成担当者)

 野手は新助っ人の加入はなく、目立った補強は西川遥輝(前楽天)ぐらい。青木宣親や川端慎吾というベテランにいつまでも頼るわけにもいかず、打線全体の底上げが必要。しかしオープン戦では46イニング連続でタイムリーヒットが出ないなど、打線が上手く機能していない。

 リーグ3連覇を狙った昨季はまさかの5位と低迷からの巻き返しを誓うヤクルトだが、シーズン開幕前から“嫌な雰囲気”が漂っている。

 一方、今江敏晃新監督を迎えた楽天も、投打の形が見えない苦しい状況が続いている。

「何がベストメンバーか、僕が一番、教えて欲しいぐらいです」(3月20日付スポニチ)と今江監督自身が語るなど、オーダーが決まらず頭を悩ませている。

 昨年はリーグ2位となる513得点(1位はソフトバンクの536得点)と打線の頑張りは目立ったが、チーム防御率はリーグ最下位の3.52(1位はオリックスの2.73)と投手陣が崩れBクラスの4位に終わった。巻き返したのために投手陣強化が明白なのは間違いないが……。

「先発はプロ4年目以内の経験少ない投手に任せざるを得ない状況。松井裕樹(パドレス)の抜けた抑えは則本昂大を据えるようだが、経験の必要な役割なだけに不安もある。投手陣に関してはやってみないとわからないだろう」(在京球団編成担当者)

 開幕投手に指名された左腕・早川隆久(26歳・4年目)をはじめ、2022年のドラフト1位右腕・荘司康誠(24歳・2年目)、内星龍(22歳・4年目)など、当面は若手投手の奮起に期待しないといけない状況だ。

「ベテランの岸孝之やポンセ(日本ハムから加入)はいるが、大きな誤算は田中将大の調整遅れ。日米で多くの経験を積んだ田中の存在は、成績以上の影響力がある。一軍に帯同できないとなると開幕ダッシュへ不安も出てくる」(楽天関係者)

 打線に関しては3月17日のロッテ戦(千葉)で佐々木朗希から4点を奪うなど、粘り強さは健在。しかし主砲・浅村栄斗がキャンプでは疲労の影響で別メニュー調整となるなど、オープン戦でも調子が上がってこない。また来日2年目の助っ人フランコもオープン戦で下位打線を打っているような状況では、ベストメンバーが決まらないのも納得だ。

「野手は若手の競争が激しくなり選手層は厚くなりつつある。浅村、阿部寿樹、岡島豪郎、島内宏明といったベテランが仕事をしてくれれば……。パワハラ問題で安楽智大が抜けてブルペンの戦力低下も懸念される中、投手陣の踏ん張りがカギを握っている」(楽天担当記者)

 両球団ともに現状では厳しい形で開幕を迎えそうだ。しかしヤクルトは2015年と21年に前年最下位から優勝するなど、下馬評が低い時に信じられない力を発揮してきた。楽天も2013年に前年4位からリーグ優勝、日本一となったことがある。前年やオープン戦の結果は当てにならないことが多いことを、今季も証明して欲しいものだ。