世界中に大きなインパクトを与えたキャサリン妃のがん公表。“Kate, You Are Not Alone”の見出しも見える(写真/アフロ)

 英キャサリン妃のがん公表は、連日のように現地報道を賑わせている。子どもたちにどう伝えればいいのか──。妃のさまざまな思いが感じられた。

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 3月22日現地時間午後6時、英国のキャサリン妃(42)がSNSのビデオメッセージで、がんを公表した。2分余りの動画では、庭のベンチに一人で座り、メモなどは持っていなかった。背景には季節が伝わる桜などが見え、結婚指輪をはめていた。

 かなりやせたように見える。白地に横に濃いラインが入るシャツ姿のカジュアルさで、メイクも薄かった。

■決して一人ではない

「今年1月に受けた腹部の手術は成功しました。その時はがんは見つかりませんでした。しかしその後の検査でがんがあることがわかりました。現在は、医師の指示のもと化学療法の初期段階にいます」

 ビデオメッセージでそう話すキャサリン妃。声明文は自らがつづったそうで、2週間前から練りに練った文章だった。

 最も大切だとして時間をかけたのは、ジョージ王子(10)、シャーロット王女(8)、ルイ王子(5)に、「ママは大丈夫よ」と、それぞれの成長に合わせて説明し安心させることだった。最後には「がんを患う皆様、あなたは決して一人ではありません」と同じがん患者を思いやった。

 今年1月半ばから妃が公に姿を見せなくなると、数々の臆測が流れた。死亡、昏睡状態、ウィリアム皇太子(41)の不倫、別居、離婚、整形手術の失敗まで、ありとあらゆる悪いうわさが駆け巡った。また、英国で母の日に当たる3月10日、母子の写真を発表すると加工疑惑を指摘され、妃は認めて謝罪した。

 ウィリアム皇太子と買い物に行けば、撮影された女性は妃の「そっくりさん」と決めつけられるほど。その後、そっくりさん本人がテレビに顔を見せて、当日のアリバイを主張する事態になった。

ビデオメッセージでがんを公表した英キャサリン妃(写真/アフロ)

 公表に至ったタイミングからも、妃の思いが伝わってくる。今後、化学療法が次第に本格的になれば、副作用が表れることも否定できない。万が一、見た目に変化が出ることがあるなら、その前に姿を見せたかったのかもしれない。さらに子どもの学校が3月23日から約3週間のイースター休暇に入る。子どもたちが学校で不要な質問にさらされるのも避けたかった。妃は、そういったタイミングを計って、がん公表に踏み切ったのだ。

 声明文の中にサポートと理解への感謝はあっても、メディアなどを責める言葉はいっさい含まれていなかった。

■ヘンリー王子の「不満」

 チャールズ国王(75)の声明がすぐに発表された。「私の愛する義理の娘のがんを公表する勇気を誇りに思う」との愛情あふれる一文だった。同時に国民はウィリアム皇太子を心配した。15歳で母ダイアナ妃を失った。たった一人の兄弟であるヘンリー王子(39)はメーガンさん(42)と共に王室離脱して、誇張と虚偽を交えた暴露本やインタビューで王室批判を繰り返した。

 皇太子にとって、敬愛する祖母エリザベス女王を1年半前に亡くし、父はがんの治療中だ。そして今、最愛の妻のがんが発覚した。孤独なのではないか──国民からは、「妃が座ったベンチに皇太子もいてほしかった」との声もあった。

 ヘンリー王子の動向にも注目が集まる。メーガンさんと結婚前、王子はキャサリン妃を姉のように慕い、きわめて親しかった。妃の声明後に王子とメーガンさんは兄夫妻に連絡を入れたそうだ。「妃ががんを患っていることを事前に教えてもらえなかった」と不満を漏らしているという。

 ヘンリー夫妻は、「ケイトと家族の健康と癒やしを祈る」と発表したが、「しらじらしい」「(ケイトではなく)キャサリン妃と称号を付けるべきだ」などと批判された。

 シニアロイヤルが次々と病に倒れ、王室は今、ダイアナ妃事故死以来の危機にある。しかし「必ず王室はサバイブする」と、国民は祈るような気持ちで国王とキャサリン妃の回復を祈っている。

(ジャーナリスト・多賀幹子)

※AERAオンライン限定記事