放送作家の鈴木おさむさん

 鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』は今回が最終回になります。最後は「辞めるきっかけ」について。

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 長年続けてきたこの連載も本日が最後になりました。そして僕は今度の日曜日、3月31日をもって放送作家を辞めます。

 僕はこの20年近く、「スマイルカンパニー」という会社にマネジメントをお願いしていました。「スマイルカンパニー」と言えば、山下達郎さんのために作られた事務所です。山下達郎&竹内まりや夫妻が在籍するアーティスト事務所です。

「これから絶対マネジメントが必要になるから、入った方がいいよ」と紹介されたのが「スマイルカンパニー」でした。

 アーティスト事務所なのに、放送作家の僕を快く受け入れてくれて、僕のやりたいことを自由にアシストしてくれました。

 そして山下達郎さんのコンサートにも何度も行かせて頂きました。

 2019年9月3日。僕は、山下達郎さんのコンサートを市川文化会館に見に行かせていただきました。最後の最後に「おまけです」と言って歌ったのが「LAST STEP」という曲でした。一言で言うと「別れ」の歌なのですが、その曲を聞いてるうちに雷に打たれるようにいきなり「辞める」という選択肢が頭に浮かびました。

 SMAPが解散してからずっとモヤモヤしていた自分に、いきなり「辞める」という選択肢が閃(ひらめ)き、前に進む道が出来た気がしたのです。

 山下達郎さんがあの日歌った「LAST STEP」という曲のおかげで、次に進む覚悟を与えてくれたのです。

 で、僕は東京FMで自分がパーソナリティーを務める番組をやっています。金曜日のお昼に2時間の生放送。「JUMP UP MELODIES」と言う番組で、3月22日の放送になんと山下達郎さんが来てくれたんです。

 ノープロモーションです。そこで約1時間。山下達郎さんは、僕の質問に全て真剣に答えてくれました。僕は「40代からしんどくなり、そこを超えると50代から新たな道が見える」と色んなところで言ってますが、達郎さんも、同じく40代からのしんどさと50代からの生き方を語ってくれました。なんか答え合わせして貰ってるような気がしました。

 そして、最後。僕はお別れの曲に、「LAST STEP」を選曲していました。それをかけようとすると、達郎さんがいきなり「ちょっと待ってください」と言って、なんと、2019年9月3日のLIVEの「LAST STEP」の音源を家からマスタリングして持ってきてくれて、なんとそれをかけてくれたんです。

 その曲を聞いて、あの日を思い出しました。2019年9月3日。「辞める」という選択肢が急に閃いた日。

 あれから、コロナ禍を経て4年たちましたが、放送作家を辞めるまで10日となった自分をその歌声が包んでくれて。

 おつかれさま・・・と言ってくれている気がして。

 そして、改めて、32年間やってきて沢山の人への感謝を思いながら曲を聞きました。

 最後の最後に、山下達郎さんにこんなサプライズをして頂き、心から感謝しています。

本人インスタグラムから

 放送作家を辞めるまであと、今日含めてあと3日。最後の最後までワクワクして終われたらいいな。

 一足お先に、このエッセイを読んで頂いた皆様、ありがとうございました。

 ライフ イズ エンターテインメント。

 放送作家 鈴木おさむ