健康被害の声が相次いだ(写真/アフロ)

 小林製薬(大阪市)製の紅麴原料を含むサプリメントが原因とみられる健康被害が相次いでいる。都内に住む58歳の女性は、サプリを飲んだ後、一日中倦怠感に襲われるほどの健康被害を発症した。ただ、その健康被害に対する不安だけではなく、今回の問題が発覚してから小林製薬に問い合わせをした時の対応にも不安を覚えているという。

*  *  *

 小林製薬は28日、健康被害が相次ぐ「紅麹」成分を含む製品を摂取していた2人が亡くなったと発表。製品の摂取が判明した死者は計4人となり、被害は拡大している。

「紅麹」問題ではとりわけ腎疾患による死亡が取りざたされるが、健康被害はそれだけではない。都内に住む58歳の女性はこう言う。

「飲み始めてから、朝起きるのが億劫なくらいに体にしんどさを感じるようになりました。一日中倦怠感があって、職場の同僚や家族に心配されるほど、目に見えて具合が悪くなってしまったんです」

 女性は5年ほど関節リウマチを患っており、コレステロールを下げる薬を服用していた。薬には当然副作用もあり、ひどい場合は悪性リンパ腫の恐れもある。

「何とか薬の服用を減らせないかと常々考えていたんです。昨年11月に『劇的にコレステロールが下がる』という触れ込みのCMを見て、これはいいなと思ってメモをして、すぐに薬局に走りました」

■サプリのせいだと思えなかった

 近隣の薬局では売り切れており、通販サイトAmazonでも売り切れ。「そんなに評判がいいのか」と思い、通販サイトをめぐって見つけ購入した。製品の説明通りに1日3粒飲んだ。翌日には倦怠感の症状が出ていたが、期待感を持って毎日摂取していた。

「当初はこの症状がサプリのせいだとはまったく思っていませんでした。飲み始めて10日後にリウマチの医者にかかる日があって、問診で体調が悪いことを伝えたら、『普段から薬を服用しているからサプリはやめた方がいい』と助言をもらって、それでやめたんです。そうしたら体調はあっという間に戻りました」

 このサプリが自分には合わなかったんだ――。そう思ってサプリの存在も忘れかけていた矢先、小林製薬の紅麴成分を含む製品による健康被害のニュースが報じられた。

「やっぱりなんかあったんだ」

 インターネットで調べてみると健康被害の情報が次々と目に飛び込んでくる。女性は驚きと不安から、小林製薬に電話をかけたがつながらなかった。

 3月25日、購入したサイトからメールが届く。小林製薬による健康被害についての発表を受けて「製品の摂取をただちに中止」するよう注意喚起を促す内容だった。

「ますます不安になりました。メールの中に小林製薬の健康相談受付センターへの連絡フリーダイヤルのリンクもあったので、すぐに電話しました」

 30回以上かけてもまったくつながらない。「私と同じような人がたくさんいるんだ」。不安を抱えながら一生懸命電話をかけ続け、ようやくつながった。しかし、そこでの対応に女性は悲しさを覚えたという。

「体調の心配だとか健康のことは全然聞かれず、つながって最初に言われたのが『返金についてはこの番号ではなく、4月1日からの対応になります』という言葉でした。私は返金のことなんて一言も言っていないのに」

■電話の向こうから不服そうな声

 その後は「いつ買ったんですか」「どこで買ったんですか」「何個入りですか」「病院に行きましたか」と質問が続いた。女性が「かかりつけの医者に説明はしました」と言うと、電話の向こうから不服そうに「紅麴飲んだって言ったんですか」と返されたという。

「終始対応の感じは悪くて、自分の症状を伝えても『聞いている限りそういう症状の人はいないんですけどね』と言うんです。こちらはどんな健康被害があるのか不安でたまらないから電話しているのに。『そういうことを教える人はいないんですか』と聞いたら、『そんな人としゃべりたいんですか』と言うので、そりゃそうでしょうと。話したいと答えると折り返すということでした」

 その後、折り返しの電話があったものの同じような対応が続き、同じように「そんな体調の方はいなかったですよ」と言われたという。女性はあまりにもひどいと感じ、「サプリを飲んだ人がその後どんなふうになったのか、データを取るために今お話しされているんじゃないんですか」と聞いた。相談受付センターの担当者ははっきりと「いや、そういう予定はないですよ」と言ったという。

「こちらを馬鹿にするような感じで言われたので、それはちょっとひどいんじゃないですかと言うと『はあはあ、わかりました、じゃあお客様の貴重なご意見ということで聞いときますね』と。謝罪のようなトーンは一切なく、終始ビジネスライクな感じでした。多くの対応に追われて忙しいのだとは思いますが、あまりにもひどい対応で悲しかった」

 女性は持病から3カ月ごとに腎臓や肝臓の数値も計っている。何かわからないものがもし体に入っていたらどうしたらいいのかと不安は尽きない。4月の第2週ごろに小林製薬の担当者が残ったサプリの回収に女性の自宅に来る予定だが、その後のフォローは期待していないという。

「持病がある私にとって健康であるということはあこがれ。健康を助けるためのサプリにこんなことが起きたのはショックですし、小林製薬の対応を見てもどう落ち着けばいいのかわからず宙ぶらりんな感じ。どこに信用を置けばいいのかわからず、サプリはもう買えないと思っています」

 問い合わせ対応が不十分ではないのか。小林製薬に問い合わせると同社の広報担当者はこう答えた。

「相談件数など精査中で、現状では正式には回答できません。対応が不十分であるという件については、スタッフが一律に公平にお返事できるよう、想定されるQ&Aを用意したうえで対応させていただいています。ただ、毎日情報が更新されており、多少流動的になっていることから、そうしたご指摘については大変申し訳なく思っております」

 電話がつながりにくい状況が続くが、現在は相談受付センターの人員も追加し、全力で対応しているという。女性のようにやきもきした気持ちを抱えている人は今なお多いはずだ。紅麴を摂取した人たちの不安を取り除けるよう、一刻も早い実態の解明と丁寧な対応が求められる。

(編集部・秦正理)

※AERAオンライン限定記事