開幕前に巨人を退団となったルーグネット・オドーア※画像はパドレス時代のもの(写真:AP/アフロ)

 開幕前にMLBジャイアンツからフリーエージェント(FA)となった筒香嘉智の巨人入りが決定的との報道が出ている。現在チームで大砲と呼べるのは岡本和真ぐらいであり、仮に報道通りとなれば、NPB通算205本を放った長距離砲は大きな戦力となるのは間違いないだろう。

 とはいえ、筒香に任される予定の役割は当初は新助っ人ルーグネット・オドーアが果たすはずだった。だが、開幕前に二軍での調整を言い渡されるとそれを拒否して退団。シーズン開始前の突然の出来事にファンも唖然としたはずだ。

 筒香の入団は歓迎すべきことかもしれないが、助っ人の補強が機能していないことの表れでもあるはず。近年野手ではアダム・ウォーカーがまずまずの結果を残したが、守備力が異常なほど低いなど、助っ人の補強が“ちぐはぐ”な印象も受ける。

「(メジャー通算178本塁打を誇るオドーアは)阿部慎之助監督も期待の大砲だったため、開幕直前での退団には衝撃が走った。退団後すぐに(マイナー契約で)ヤンキース入りしたのはオドーアが米国内での需要もあるということ。『日本向きの選手か?』という判断を巨人の渉外担当が見誤ったのだろう」(在京テレビ局スポーツ担当者)

 優勝請負人が開幕を待たずして帰国する前代未聞の事態だった。オドーアを含め、ここ最近はメジャーで実績のある選手などを補強しているが、特に野手の助っ人は苦戦が目立っている。

「2015年からの3年間、先発投手として活躍したマイコラス(現カージナルス)以外は印象に残った外国人選手がいない。(コロナ禍だった)2021年には外国人選手全員がシーズン途中で帰国したこともあった。助っ人獲得に関して球団内の所轄部署が効果的に機能していなかったと言えるでしょう」(巨人担当記者)

 コロナ禍も重なり米国や中南米でのスカウト活動がままならなかった事情もあった。しかし他球団も条件は同様であり、渉外担当や海外スカウトの責任を問われても仕方がない。

「国内スカウティングに関してはドラフト戦略を含め計画的に進みつつある。若手育成も上手くいき始めているだけに、あとは外国人選手がフィットすればチームの結果に直結するとは思うのですが……」(巨人関係者)

 海外選手獲得への切り札として、2019年オフに編成部へ招聘したのがデニー友利(友利結)氏。中日の国際渉外担当時代には独自のルートを駆使して優良外国人を多数、発掘してきた。

「デニー氏は米国でのプレー経験があり、レッドソックス巡回コーチも務めた。師匠と言える森繁和氏の紹介で中南米ルートにも精通している。現在のNPBではトップクラスの海外人脈を誇る」(元中日担当記者)

 中日時代にはジャリエル・ロドリゲス(現ブルージェイズ)獲得に関わるなど、優良外国人発掘に携わってきた。しかしそんなデニー氏をもってしても巨人では苦労しているようだ。

「投手は合格点レベルの投手を獲得し始めているが、以前のマイコラスほどではない。野手はオドーアの例を見てもわかる通り話にならない。国際部には即戦力の大型助っ人獲得を期待しているのですが結果が出ていない」(巨人関係者)

 昨年からプレーするグリフィンとメンデスは今季もローテーション入りし、昨シーズン途中加入のバルドナードは球威を武器にブルペンで大事な場所を任されている。現役時代投手としてプレーしたデニー氏の“得意分野”に関しては結果も少しずつ出始めているが、野手に関しては変化の兆しがまだ見られない。

「ネット環境の進化で情報は簡単に手に入る。しかし外国人が結果を出せるどうかは性格的に日本向きかという部分も大きい。昔ながらの現地で足を使っての情報収集も必要となり時間を要する」(巨人担当記者)

 メジャーでの実績があり、才能に溢れている選手でも、プライドが邪魔をする場合も多いのが助っ人。いまだに日本野球を下に見ている選手も少なくないため、選手個々の性格や思考を把握するには、実際に接してみなければわからない。

 今年のオドーア以外にもヘラルド・パーラ、ジャスティン・スモーク、エリック・テームズらメジャーリーグで実績のあるいわゆる“大物”も獲得してきたが、メジャー経験のなかったウォーカーが活躍したのを考えても米国での成績だけでは判断してはいけないということだろう。

「森氏は毎シーズンオフにスタッフを引き連れ中南米行脚を繰り返した。『森繁ルート』構築には莫大な時間と経費がかかっている。デニー氏も新たな独自ルート開拓中だと思われ、球団の我慢も求められるだろう」(元中日担当記者)

 巨人は数年前から国内スカウトに関しては着実な成果を出しつつある。水野雄仁スカウト部長を中心に、各地にいるOBスカウトが詳細な情報を手に入れドラフト戦略に活用している。外国人プレイヤーの獲得に関しても、今まで以上に労力をかける時期に来ているのかもしれない。

「外国人の活躍がペナントの行方を左右するのは歴史が証明している。コロナ禍以降は各球団が経営に苦しんでいる中、海外スカウトへ経費を使うのは大変。しかし常勝を求められる巨人は勝つことで収益も桁違いに上がる。数年先を見据え外国人補強に注力するのは重要」(在京テレビ局スポーツ担当者)

 阿部巨人はキャンプ、オープン戦と評判は高かった。しかし開幕すると苦戦が続く状態には外国人のパフォーマンスが影響しているのも否定できないだろう。FA選手や他球団の助っ人を獲得することでの戦力アップが難しくなった今、優良な外国人選手を連れてくるのも名門復活に欠かせない要素なはずだ。