4月10日、愛子さまが「初めて」明治神宮を参拝された。このときも堂々として気品にあふれていた=2024年4月10日、東京・明治神宮、代表撮影

 最近、「お一人で」「初めて」というワードとともにニュースになることが多い天皇、皇后両陛下の長女愛子さま。しかし、伊勢神宮や明治神宮の参拝などでは堂々として、かつ気品にあふれた姿を見せ、注目が集まった。愛子さまの姿や所作からは深い心配りが感じ取られ、マナーのプロも感嘆するものだったという。

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 愛子さまは10日、明治天皇の皇后、昭憲皇太后が亡くなってから11日で110年となるのを前に、東京・渋谷区の明治神宮を参拝された。

 ゆっくりと本殿に向かう愛子さまの姿は、堂々としていながら、品格があり、柔らかさもまとった落ち着いたものだった。

 そんな愛子さまの姿に対して、大手企業のマナーコンサルティングやNHK大河ドラマ、映画などでのマナー指導も手掛けるマナーコンサルタントの西出ひろ子氏は「全ては内面がにじみ出ている」と称賛する。

伊勢神宮内宮に参拝する天皇、皇后両陛下の長女愛子さま。「お一人で」は初めての参拝だった=2024年3月26日、三重県伊勢市、代表撮影

「愛子さまは伊勢神宮参拝のときも今回も、姿勢が頭頂から腰までを真っすぐにしていらっしゃいます。その姿勢は自然でありながら、軸が本当にしっかりしていらっしゃいます。

 マナーの観点から頭頂から腰までが真っすぐである姿勢は基本ですが、その姿勢を保つにはおへその下あたりに意識を持っていくことが大事なことだといわれています。そうあろうとする気持ちがないとよい姿勢を保ち続けることは難しいことです。伊勢神宮ご参拝のときもそう思いましたが、愛子さまの姿勢は内面からの表れと感じます」
 

■所作だけを取り繕うのではなく

 その内面から出てくるものが、私たちの心にも響くのだろう。

「愛子さまからは、所作だけを覚えたとか、形だけを取り繕っているという印象を受けません。相手の立場に立ち、相手を思いやる心があるというマナーの基本が徹底されている印象です」

 それがよく表れていたのが、明治神宮参拝での愛子さまの「はい」という返事とお辞儀だという。

「愛子さまが奉迎車から降りられて、宮司などの関係者に挨拶をなさり、お話の途中で『はい』と返事をされていらっしゃるのが映像からわかりました。音声は聞こえなくても、笑顔でそれがはっきりと伝わるほどの対応は、愛子さまの素直さであったり、相手を立ててきちんと従う気持ちの表れからでしょう」

 そして、明治神宮の参拝で最も驚いたのが、愛子さまの完璧なお辞儀だったと話す。

「私たちも知っている二礼二拍手一礼という参拝の作法がありますが、こちらは、二拝二拍手一拝とも言われます。『神社祭式同行事作法解説』(神社本庁刊)に書かれております敬礼の区別として、『拝』は上体を90度前傾する深いお辞儀のことです。愛子さまは、本殿で『拝』のお辞儀をなさり、御玉串を玉串立に立てて奉られました。

 マナーの研修で、この90度の深いお辞儀の練習もするのですが、みなさん膝裏が痛いというほどの姿勢です。愛子さまは、背をまっすぐになさった本当に美しい90度の拝礼をなさっていらっしゃいました」

ケニアのルト大統領夫妻との午餐(ごさん)に臨む皇后さまと天皇、皇后両陛下の長女愛子さま。午餐に参加するのもこのときが「初めて」。宮殿の部屋に入られるときも、配慮のある心を込めた会釈をされていた=2024年2月9日、皇居・宮殿「連翠」、代表撮影

■愛子さまの配慮あるお辞儀

 この深いお辞儀以外にも、愛子さまの配慮あるお辞儀が何度も見られたと、西出氏は指摘する。

「90度前傾する深いお辞儀以外にも、一般的にいわれる会釈は上体を15度ほど傾けるとされています。明治神宮参拝でも愛子さまが会釈をなさる場面は何度もありました。

 お辞儀はその状況などに応じて種類があり、それぞれに前傾する角度が異なります。そしてお辞儀も相手への敬意からなる所作ですから、その気持ちを表現するためには、同じ会釈でも相手よりも深くお辞儀をしようとする心理がはたらきます。愛子さまは自身が深くお辞儀をしてしまうと、相手はそれ以上に前傾しなければならないことに配慮され、お辞儀の角度も考えられていらしたとお見受けいたしました。

 だからといって、形だけ浅くお辞儀すればいいというものではなく、一回一回のお辞儀をどなたに対してもとても丁寧におこなっていらっしゃいますから、深くお辞儀をなさっていると感じます。このような点も愛子さまはさすがでいらっしゃり、常に気持ちを込めてひとつひとつの動作を日頃からおこなっていらっしゃることをうかがい知ることができます。今回、愛子さまのお姿を拝見して、相手を敬う気持ちからお辞儀をする大切さをあらためて感じました」

 ニュース映像などで伝えられる愛子さまの堂々とした姿に驚かされる理由は、その内面にあるのかもしれない。(AERA dot.編集部・太田裕子)