「いよいよ日本株のバブルがはじけます」

 こう話すのは、慶応大学大学院の小幡績教授だ。

 2024年の大発会、3万3000円台で始まった日経平均は年初から急騰、2月下旬には終値ベースでバブル後最高値を更新し、3月上旬には4万円を突破した。さすがに新年度入りしてからは調整に入り、中東情勢の緊迫化もあって3万7000円台にまで値を下げているが、その日経平均が今後もどんどん下がっていく可能性が高いというのである。

慶応大大学院の小幡績教授

「年明けからの急騰は明らかに『スピード違反』で、完全にバブルになっていました。今後、日経平均4万円を回復することはないと思います」

 小幡教授は『すべての経済はバブルに通じる』の著書を持つなど、「バブル研究家」として知られる。株式市場ウォッチャーでもあり、行き過ぎた金融緩和がもたらす株価バブルにかねてから警鐘を鳴らしてきた。

「今回は米国を筆頭に海外の株価急上昇が先にまず広がって、日本株は一番出遅れて上がりました。構造は同じで世界も日本もバブルですから、世界中の株価バブルが同時崩壊する可能性もありますね」

■リーマン・ショック以降の3つのバブル

 小幡教授によると、そもそもは2008年9月のリーマン・ショックによる世界的な金融危機が発端とする。リーマン・ショックで当時のバブルはいったん崩壊したが、それによる痛みを和らげようと世界中の中央銀行が市場にジャブジャブにマネーをつぎ込んだため、バブルは完全崩壊にはいたらなかったという。

「いわゆる量的緩和政策ですが、やみくもな金融緩和は、もう一個別のバブルを作ってしまいました。これが『量的緩和バブル』です」

 火種が残ったまま2020年にはコロナ禍が始まる。経済活動が止まり株価も暴落したため、今度は世界中が財政政策を発動し、資金を出しまくった。小幡教授は、これを「コロナ・バブル」と呼ぶ。

「結局、リーマンを含めて3回もバブルを起こしてしまったのです。『量的緩和バブル』と『コロナ・バブル』を私は『アンコール・バブル』と呼んでいますが、バブルも3回繰り返せば十分でしょう」

 危機は忍び寄っている。コロナ禍でモノの流通のサプライチェーンが回らなくなるなどで記録的な物価上昇が起き、それを抑えようと日本を除く先進各国は利上げを繰り返した。インフレと金融引き締めに緩和マネーは耐えられず、さすがにバブルも……となっているのが今なのだという。

「金融も財政も出し尽くしてしまったので、バブルが崩壊するともう救済する手段はありません。リーマンの時は中国が資金を出してくれましたが、その中国も土地バブルの崩壊であえいでいます」

 小幡教授によると、今は「きっかけ待ち」の状態。リーマン・ショックの時の「リーマン破産」と同様、誰が見ても明らかな悪材料が出れば、そこから崩れていくというのだ。

■株価下落より怖い国債暴落

 本格的に崩壊し始めると何が起こるのか。

「当然、株価が下がり景気は悪くなります。ずいぶん長い間、バブルに依存した経済が続いてきたので、長期的な不況になるのではないでしょうか。派手にクラッシュするのではなく、根強いインフレと不景気が共存する、『スタグフレーション』のような状況に陥る可能性があります」

 さらに日本にとって怖いのは、株式市場への影響だけで止まらなくなった時だという。

「とりわけ国債の信用に火が付くと大変なことになります。日本国債は価格が高い(利回りは低い)状態を保っていますが、この信用が崩れたり、国債を買い取ってきた日銀への不安が出たりして国債が暴落すれば、とんでもない日本売りが始まります」

 株安、円安、債券安の「トリプル安」が起き、日本経済は奈落の底に落ちていくという。そうならないことを祈るばかりだが……。

(編集部・首藤由之)

※AERAオンライン限定記事