西武・今井達也

 プロ野球開幕から1カ月が経過した。早くも種々雑多のトピックに溢れる中で、西武の先発投手陣の“無援護地獄”に注目が集まっている。

 松井稼頭央監督2年目のシーズン。開幕から24試合を終えた4月28日終了時点で、西武は8勝16敗でパ・リーグ最下位に沈む。しかし、チーム防御率2.56はリーグ2位であり、先発投手だけの先発防御率1.90は断トツのリーグトップ(2位がソフトバンクの2.19)なのだ。さらにデータを並べると、QS率(6回以上3自責以内)70.8%、HQS率(7回以上2自責以内)54.2%、先発平均投球イニング6.51回といずれもリーグトップとなっている。

 その先発投手陣を形成するのは、高橋光成(2試合0勝2敗、防御率3.46)、今井達也(5試合2勝0敗、防御率0.77)、平良海馬(4試合1勝2敗、防御率1.46)、隅田知一郎(5試合2勝1敗、防御率2.59)、松本航(3試合1勝1敗、防御率2.21)、ボー・タカハシ(2試合1勝1敗、防御率1.64)、そしてルーキーの武内夏暉(3試合1勝0敗、防御率2.14)。エースの高橋、完全覚醒した今井を筆頭に、それ以外の面々は期待通り、もしくは期待以上のピッチングを見せている。

 だが、勝てない。その原因はズバリ、12球団断トツ最下位のチーム打率.206という打線にある。チーム内に4月28日終了時点で規定打席到達者は4人いるが、佐藤龍世(.246)、源田壮亮(.237)、アギラー(.220)、外崎修汰(.209)と何とも寂しい数字。それに準ずる面々も、中村剛也(.209)、金子侑司(.217)、岸潤一郎(.241)、コルデロ(.176)で、レギュラー陣では唯一、古賀悠斗が打率.273で奮闘している状況。松井監督も日替わり打線でベストな組み合わせを模索しているが、結果的には「延長戦15連敗」という勝負弱さの方が目立ち、勝率.333で借金8を背負っている。

 その貧打ぶりと勝負弱さの結果、開幕3カードを終えた時点では6勝3敗と白星先行で先発投手がQSをクリアした5試合は4勝1敗だったが、4月9日以降の15試合では先発投手が12試合でQSを達成して試合を作りながらも、2勝13敗の泥沼状態。援護率2.47はリーグ最下位であると同時に、昨季の中日の援護率2.69を下回るものになっている。このままでは、昨季の中日の先発投手陣(柳裕也4勝11敗、小笠原慎之介7勝12敗、涌井秀章5勝13敗、高橋宏斗7勝11敗)に続いて、不名誉な「10敗カルテット」誕生の恐れも膨らんでくる。

 この「10敗カルテット」を阻止するためには、打線が奮起するしかない。四球を増やして出塁率を上げることは重要になるが、ここまでのチーム四球数70は、トップのソフトバンク(100)にこそ劣るが、それに続くオリックスと楽天(ともに71)と同レベルと悪くない。チーム盗塁数14もリーグ2位タイで、足を使えていない訳ではない。とにかく、まずは単純に、ヒット数を増やすしかないのだ。

 5月を迎えて打線が活気づくか。現状のレギュラー陣に奮起を期待するとともに、現在2軍で4本塁打を放っている大卒4年目の渡部健人、大卒2年目の蛭間拓哉と育成出身で高卒3年目の滝澤夏央らが起爆剤になりたいところ。今年1月に左肘を手術して出遅れるも、すでに2軍で実戦復帰済みの鈴木将平の1軍昇格も待たれる。 

 あとは、今後の気温上昇から梅雨入りする中で、他球団の投手陣の疲労蓄積を待つことぐらいか……。いずれにせよ、2018年、2019年のパ・リーグを席巻した山賊打線を構成した面々、秋山翔吾、浅村栄斗、山川穂高、森友哉は他球団へ移籍しており、当時の姿を取り戻すことは不可能だ。ならば新しい西武打線を、時間をかけながらでも作り上げるしかない。そして自慢の先発投手陣が“無援護地獄”の中でも我慢を続けることができるか。西武が強くないと、パ・リーグは盛り上がらない。