「頂き女子りりちゃん」こと渡辺真衣被告。画像はYouTubeチャンネルより

「頂き女子りりちゃん」として“パパ活マニュアル”などをネット販売したうえ、男性3人から計約1億5000万円をだまし取ったとして詐欺などの罪に問われた渡辺真衣被告(25)。4月22日、名古屋地裁は、懲役9年・罰金800万円の判決を言い渡したが、渡辺被告はこの判決を不服として1日に控訴した。懲役9年という量刑や渡辺被告の言い分について、被害男性は何を思うのか。今の気持ちを聞いた。

*  *  *

「どこまで被害者の心を踏みにじれば気が済むんですか……」

渡辺被告に約3800万円をだまし取られた50代の男性・Aさんは、泣きながらこう語った。

「生命保険や医療保険なども解約してしまって、今後、もし自分に何かあっても何の保障もありません。そうなったら、私は首でもつるしかありません……」

 渡辺被告は2023年4月から8月までの間、この男性に、(1)親と縁を切るための手切れ金、(2)結婚するために借金を返済する費用、(3)携帯料金の未納分の支払い、などとうそを言ってAさんに数回に渡って現金を振り込ませた。

 なかでも、Aさんにとっては(2)の被害が最も大きく、だまし取られた額は約2700万円にのぼる。渡辺被告は、池田なる架空の人物をでっちあげ、アパレル会社を作るために池田から現金を借りているとうそをつき、Aさんから現金をだまし取った。その過程では、借用書まで偽造していたという。

偽造された借用書。池田という人物も存在しなかった。画像を一部加工しています(Aさん提供)

 渡辺被告はだまし取った金の大半を通っているホストクラブにつぎ込んでいた。

渡辺被告の初公判が開かれた名古屋地裁

■懲役9年は「短すぎる」

 初公判で言い渡されたのは懲役9年――この量刑をAさんはどう受け止めたのか。

「正直、9年では短すぎると思っています。約1億5000万円をだまし取ったとして、詐欺グループの主犯格に懲役20年の判決が出たケースもあります。被害金額が変わらないのに、どうしてこうも軽いのかと思いました」

 だまし取られた現金は、Aさんの元には1万円しか戻ってきていない。Aさんは「少しでもいいのでお金が返ってきてほしい」と語ったうえで、こう訴える。

「今、生活するだけで精いっぱいなんです。なんでこんな目に遭わなければいけないんですか」

 渡辺被告は今回、詐欺罪のほかにも、だまし取った金の一部(1億1000万円)を申告せずに脱税したとして、所得税法違反の罪でも起訴されている。だが、Aさんはこれにも納得できないという。

「犯罪行為でだまし取った金になぜ税金がかかるのか。そもそも正当に得たお金ではないのだから、まず財産を差し押さえてから、そのお金を被害者への弁済に充てるべきではないでしょうか」

 もっとも、違法に得た収入でも所得税はかかる。所得税法第36条には、収入金額とすべき金額は、その収入の基因となった行為が適法か否かを問わないと明記されている。

渡辺被告とAさんのLINEのやり取り。渡辺被告がAさんの恋愛感情を利用していたことがわかる(画像=Aさん提供)

■「マジで付き合えてると思ってるの?」

 一方で、Aさんには被害者であるにもかかわらず、SNSなどで「自己責任だろ」など非難する声が上がっている。

 実際にX(旧Twitter)では、

「リリちゃんなりに努力して得たお金なのに それがうそだと判明した途端に犯罪とかになるなら うそついただけで犯罪にするべきなんぢゃないの 世の中おかしい。まあ自分がパパ活やってるの周りに見せびらかしたりしたのクソバカだなと思う」

「わたし今年40やけど、20下の男の子から『好みです!かわいいです!ご飯行きましょう!』とか言われてん? 既に犯罪の匂いしかせんやん? それをマッチングアプリで知り合った30下の女の子とマジで付き合えてると思ってるのすごいやん。流石リリちゃんのお眼鏡にかなった選抜メンバーやん」

 30歳も年下の渡辺被告に恋愛感情を抱いたこと自体がおかしいという主張だが、そんな心ない言葉はAさんをさらに苦しめている。

「今は生きていくのにも精いっぱいの状況で、こういう言葉が私をさらに追い込んでいます。たしかにだまされた側にも責任はあるかもしれない。だけど、誰が初めからだまそうとして接触してきたなどとわかるんですか。アプリで見ていいなと思って、『いいね』ボタンを押して、結婚も本気で考えていた……。彼女のために何かしてあげたいと心から思っただけなのに、それが全部うそで裏切られていたんです。なぜそれを自己責任論で追い詰められ、被害者が踏みつけられなければいけないのでしょうか」

 Aさんはいま、テレビで渡辺被告の顔が映るだけで、「心がどん底に落ちる」という。渡辺被告からの謝罪は、まだ一度もない。

(AERA dot.編集部・板垣聡旨)