岡田彰布監督率いる阪神に動きはあるのか

 シーズン開幕から約2カ月半が経ち、各チームに“穴”となるポジションが生まれつつある。今季は「飛ばなくなった」と言われるボールの影響もあり、想定外の苦しい戦いを余儀なくされている球団も多く、これから夏場へ向けてチーム力をアップすべくトレードを視野に入れているチームも少なくないだろう。

「今年のセ・リーグは混戦模様で現時点で最下位のチームも優勝の可能性がある。パ・リーグはソフトバンクが走っているが、最下位・西武以外にはAクラス入りの希望がある。勝負はここからなので戦力補強に動く球団も当然あるでしょう」(在京パ・リーグ球団OB)

 今季は開幕から快調に白星を重ねているのはパ・リーグのソフトバンクのみで、他チームは両リーグともに勝ったり負けたりの状況が目立つ。唯一独走状態となっているソフトバンクも主砲・柳田悠岐が怪我で長期離脱となるなど万全の状態ではなくなった。

 どのチームも補強ポイントがある中で交流戦が終了したが、近年は交流戦後からトレード期限までに動くチームも多く、2022年には3件、昨年は4件の移籍が成立している。

「例年通り7月末の移籍期限までに動きがありそう。そして、最もその気配を感じるのは阪神です」(在京球団編成担当)

 昨季の日本一球団は現在リーグ2位と上位にはつけている。しかし、6月18日終了時点でチーム打率.221は最下位と打線が全く機能していない。2リーグ制となって以降では球団初となるリーグ2連覇がかかっているだけに、このまま手をこまねいている場合ではない。早めに動きに出る可能性が指摘されている。

「打線を強化をしないと取り返しがつかなくなる。本来は1番打者の近本光司が4番起用されるなど打線が壊滅的な状態。前川右京などの若手も出てきたが、多少の出血覚悟で強打者を獲得すべきだと思う」(阪神OB)

 本来4番を務めている大山悠輔は開幕から調子が全く上がらず、現在は二軍で調整中。そのほかにもチームの主軸として期待されている佐藤輝明、森下翔太の“若き大砲候補”2人も計算できるような打撃を見せられていない。加えて、正遊撃手の木浪聖也が6月15日のソフトバンク戦、死球で左肩甲骨骨折の重傷を負って離脱。予想外の事態が次々に起こっている。

 その穴を埋めるべく、補強の対象として挙がっている選手は誰なのだろうか……。

「獲得候補としては安田尚憲(ロッテ)と清宮幸太郎(日本ハム)の名前が挙がる。加えて木浪の穴を埋められる堅守の内野手も欲しいところ。ロッテと日本ハムには条件に適した選手が多いので可能性はある」(在京球団編成担当)

 安田と清宮はともに2017年のドラフト1位でプロ入りした左の大砲。守備に関しても一、三塁を守れるというのが共通している(清宮は外野手としての出場もあり)。大きな期待をされてプロの世界に入ってきたものの、7年目の今季までなかなか殻を破れないのも“同じ”ともいえるだろう。2人については潜在能力は抜群なだけに、環境を変えれば……という声もあるだけに“狙い目”になる可能性はある。

 また、ロッテは友杉篤輝、小川龍成、藤岡裕大の3人で二遊間を回す形が定着した感もあり、そのほかの内野手が余っている。日本ハムも今季は4人の遊撃手を起用しているが主に出場しているのは水野達稀。出場機会に恵まれない“実力派”の余剰戦力がおり、獲得候補になり得る選手は多いという。両球団ともにトレードに積極的なチームであるということも可能性を感じる理由の1つだ。

「穴を埋められる可能性のある選手が獲得できるのならば相応の出血を覚悟するはず。(今季はまだ一軍で出場はないが)クローザー候補だった湯浅京己を交換要員にしても仕方ないと考えているのではないか」(阪神担当記者)

 湯浅は2022年の最優秀中継ぎ投手で、2023年のWBCでは世界一となったチームのメンバーとして活躍した。昨年は守護神としての役割が期待されながらも不調が続き、今季は一軍登板すらなく二軍でも安定した投球が見せられていない。岡田彰布監督の構想からも外れているようにも感じる。

 とはいえ、年齢も24歳と若くまだまだこれからの選手。プルペンを強化したいチームには魅力的なのは間違いないだろう。

「木浪の怪我は想定外だったが打線強化に関しては早い段階から動いていたはず。他にもリチャード(ソフトバンク)、T-岡田(オリックス)の名前も聞く。リーグが異なる場合は慣れる時間も必要なので、意外と早く決まるかもしれない」(在京球団編成担当)

 6月14日の阪急阪神ホールディングスの定時株主総会では、「なぜ、新外国人を補強しないのか?」という質問が出た。これは不調が続く来日2年目のノイジー、ミエセスに対するものだが、シーズン途中の外国人獲得はリスクが高い。巨人が緊急補強したヘルナンデスはここまでチームの起爆剤になっているが、動くのならば国内での補強になるだろうと予想されている。

「ほかにも苦戦が続くオリックスは投手陣強化が必須。最下位に低迷している西武もこのままで良いわけではない。移籍期限の7月末までどんな動きがあっても不思議ではない」(在京パ・リーグ球団OB)

「飛ばないボール」の影響が指摘される今季だが、勝ち抜くのにはやはり総合力が必要なのは変わらない。安定した戦いぶりを披露しているのがソフトバンクしかいない中、阪神を含めた11球団の動きから目が離せない。混戦から抜け出すためにも、各球団は積極的な補強を敢行するのだろうか……。