「大分県は第二のふるさと」と公言し、2021年から別府市のツーリズム別府大使、2023年には日出町の観光親善大使を務める、音楽グループ〈globe〉のメンバーであり、音楽家として活躍するマーク・パンサーさん。

フランスのマルセイユ出身、神奈川・鎌倉と長野の2拠点で生活していたマークさんは、どんなきっかけで大分に惹かれたのでしょうか? 訪れるたびに好きになると話す大分の魅力、お気に入りの温泉や地元グルメをたっぷりと教えてもらいました。

訪れるたびに深まる、大分愛

大分に足繁く通うようになって約5年。月に数回、多い時は毎週訪れることもあるというマークさん。

そのきっかけは、マークさんがラップを担当する音楽グループ〈globe〉のヴォーカル・KEIKOさんの地元が大分だったこと。KEIKOさんに会うために大分を訪れるうち、食や自然、温泉など、その魅力にどんどん惹かれていったそう。

大分県のアンテナショップ〈坐来大分〉入口に立つマーク・パンサーさん

なかでも魅力的に感じているのは「人」だという、マークさん。

「大分の人は本当に温かい。いい意味で距離感が近く、友達や家族のように接してくれる。みなさんすごく自然体で、すぐに仲良くなれるんですよね。今レギュラーで出演しているラジオ番組『JOY TO THE OITA+』(OBS)のスタッフさん達とも、すごく仲が良くて、一緒に日本酒をつくったこともあります」

日本酒づくりは想像以上に本格的で、なんと日出町の田んぼを購入し、土壌を整え、日出町の名水・山田湧水で酒米を育てるほどのこだわりぶりです。

“大分の夜の魅力”を発信するプロモーションムービー「おんせん県おおいた MV feat. マーク・パンサー」に出演。撮影では2日間で11か所の温泉を巡り、別府や湯布院の絶景と一緒に堪能したそう。

人の温かさとともに、さらにマークさんを惹きつけたのが、温泉です。もともと温泉が大好きだったというマークさんにとって、県内ほぼすべて(16市町村)で温泉が湧き出る「おんせん県おおいた」は特別な場所。まさに、自他共に認める温泉好き。これまで大分県内の数々の温泉を巡ってきたというマークさんイチ押しの温泉とは?

あちこちから湯けむりがあがる別府市の風景
別府八湯とは、市内8つの代表的な温泉地(浜脇温泉、別府温泉、観海寺温泉、堀田温泉、明礬温泉、鉄輪温泉、柴石温泉、亀川温泉)の総称です。

「どの温泉も個性があってすばらしいのですが、別府の温泉は本当におすすめしたいですね」というマークさんは、「別府八湯温泉道」(数多くある温泉から約150湯の施設が温泉道に参画しており、そのうち88の湯を巡り、「スパポート」と呼ばれるスタンプ帳に入湯記念印を集めていく)で、88か所の温泉巡りを制覇し、「別府八湯温泉道名人」にも認定されているというから驚きです。

「別府八湯温泉道名人会」名誉会員の任命書を手にするマークさん
その温泉愛が認められ、2024年1月には「別府八湯温泉道名人会」の名誉会員に任命されました。
Information
別府八湯温泉道
web:別府八湯温泉道

なかでもマークさんのお気に入りは、別府八湯のひとつで、湯けむりにつつまれた〈鉄輪温泉(かんなわおんせん)〉だそう。

〈坐来大分〉で談笑中のマークさん

「〈鉄輪温泉(かんなわおんせん)〉には、いろいろな温泉があって、そのなかでもユニークな「むし湯」はぜひ体験してほしいですね。ここはお湯ではなく、石の上に寝転んで入る温泉なんです。温泉で温めた床には「石菖(せきしょう)」という澄んだ川にしか群生しない薬草が敷き詰められていて、自然の香りが蒸気とともにほのかにして、心地よくてリラックスできます」

〈鉄輪むし湯〉の内観
8畳ほどの広さの石室の中に寝転び、じっくり汗をかく〈鉄輪むし湯〉。男女別で、定員は3〜4名。photo:ただ(ゆかい)
石菖を乾燥させている倉庫
むし湯では、この石菖を乾燥させて使用。乾燥すると麦茶のような香ばしい香りが。photo:ただ(ゆかい)
Information
鉄輪むし湯
address:大分県別府市鉄輪上1組
tel:0977-67-3880
access:JR別府駅から車で約20分
営業時間:6:30〜20:00(最終受付19:30)
休館日:第4木曜(祝日の場合翌日)
入浴料:700円(中学生以上入浴可能)、レンタル浴衣220円、足蒸し無料
web:鉄輪むし湯

「それから、〈むし湯〉と同じ鉄輪にある〈ひょうたん温泉〉もおすすめ。100%かけ流しの源泉を使用した贅沢な温泉施設なのですが、大浴場のほかに砂湯や瀧湯などさまざまなスタイルで温泉を楽しめるんです。また、温泉の蒸気を使った地獄釜でつくる温泉めしもあって、つい長居してしまいます」

〈ひょうたん温泉〉の打たせ湯「瀧湯」
別府を代表する日帰り温泉施設〈ひょうたん温泉〉。「瀧湯(打たせ湯)」は男湯では19本、女湯では8本設置。打ちつける水圧はマッサージのように筋肉のこわばりを解き、腰痛、肩こりなどに効果があるといわれています。

その名が示す通り、滝を連想させるような勢いのお湯に打たれていると、心が洗われるような不思議な気持ちにも。

食材を「地獄蒸し」する温泉利用者
〈ひょうたん温泉〉では、温泉の蒸気を利用した地獄釜を使った温泉めし「地獄蒸し」も楽しめます。温泉の蒸気を利用した地獄釜で蒸しあげる、素材の味を生かした温泉めしは絶品です。
Information
ひょうたん温泉
address:大分県別府市鉄輪159-2
tel:0977-66-0527
access:JR別府駅からバスで約20分
営業時間:9:00〜25:00
定休日:無休(ただし4月・6月・11月に施設整備のため臨時休業あり)
web:ひょうたん温泉

「大分の大自然を感じるなら、〈塚原温泉 火口乃泉〉が一押し。活火山で自噴する源泉を利用した天然温泉で、鉄イオン含有量日本一というパワフルで珍しい強酸性泉が特徴です。四季折々で表情を変わり、今年の2月に訪れたときは、霧に包まれた由布岳を目の前に、圧倒的な存在感があり、とても神秘的でした」

湯けむりがあがる〈塚原温泉 火口乃泉〉
温泉好きの間でも人気の〈塚原温泉 火口乃泉〉。強酸性泉の泉質は肌や胃腸によいとされており、日本三大薬湯のひとつとして全国から湯治客が訪れるそう。

大分の温泉の魅力を語りはじめると、止まらないマークさん。しかし、ただ温泉に入るのが好きなだけでなく、自然の恵みに感謝をしているそうで、「温泉を出る時は、一礼をするのがマイルール。自然の恵みを分けていただき、使わせてもらっていることに対する感謝の気持ちです」と、温泉を通して感じる自然のすばらしさ、敬意を払うことの大切さを感じる機会でもあるそう。

Information
塚原温泉火口乃泉
address:大分県由布市湯布院町塚原1235
tel:0977-85-4101
access:JR由布院駅から車で約20分、由布岳スマートICより約5分、別府ICより約25分
営業時間:9:00〜18:00(1〜2月は10:00〜18:00/7〜8月は9:00〜19:00)
※受付は閉館1時間前まで
定休日:年末年始
料金:内湯 大人(中学生以上)500円、こども(1歳以上)200円
露天風呂 大人(中学生以上)600円、こども(1歳以上)200円
家族風呂 2,000円〜
web:塚原温泉火口乃泉

別府以外にも地獄があった! 大分が誇る秘湯〈塚原温泉火口乃泉〉

食を通して実感する、
大分の豊かな自然と風土

大分の魅力を語るうえで欠かせないものといえば、やっぱりグルメ。「かぼす、しいたけ、りゅうきゅう、うなぎ……と、大分で大好きになったものがたくさんあります!」というマークさん。

今回お話をうかがった場所は、マークさんもおすすめする、東京・有楽町にある〈坐来大分〉。厳選した旬の食材を使った郷土料理が食べられる、レストラン型アンテナショップで、東京にいながら大分を満喫できると好評です。

〈坐来大分〉のランチコース「豊の彩」の料理
この日マークさんが食べたのは、大分県産和牛ブランド「おおいた和牛」をメインに、大分の食材を取り入れてつくるランチコース「豊の彩」5500円。
おおいた和牛を味わうマークさん
とり天など3品が提供される「壱の膳」
「大分名物のとり天には、かぼすの酸味もよく合います」とマークさん。「緑色のかぼすは、実は夏に採れた未完熟なもの。11月まで熟成させると黄色に。大分にはこの“黄かぼす”が多く、やさしい酸味でおいしいですよ」と教えてくれました。

さらに、マークさん流のかぼすの絞り方も伝授。「大分では皮が下側になるように絞るんです。そうすると食材に果汁が皮をつたって垂れ、より風味豊かな味わいになるんですよ!」

「弐の膳」で提供される「九重やまなみ椎茸炭火焼」
「大分のしいたけが大好物!」というマークさん。九重から届いた「やまなみ生しいたけ」炭火焼きは、圧巻の大きさです。
Information
坐来大分
address:東京都千代田区有楽町2-2-3 ヒューリックスクエア東京3F
tel:03-6264-6650
access:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線「銀座駅」(出口C1)より、徒歩約1分
営業時間:ランチ 11:30〜14:00(13:30L.O.)、ディナー 17:00〜22:00(21:30L.O.)、ギャラリー(物販)11:30〜22:00
定休日:日曜・祝日、第1土曜、年末年始、お盆
web:坐来大分

「大分のしいたけを初めて食べた時、あまりのおいしさに驚きました。今でも大分に行ったら乾しいたけや粉末を必ず買って帰りますね。とくに粉末はローストすると香りが強くなり、調味料として使うと最高なんですよ!」

〈やまよし〉の外観
マークさんのおすすめは、大分県産の乾しいたけ専門店〈やまよし〉。乾しいたけの量り売り、手土産にもぴったりな商品やしいたけを使ったオリジナル商品の開発・販売も行っています。
〈やまよし〉で販売されている、しいたけの出汁をつかったソフトクリーム
しいたけの出汁をつかったソフトクリームも。甘いものは少し苦手だというマークさんも、「やまよしのしいたけソフトクリームだけは特別!」と太鼓判を押すほどのおいしさです。
Information
大分しいたけ屋 やまよし
address:大分県別府市西野口町2-2
tel:0977-21-8111
access:別府駅西口から徒歩約7分
営業時間:9:00〜18:00
定休日:日曜
※営業日などの最新情報は公式ホームページをご確認ください
web:大分しいたけ屋 やまよし

「大分はおいしい食の宝庫」と語るマークさん。おいしい食事に合わせるお気に入りの日本酒は〈ちえびじん〉。やさしい甘みとまろやかな口当たりが気に入っているのだとか。

「日本酒には和食と決めつけずに、唐揚げとかハムカツとかと合わせて食べるのも好きです。特に中津は名物なだけあって唐揚げも本当においしい! 大分の日本酒と合わせて食を楽しむのも旅の醍醐味ですよね」

〈ちえびじん 純米吟醸 山田錦〉の四合瓶
マークさんのおすすめは、杵築市にある〈中野酒造〉で代々続く銘柄〈ちえびじん 純米吟醸 山田錦〉。ほどよい酸みと甘みがバランス良く調和した柔らかなのど越し、優しい余韻が特徴です。
Information
有限会社 中野酒造
address:大分県杵築市大字南杵築2487-1
tel:0978-62-2109
access:杵築ICから車で約2分
営業時間:9:00〜17:30
定休日:日曜・祝日、12月30日〜1月4日
web:有限会社 中野酒造

ディープな大分の魅力を発見し、
多くの人に届けたい。

今回の取材でうかがった〈坐来大分〉では、レストランと併設したショップで大分の食材や工芸品などのセレクト商品の販売も行っています。数ある商品のなかから、マークさんにおすすめの商品を選んでもらいました。

「元酢」を手にするマークさん
「元酢」730円。有機肥料で育った〈板井かぼす園〉の本かぼすからひとつひとつ手絞りした100%果汁原液。かぼす好きのマークさんおすすめの逸品です。
〈坐来大分〉で店頭に並ぶ「ひた山椒」
「ひた山椒」1200円。寒暖差の大きい日田で栽培された、風味豊かな山椒を使用。ミル付き容器に粒のまま入っているのもマークさんのおすすめポイント。食べる時に挽くことで山椒の爽やかな香りを楽しめます。

大分愛満載のマークさん。普段の生活でも大分にまつわるものを取り入れているそうで、お気に入りの愛用品を見せてくれました。

「beppu魔悪」とプリントされたトートバッグと大分で作られた財布と名刺入れ、マークさんの私物3品
私物のトートバッグ(マークさんが2022年に立ち上げた、別府の観光・人・グルメなどの情報発信をするチーム「BeppuMarc」が手刷りでつくったオリジナルアイテム)、財布、名刺入れはすべて大分産。財布は山葡萄(やまぶどう)の樹皮でできています。

近い将来、大分への移住を真剣に考えているというマークさん。大分とのつながりは今後ますます深まりそうです。今後マークさんが大分でやってみたいこととは?

「さらに大分を深く感じたいですね。ラジオ番組『JOY TO THE OITA+』(OBS)のロケで、〈絆屋〉という大分産の食材を活かした商品を届ける食品会社を訪れたことがあり、そこで食べた郷土料理のりゅうきゅうがおいしくて感動して。そういう地元の人との触れ合いや経験を通して、自分の実体験を共有しながら発信することで、いろいろな角度から大分をアピールしていきたいです」

〈絆屋〉の「りゅうきゅう」パッケージと盛り付け例
〈絆屋〉おすすめの大分産ぶりの「りゅうきゅう(2食入り)」864円。※写真右は盛り付けイメージです。
Information
株式会社 絆屋
address:大分県杵築市大字片野字神領1014番1
web:株式会社 絆屋 オンラインショップ

「ただおいしいものを食べたり、温泉に入ったりするだけでなく、もう一歩踏み込んでいきたい。以前訪れた日出町は、ちりめんじゃこが有名で、たまたま港で親しくなったおばちゃんが、朝獲れのしらすをごはんにのせて食べさせてくれたんですよ。それが本当においしくて、今でも印象に残っています」

大分に足を運ぶようになってから、「人生観も変わった」というマークさん。以前より視野も広がったといいます。

「実は20年ほど前に一度だけ〈globe〉で唯一路上ライブをしたことがあって。その場所が大分だったんですよ。それから時を経ち、こうして大分に通うようになって、温泉、食事、人の温かさ……などに触れることで、より生活も充実して心身ともにパワーをもらっています。せっかくなら何事も地球規模で楽しまないともったいないと思うんです」

〈坐来大分〉で食事と会話を楽しむマークさん

続けて、「globeっていい名前でしょう」と話すマークさん。現在休止中のグループへの思いについても語ってくれました。

「別府で立ち昇る湯気を見た時に『地球の力強さってすごいな、俺たちも負けてられないな』って思ったんです。〈globe〉は今、灯火を消さないために一生懸命やっている。力強さを感じて、俺たちも湯気が出るくらい、もっともっと“パワフルなglobe”にしなきゃいけないよねって、奮起したんです。

大分に訪れるたびに新しい発見がある。自分にとって原動力となるようなパワーをもらえる場所だなって。そのすばらしさをもっと多くの人にも届けていけたらいいなと思っています」

マーク・パンサーさん
Profile マーク・パンサー

父がフランス人、母が日本人のハーフ。日本音楽史に名を残すユニット〈globe〉のメンバーとして活躍。2021年から大分県別府市のツーリズム別府大使、2023年から日出町の観光親善大使を務め、大分の魅力を世界に発信する活動を行っている。2024年3月には、毎週月曜19:30〜20:10に放送のレギュラーラジオ番組「JOY TO THE OITA+」(OBS)の公式本『RADIO JOY TO THE OITA+ OFFICIAL BOOK』(ワニブックス)が発売。
web|マーク・パンサー web|JOY TO THE OITA+ Instagram|@marcpanther

※価格はすべて税込みです

credit text:大西マリコ photo:網中健太