その損傷具合から、犯人と被害者の間には相当なトラブルがあったと読み取れる。那須の山中、焼け焦げた姿で発見された二つの遺体。身元が判明した宝島龍太郎さん(55)は、近年、事業を巡り、トラブル続きの日々を送っていたという。

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 栃木県は那須町の山間部で男女二人の遺体が見つかったのは4月16日のこと。

「マネキンのようなものが燃えている」――そう警察に通報があったように、遺体の状況は凄惨で、手足は結束バンドで縛られており、顔には袋のようなものをかぶせられ、その上から粘着テープが巻かれていた。

 死因は首を絞められたことによる窒息死。男性の方は東京都台東区に本籍がある、宝島さんと判明した。女性の方は行方がわからなくなっているその妻とみられ、遺体を運搬したとされる車も特定されている。

この通りは“宝島ロード”と呼ばれていた

 宝島さんは飲食店業を主とする、二つの会社の代表取締役を務めていた。うち1社は、上野・アメ横付近を中心に焼肉屋や居酒屋など14店舗を展開し、他にも不動産売買や中国・韓国製の衣料雑貨および食品の輸入販売も行うなど、手広く事業を手がけている。本人の自宅も千代田区内のタワマンの一室で、金回りが良かったことが推察されるのだ。

「この界隈で彼は“有名人”でした」

 とは、その上野・アメ横近くで飲食店を営む、さる店主である。

「何店舗も展開していたから、この通りは“宝島ロード”なんて言われていた。コロナの時期はみんな店を閉めていたでしょ。でも、彼の店だけはオープンしていて、逆にコロナで撤退した店舗の後に入居し、新規出店したりしていたほど」

「とにかく話が通じない人」

 商魂たくましいともいえるが、これでは近隣とうまくいきそうにない。宝島さん経営の焼肉店を上階に持つショップの関係者いわく、

「昨年でしたか、宝島さんの店が火事を出したことがありました。消防が来て鎮火したそうなんですが、うちの品がビショビショになってしまったんですよ。売り物にならず、数十万円の損害が出た。でも、謝罪どころか説明もありませんでした」

 それでもこの関係者は抗議に行こうとはしなかった。

「以前から彼には迷惑をかけられていたんです。うちの店の看板が見えなくなるような位置に看板を立てたり、階段の踊り場で炭火を使うものだから、店に火の粉が降ってきたりも。店長に言ってもらちが明かないので、不動産屋に仲介してもらい、本人に会いに行きました。すると開口一番“なんで来るんだ!”と。用事があるとか言って、すぐに帰ってしまいましたよ。不動産屋も“ああいう人だから諦めましょう”と。とにかく話が通じない人でしたね」

チンピラを従え…

 この逸話だけでもなかなかのものだが、近所を回れば同様の話は盛りだくさん。そしてご本人よりも聞こえてくるのは、妻の“評判”であった。

「ブランド物っぽい派手な服装をしていました。顔も怖い。で、夜になると道に立って、店の従業員を監視していましたね。横にはチンピラ風の若い男を従えていましたよ」(別の近所の飲食店店主)

「毎夜、店の見回りに来ていました。で、スタッフやバイトにぎゃあぎゃあ怒鳴るんです。“暇なら呼び込みをしろ”なんてね。時々は中国語らしき言葉も交じっていましたね」(飲食店の従業員)

 そしてこの妻と近所の店がトラブルになり、訴訟にまで発展していたというから穏やかではない。

「数年前、宝島さんのホルモン焼屋の近くに、うちが店をオープンさせたんです」

 と振り返るのは、さる焼肉店のオーナー。

「それで向こうの店の売り上げが落ちちゃったんですよね。奥さんから“すべてあなたのせいよ”と言われて。それからけんかを吹っ掛けられるようになりました。例えば、向こうの看板でうちの店の看板をぶっ壊したり……」

“早く自分の街に帰れ!”

 こうしたトラブルが相次ぎ、オーナーは昨秋、宝島さんの会社と妻を提訴。訴状には、オーナーの店の従業員を妻が「バカ」「アホ」「痴漢」などと罵倒したり、オーナーの店に客が入ろうとすると、「まずいよ」「こっちの方がいいよ」と声をかけるなどの迷惑行為をした、との指摘もある。

「一度、奥さんに頭を下げに行ったことがあるんですよね。“仲良くしましょう”と。そしたら逆に“早く自分の街に帰れ!”なんて毒づかれましたよ」(同)

 何とも強烈である。

 4月21日、警視庁と栃木県警の合同捜査本部は、遺体を現場に運んだとみられる車の所有者を逮捕。この平山綾拳(りょうけん)容疑者(25)は「先輩に頼まれて貸した」旨の供述をしているという。

 なぜ宝島さんは殺害されたのか。そしてどんなトラブルが原因だったのか。真相究明が待たれる。

「週刊新潮」2024年5月2・9日号 掲載