国内男子ツアーの今季開幕戦「東建ホームメイトカップ」最終日、金谷拓実(かなや・たくみ)が大会最少スコア、大会最少ストロークともに上回る23アンダー・267を叩き出す会心のゴルフで優勝した。

出たくても出場できなかった欧州ツアー

◆国内男子プロゴルフ<東建ホームメイトカップ 3月28〜31日 東建多度カントリークラブ・名古屋 (三重県) 7069ヤード・パー71>

 男子の今季ツアー開幕戦・東建ホームメイトカップを制したのは、25歳の金谷拓実だった。大会最少スコアの21アンダー、大会最少ストロークの264をともに上回る23アンダー・267を叩き出した。ジュニア時代から突出していた成績を残すも、最近は若手の台頭もあり、注目度が低くなりつつあった金谷。しかし、今回の優勝であらためて存在の大きさを知らしめた。

選手仲間から手荒い祝福を受ける金谷拓実 写真:JGTOimages
選手仲間から手荒い祝福を受ける金谷拓実 写真:JGTOimages

 日本アマでは17歳51日の最年少優勝を飾り、日本オープンでは最年少ローアマを獲得。さらには、アジアパシフィックアマを制した権利でマスターズにも出場した2018年、三井住友VISA太平洋マスターズで史上4人目となるアマチュア優勝を飾った金谷拓実。

 これだけでも相当な記録だが、プロ転向した20年にダンロップフェニックスで優勝、その後も着実に優勝回数を重ね、昨年終了時では25歳にしてツアー5勝、賞金ランキングトップ3が2回という実績を残していた。まさに、若手のリーダー的な存在が金谷だったのだ。

 ところが、その金谷を追いかけるように年下の選手が台頭してくる。まずは中島啓太が史上5人目のアマ優勝を飾ると、蝉川泰果が史上6人目のアマ優勝者となる。しかも、史上初のアマ優勝を2回達成する。そのうちの1勝はなんと日本オープンだ。さらに昨年は杉浦悠太が史上7人目のアマチュア優勝をダンロップフェニックスで飾っている。金谷も昨年は賞金ランキング3位に入ったが、1位が中島、2位が蝉川だった。

 海外志向の強い金谷だけに、22年は海外ツアーを主軸にしたが、思うような成績を残せず、昨年からまた国内ツアーを主戦場にしていた。すると、自分より年下の久常涼が欧州ツアーで優勝し、今季はPGAツアーで戦うことに。さらに今年に入って、年上ながら星野陸也も欧州ツアーで優勝。結果が前後したが、中島も欧州ツアーで優勝を飾った。

 本来なら、自身も昨年の賞金ランキング3位の資格で欧州ツアーを主戦場にしているはずだったが、今年はその資格までなかなか出場枠が広がらず、今後の見通しも立てにくい状況で迎えたのが、国内ツアーの開幕戦である東建ホームメイトカップだった。

ショットとパットを修正して臨んだ開幕戦

「欧州ツアーに出場できないのは仕方がないことですし、目の前の試合で結果を出せれば環境も変えられると思うし、優勝目指して頑張ります」と前を向いた金谷。

 その言葉通り、初日から67、65、64、65と60台を並べ、261ストローク、通算23アンダーで今季初優勝、ツアー通算6勝目を飾った。どちらも大会最少記録のおまけ付きだった。

「4日間アイアンショット、ピンを狙うショットが安定していたので、バーディーチャンスにも多くつけることができました」と振り返った金谷。このオフには昨年の反省点でもある左へ曲がるショットの修正に力を入れたが、見事に奏功した形となった。また、パッティングのスタンスを両足をつけるぐらいのイメージまで狭くしたことで、距離感、方向性アップに成功。トレーニングによる体力アップや、ミスをしても動揺しないメンタル面での成長も勝因に挙げていた。

 大会期間中には、欧州ツアーで優勝争いをしていた中島とラインで連絡を取り合ったという金谷。ナショナルチーム時代からの合言葉である“JKG(ジャストキープゴーイング)”を互いに送り、“前進あるのみ”を確認した。次戦は欧州ツアーと国内ツアーの共催試合が待つ。そこで結果を残せば、金谷にとって新たなプランも見えてくるはず。今後も“JKG”あるのみだ。

金谷 拓実(かなや・たくみ)

1998年5月23日生まれ、広島県出身。広島国際学院高校2年のときに、「日本アマ」を最年少で制覇。東北福祉大学進学後の2018年には「アジア・パシフィックアマ」を制し、アマチュアとしては松山英樹以来となる「マスターズ」出場を果たす。19年には「三井住友VISA太平洋マスターズ」で史上4人目となるアマチュア優勝を果たした。ツアー通算6勝。Yogibo所属。

e!Golf編集部