ピンやテーラーメイドなど大慣性モーメントの「10K」を売りにするドライバーが人気を博しています。しかし一方で、限定発売のテーラーメイドの「バーナーミニドライバー」が完売するなど、小ぶりなヘッドの需要も決して少なくありません。では、あえて小ぶりなヘッドのドライバーを使うメリットはどんなものがあるのでしょうか。

ドライバーだけプッシュが出る人は小ぶりヘッドが合う可能性

 ドライバーのヘッドは460ccがほとんどを占め、慣性モーメントもどんどん大きくなっています。今年は「10K」=1万g・cm2に達するモデルも登場するなど、ドライバーはどんどん「大きい」方向に向かっています。

 そんななか、ブリヂストンの「B1ST」やタイトリストの「TSR4」など、小ぶりヘッドのモデルも一部存在します。こういったドライバーにはどんなメリットがあるのでしょうか。

小ぶりヘッドとして人気を博しているブリヂストンの「B1ST」(左)やタイトリストの「TSR4」(右)
小ぶりヘッドとして人気を博しているブリヂストンの「B1ST」(左)やタイトリストの「TSR4」(右)

 自身も小ぶりドライバーユーザーでもある、ゴルフフィールズユニオンゴルフ店の小倉勇人店長に聞いてみました。

「慣性モーメントが大きいドライバーは重心距離も長く、フェースを返しにくいという特徴はあります。そのためフェースのローテーション量が大きいタイプの人にとっては、自分の意図したようにフェースがターンさせられず、右方向へのプッシュが出やすい傾向はあります。その点、小ぶりヘッドのドライバーは重心距離が短いため、自分の意図どおりにコントロールしやすく、このミスが出にくいと思います」(小倉店長)

 慣性モーメントの大きいドライバーの右へのミスは振り遅れのスライスではなく、気持ちよくスイングしたときに打ち出し方向が右方向に出るミスとのこと。とくにアイアンでは狙った球が打てているのにドライバーではプッシュが出がちという人は、このタイプの可能性があります。

 さらに慣性モーメントの大きいドライバーは、「ミスしても球が曲がらない」というメリットがある反面、「曲げようとしても曲がらない」こととも表裏一体。ドローやフェード、球の高低などを意図して打ち分けたい人、いまのヘッドでそれがうまくいかないという人も、小ぶりのヘッドにしてみたら解消される可能性はあるかもしれません。

「ただ、最新モデルのドライバーを試打した印象としては、大慣性モーメントでも以前のようなニブさがないヘッドも出てきています。もしかすると今後は『大慣性モーメントなのにスムーズにフェースが返せる』モデルが登場する期待はあります」(小倉店長)

「ミニドライバー」は「やさしいティーショット用3W」的存在

 なお小倉店長は、テーラーメイドのミニドライバー「BRNR(バーナー)」の愛用者でもあります。ヘッド体積304ccと一般的なドライバーの3分の2しかないミニドライバーのメリットとは何なのでしょうか。

「基本的には長さ43.75インチと短いことが大きなメリットの一つです。このおかげでミート率が上がり、1発の飛びはなくても曲げずに平均的な飛距離を出しやすいクラブだと思います。ヘッドの大きなティーショット用3番ウッドというイメージでしょうか。そもそもドライバーが苦手な人にとっては、これが打ちやすく感じる人は一定数いると思います」(小倉店長)

テーラーメイド「BRNR(バーナー)ミニドライバー」
テーラーメイド「BRNR(バーナー)ミニドライバー」

 また単にヘッド体積が小さいだけでなく、上下方向に薄いシャロー形状であることも、ミート率アップにひと役買っているといいます。

 必然的にティーアップも低めになり、上下方向の打点のミスが出にくいからです。

 小倉店長は「BRNR(バーナー)」をあえて45インチにカスタムして使っているそうですが、長くしてもこのシャロー形状のおかげで独特のやさしさがあるといいます。

「私が『BRNR(バーナー)』を使っているのは、実はヘッドが小さいのにヘッドの重量がしっかりあり、交換用のウエートもあってカスタムしやすいなど、フィッターとして面白いクラブだというのが大きな理由です」

「『ドライバーが苦手だけれどいつも3番ウッドでティーショットするのもちょっと……』という人には、ほかにない面白い解決法だと思うので、気になる方は試してみるといいかもしれません」

 小ぶりなヘッドのドライバーならではの利点は意外に多く、ミスの傾向やティーショットのイメージが合致する人は一度使っているのもいいかもしれません。

鈴木康介