国内女子プロゴルフの公式競技初戦「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」最終日、韓国のアマチュア、リ・ヒョソンが通算8アンダーで逆転優勝を飾った。公式競技における首位との7打差逆転は新記録。また、アマチュア優勝は史上8人目、15歳176日は史上最年少優勝になる。

一か八かの攻めだったセカンドショット

◆国内女子プロゴルフ メジャー第1戦<ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 5月2〜5日 茨城ゴルフ倶楽部 東コース(茨城県) 6665ヤード・パー72>

 国内女子プロゴルフの公式競技初戦「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」最終日、韓国のアマチュア、リ・ヒョソンが通算8アンダーで逆転優勝を飾った。

記録づくめの優勝となった韓国の15歳リ・ヒョソン 写真:Getty Images
記録づくめの優勝となった韓国の15歳リ・ヒョソン 写真:Getty Images

 最終18番パー5、この時点でリは首位と2打差の単独4位にいた。途中でリーダーボードを見た時、2つの考えが心の中をよぎった。

 一つが「実力のあるすごい選手が参加しているんだな。せっかくなのでトップ10に入ることができればいいかな」だ。確かに、昨年の韓国ツアーの賞金女王であるイ・イェウォン、元世界ランキング1位の申ジエ、日本の年間女王・山下美夢有らが上位にひしめいていた。ただ、その一方で「トップとは2打差。うまくやれば優勝もいけるのではないか」という思いもあった。

 どちらにせよ、アマチュアのリが失うものはない。18番でティーショットをフェアウェイに落とし、ピンまで残り235ヤード。手前のエッジからピンまでは24ヤードあった。「うまくエッジ付近にボールを落とせばピンまで転がって寄っていくはずだ」。

 ただ、グリーン手前の両サイドにはバンカーがあり、一つ間違えればボギーの危険もある。そのリスクを覚悟しながら、一か八かの気持ちで3番ウッドを握った。勇気を振り絞ってクラブを振り抜くと、ボールは軽いドローの弧を描きながらグリーンに向かっていく。リの位置からはよく見えなかったが、ギャラリーからの拍手と歓声が成功したことを教えてくれた。

 グリーンに上がると、ボールはピン右手前3メートルに止まっていた。慎重にラインを読み、タッチを合わせると、ボールはカップへと消えていった。思わず右拳を何度も上下に振り動かしながら喜びを表現したリ。この時点で通算8アンダーとし、首位タイに並んだ。

 その後、後続の佐久間朱莉、山下、イがスコアを落とし、そこから盛り返すことができなかったため、リの優勝が決定した。

「自分が優勝したなんて信じられないです。日本のメジャーで優勝できて本当にうれしいです」。日韓女王対決といわれた最終日、その間隙を縫うようにスコアを伸ばしたリ。ただ、4日間のパーオン率は75パーセントで1位タイだったように、ショット力は高く、単なるまぐれではない。

最年少記録更新で史上8人目のアマチュア優勝

 今回、リの優勝は様々な記録を残した。15歳176日での優勝は、14年KKT杯バンテリンレディスで勝みなみがつくった15歳293日を抜く史上最年少優勝記録となった。また、7打差逆転は公式競技では過去6試合あった5打差逆転を上回り、ツアー記録では4位タイの記録となる(02年廣済堂レディスゴルフカップで藤野オリエが達成した11打差逆転が1位)。

 また国内女子ツアーでのアマチュア優勝は史上8人目の快挙であり、19年富士通レディースでの古江彩佳以来、5年ぶりの記録となった。

 気になるプロ転向についてだが、まだ高校1年生ということもあり、卒業するまではアマチュアとしてゴルフを続けるつもりだ。将来的には「米女子ツアーで戦い、世界ランキング1位になるのが夢です」という。

 ゴルフを始めたのは9歳で練習場へ行く祖父についていったのが始めたきっかけだというリ。父がレッスンプロで小学校のときは教わったものの、現在は祖父と韓国ではティーチングプロとして有名だというイ・シウの指導を受けている。身長164センチまで成長したとはいえ、クラブを握ってわずか6年で日本の公式競技を制したリ。どこまで伸びるのか今から楽しみだ。

山西英希