国内男子ツアー第3戦「中日クラウンズ」で米澤蓮(よねざわ・れん)が通算13アンダーで岩手県出身者初の男子ツアー優勝を飾った。1打差の単独2位には片岡尚之(かたおか・なおゆき)が入った。

ニトリへ行くはずったのに練習場へ

◆国内男子プロゴルフ<中日クラウンズ 5月2〜5日 名古屋ゴルフ倶楽部 和合コース(愛知県) 6557ヤード・パー70>

 国内男子ツアー第3戦「中日クラウンズ」で米澤蓮が通算13アンダーでツアー初優勝を飾った。同大会で未勝利選手が優勝するのは21年ぶり。また、岩手県出身者が男子ツアーで優勝を飾るのは史上初だ。1打差の単独2位には片岡尚之が入った。

伝統の大会「中日クラウンズ」で初優勝を飾った米澤蓮 写真:JGTOimages
伝統の大会「中日クラウンズ」で初優勝を飾った米澤蓮 写真:JGTOimages

 人生、何がきっかけになるか分からない。中日クラウンズでツアー初優勝を飾った米澤がゴルフを始めたきっかけは、単なる偶然だった。9歳のときに家族で家具店のニトリへ出かけたところ、開店時間を間違えてしまったという。仕方なく時間潰しで隣接しているゴルフ練習場へ行ったのが、ゴルフを始めるきっかけとなった。

「周りに何もないんですよ。時間を潰せるようなところが。もともとスポーツが好きでしたし、ゴルフをやってみたいと思ったのかも……」

 性格的に一つのことにのめり込むタイプなのだろう。テレビ中継などを見て、独学でゴルフを学んだにもかかわらず、ジュニア時代は出身地の岩手県どころか、東北地方の大会で優勝を重ね、一躍トップジュニアの仲間入り。東北福祉大に進学後はナショナルチームで腕を磨き、金谷拓実、中島啓太らとともにアジア大会で金メダルも獲得している。さらに、ツアー競技である19年のアジアパシフィックオープンではアマチュアながら2位に入って見せた。

 2021年12月プロに転向し、昨年賞金ランキング22位で初シードを獲得。今季はツアー初優勝を期待されていたが、出場3試合目にして早くも達成した。24歳の初優勝が早いと感じるか遅いと感じるかは人それぞれだが、「プロとしてのキャリアが始まってまだ3年目。焦らずに自分の計画通りにやっていけばと思ったところでの優勝だったので、本当にうれしいです」と笑顔を見せる。ただ、今大会では何度も優勝を飾っているかのようなプレーぶりを披露した。

最後まで自分のマネジメントを貫き通す

 片岡尚之とのマッチレースとなった終盤、たとえフォローだろうが、他の選手がドライバーを持とうが、アイアンでティーショットを打つと決めたホールではその作戦を崩さない。

「ギャンブルをしてボギーを叩けばゲームオーバー。成功率を考えて選択した結果です」と、熱い戦いを演じながらも冷静さは失わなかった。

 首位タイで迎えた最終18番パー4でもティーショットを左ラフに打ち込んだが、ミスではなかったと言い切る。

「左から風が吹いていましたし、ラフでもいいと思って打ちました。2打目もライはそれほど悪くなく、むしろグリーンを広く使えると思いました」

 ピンまで残り150ヤードあったが、フライヤーも考えて52度のウェッジを選択。ボールは直接グリーンに落ち、読み通りにピンそば1.5メートルまで転がっていった。しかも、上りの真っすぐなラインが残った。

「ゴルフ人生で一番緊張しました」というものの、しっかりと沈めた後は何度もガッツポーズを見せた米澤。最後まで自分のマネジメントを守り、堅実なゴルフに徹したことが、1打差で逃げ切った要因となった。

 ちなみに、米澤は岩手県出身第1号のシード選手だったが、ツアー優勝を飾ったのも同県1号となった。

「もっと優勝を重ねて賞金王になるのが今年の目標で、ゆくゆくは海外でも優勝できるような選手になりたいです」と熱く語る。メジャーリーグで活躍する同郷の大谷翔平については、「勇気や感動を伝えている素晴らしい選手。自分もゴルフで少しでもそういう勇気を届けたい」と、ゴルフ界で“SHOWTIME”を演じるつもりだ。

e!Golf編集部