ロフト角を調整したり、シャフトを素早く交換できるアジャスタブルクラブは便利ですが、締め付けが緩むとこうしたトラブルに遭う可能性があります。実際にそんなトラブルに遭遇したとき、プレーヤーはどうすれば良いのでしょうか。

乱暴に扱っての損傷でなければ、無罰での修理・交換が可能

 今年4月のPGAツアー競技「バレロ・テキサスオープン」の3日目、17番パー4(299ヤード)でのこと。ロングヒッターで知られるスウェーデン出身の24歳、ルドビグ・オーバーグはこのホールでワンオンを狙い、ドライバーを一閃!

 ところがインパクト直後、シャフトからヘッドがすっぽ抜けるハプニング。オーバーグはヘッドが消えたシャフトの先端を唖然呆然と見つめる一方、ボールは見事にグリーンを捉え、このホールをバーディーとしました。さて、このようにプレー中にクラブが使用できない状態になったとき、ルール上、プレーヤーはどんな処置、対応ができるのでしょう。

PGAツアーのインスタグラム(@pgatour)より
PGAツアーのインスタグラム(@pgatour)より

 ロフト角を調整したり、シャフトを素早く交換できるアジャスタブルクラブは便利ですが、締め付けが緩むとこうしたトラブルに遭う可能性があります。実際、SNSにはオーバーグ同様、ヘッドがシャフトから外れてどこかに飛んでしまう動画がいくつもシェアされています。

 では、実際にそんなトラブルに遭遇したとき、プレーヤーはどうすれば良いのでしょう。

 ルール上は、例えばミスショットに怒ってクラブを地面に叩きつけた結果としてクラブが損傷した、といったように乱暴に扱ったことによる損傷でなければ無罰で修理・交換ができます。

 規則4.1a(2)「ラウンド中に損傷したクラブの使用、修理、交換」で次のように規定されています。

「適合クラブがラウンド中やプレーの中断中に損傷した場合、クラブを乱暴に扱った場合を除き、プレーヤーはそのクラブを修理するか、他のクラブに取り替えることができる」

 ただし、交換する場合は、プレー進行の不当な遅延やそのコースでプレー中の他のプレーヤーのクラブを借りることはできません。

 また、修理の場合も不当な遅延は認められませんし、ラウンド中に緩んだ調節を締め直すときは、もとの状態と異なるセッティングにすることもできません。

 オーバーグのケースは、通常のプレーで発生した損傷だったので無罰での修理・交換が可能でした。そのため彼は、あらかじめ用意してあったバックアップのドライバーをサポートのスタッフに届けてもらい、無事交換ができました。

フラストレーションが爆発し、パターを蹴って折った池村寛世は?

 ラウンド中のクラブの損傷では、2020年全米プロでのブライソン・デシャンボーの例があります。

 大会初日の7番パー4でのこと。デシャンボーはドライバーでティーショットを放ったあと、クラブに寄りかかるようにして体を預けたところ、それが原因か、それとも、もともと劣化していたのか、ホーゼルの付け根あたりでシャフトがポキリと折れてしまったのです。

 このときも、折れた原因はクラブを乱暴に扱ったことではなかったとして、無罰での修理・交換が認められました。デシャンボーはロッカーに用意してあった予備のシャフトを届けてもらい、修理しています。

 反対に、損傷したクラブの交換が認められなかった例では、今年の中日クラウンズでの池村寛世の折れたパターがありました。

 大会2日目。池村は前半5ホール目の14番で、1メートル余りの短いパーパットを外すと、そこまでのパットの不調で溜まっていたフラストレーションが爆発。手にしていたパターのシャフトを蹴り上げたところ、不運にも真っぷたつに折れてしまったのです。

 この場合は、前述の「クラブを乱暴に扱った場合」と判断され、池村はラウンド中のパターの修理・交換がかないませんでした。そのため、残る13ホールをパター代わりにウェッジでパッティングすることになりました。

 この件が大きな話題になったのは、同じ組のショーン・ノリスがやはりラウンドの途中でパター(ロングパター)を損傷。残るホールをパターの代わりにドライバーを使用したからです。同じ組の2選手がパター以外のクラブでパッティング……。かなり珍しい光景だったのです。

 ただし、ノリスの場合は通常のプレーのなかでヘッドがシャフトから抜け落ちたもので、代わりのパターがあれば交換は可能でした。

小関洋一