今年もっとも話題の一足といえば、3月に発売されたアディダスのスパイクゴルフシューズ「ツアー360シリーズ」の最新モデルでしょう。シューレース(靴紐)タイプの前モデルから進化したポイントをレポートしたいと思います。

全米覇者のX・シャウフェレも愛用する「ツアー360 24」

 3月に発売されたアディダス「ツアー360 24」は今年もっとも話題のゴルフシューズのひとつでしょう。コリン・モリカワ(米)や渋野日向子、岩崎亜久竜ら多くのプロゴルファーが使用しており、米男子ツアー「全米プロゴルフ選手権」でメジャー初優勝を遂げたザンダー・シャウフェレ(米)の足元も支えていました。

3月に発売された話題のアディダス「ツアー360 24」
3月に発売された話題のアディダス「ツアー360 24」

「ツアー360シリーズ」は2005年に初代が登場して以来、革新的な進化を続けており、モデルチェンジのたびに驚かされます。22年発売の前モデルから2年の時を経て、どのような進化を遂げたのか気になる……というファンは少なくないのではないでしょうか。

 これまでに15ブランド100モデル以上のゴルフシューズを履き比べてきた筆者(編集部員)もその一人。そこで今回は「ツアー360」の新モデルを実際にゴルフ場で履いてラウンドしてきたので、前作から進化したポイントをアベレージゴルファー目線でレポートしたいと思います。

左が新モデルのアディダス「ツアー360 24」 右が前モデルのアディダス「ツアー360 22」
左が新モデルのアディダス「ツアー360 24」 右が前モデルのアディダス「ツアー360 22」

 ちなみにダイヤルタイプとシューレース(靴紐)タイプがラインアップされていますが、筆者はシャウフェレも使用するレース派。シンプルなデザインと、足の形に合わせてヒモを締めあげることで得られる繊細なフィット感が理由です。前モデルもレースタイプをチョイスし、所有する多くのゴルフシューズの中でも、この2年間でもっとも登板機会が多かったお気に入りの一足です。

ダイヤルタイプは合成皮革 レースタイプは天然皮革

前モデルのアディダス「ツアー360 22」
前モデルのアディダス「ツアー360 22」

 まず、前作同様にダイヤルタイプではアッパーに合成皮革を採用しているのに対し、レースタイプでは天然皮革を採用しています。何枚かの皮を縫い合わせた作りだった前作から、縫製の仕立てがかなりシンプルになりました。ヒール部分以外に縫い目が見当たらない……と思ってじっくり見てみると、「ツアー360」の象徴でもある「3ストライプス」の一番前のラインの下に隠されていました。

新モデルのアディダス「ツアー360 24」
新モデルのアディダス「ツアー360 24」

 縫い目を隠すことで一枚の皮が全体を覆っているように見えます。さらにヒールタブが独立しておらず、アッパーからつながっているデザインも新鮮で、全体的に“ツルっと”しています。

アッパーのカットに注目!シュータンの見える面積が狭くなった
アッパーのカットに注目!シュータンの見える面積が狭くなった

 ヒモを通す部分のアッパーのカットがU字からV字に変化し、皮の面積が広くなりシュータンの見える面積が狭く、かつ細くなりました。また履いて上から見たときに、全体的に外側にせり出していたミッドソールが今作では見えなくなったので、見た目やシルエットはかなりスタイリッシュになりました。より万人受けするデザインになった印象です。

代名詞といってもいいミッドソール素材「BOOST」が進化

「BOOST(ブースト)」は「JETBOOST(ジェットブースト)」という新素材に進化
「BOOST(ブースト)」は「JETBOOST(ジェットブースト)」という新素材に進化

 足入れした感じは見た目ほど細くなった感じはしません。ツマ先側からヒモを締め上げていくと、3ストライプスが両サイドの皮をギュウ〜っと引き寄せて、足の形に合わせてフィットしていきます。前作よりもアッパーが内側まで覆ってくれるので、甲の周りがまさに一周360度包まれている感覚があり、フィット感がより向上しています。さらに天然皮革は履けば履くほど馴染んでいくので、ラウンドを繰り返しているうちに自分に足の形に変形していくことでしょう。

 アディダスゴルフシューズの代名詞といってもいいミッドソール素材「BOOST(ブースト)」は「JETBOOST(ジェットブースト)」という新素材に進化しました。「軟らかすぎる」という声もちらほら聞こえた従来のものほど沈み込まず、より強い反発力を感じます。そして、ツマ先側は同社の「ZG23」でも採用されている「ライトストライク」を搭載。これら2種類のミッドソールが絶妙なバランスで配置されています。

かつてない快適な履き心地&歩行性能を実現させたアウトソール

特徴的だった前モデル(左)からシンプルなデザインになったアウトソール
特徴的だった前モデル(左)からシンプルなデザインになったアウトソール

 そして私がもっとも進化を感じたのはアウトソールです。足裏に近い部分を硬めの素材でしっかりサポートし、地面に接する部分には軟らかい素材が使われていて「トルションブリッジ」なる橋のような特殊パーツが、カカトとツマ先側をつないでいます。これがかつてない快適な履き心地&歩行性能、そしてスイング時の安定感を両立させています。

橋のような特殊パーツ「トルションブリッジ」が前と後ろをつなぐ
橋のような特殊パーツ「トルションブリッジ」が前と後ろをつなぐ

 前モデルは「スパイクでもスパイクレスでもない新しいジャンル」という触れ込みのアウトソール「スパイクモア」が特徴的でしたが、今作では一般的なクリート(鋲)に戻っています。7つのクリートと全体的にちりばめられた突起がしっかりを芝を噛むのでスイング時の安定性も申し分ありません。

アウトソールの屈曲性能が抜群です
アウトソールの屈曲性能が抜群です

 歩行性能と疲労感をチェックすべく、今回はあえて歩きでのラウンドを選択しましたが、クリートの突き上げも感じません。450グラム(25.5センチ)と最近のゴルフシューズとしては重めの部類ですが、アウトソールの屈曲性能が歩行を助けてくれているのか勝手に足が進む感覚で重さを感じません。18ホール10キロ近く歩きましたがほとんど足に疲れを感じませんでした。

新モデルのアディダス「ツアー360 24」(手前)と前モデルのアディダス「ツアー360 22」
新モデルのアディダス「ツアー360 24」(手前)と前モデルのアディダス「ツアー360 22」

 気が付けばべた褒めしていますが、忖度なしで、もうこれ以上伸びしろがもうないのでは?と思ってしまうほど完成されたゴルフシューズだと感じます。

安定感とグリップ力は申し分なし
安定感とグリップ力は申し分なし

 ゴルフシューズを選ぶ際に安定感とグリップ力を最優先するけど、硬くて疲れるシューズは嫌だというゴルファーにはぜひ試してほしいです。物価上昇はゴルフ用品も例外ではなく、このシューズも税込み3万3000円とややお値段は張りますが、履いてみれば決して高くない買い物だと実感できるハイパフォーマンスシューズではないでしょうか。

e!Golf編集部