今年もやりました「エンジン・ガイシャ大試乗会」。2024年、大磯大駐車場に集めた注目の輸入車36台にモータージャーナリスト36人が試乗! 内燃エンジンの5シリーズとプラットフォームを共有するi5。システム最高出力442kW、最大トルク795Nm、0-100km/h加速は3.8秒をマークするBMW i5 M60 xドライブに乗った小川フミオさん、桂伸一さん、島崎七生人さんのホンネやいかに?


「ライバルをますます引き離した」小川フミオ

5シリーズはみなさんよくご存知のとおり、BMWセダンのラインナップでは中間的な存在。でもそんな5シリーズに匹敵するような日本製のセダン、なかなか出てきません。新型5シリーズで、ますます引き離した感すらあります。



ガソリン車もすばらしいドライブフィールなのですが、5シリーズ初のBEV、i5もまたかなりよい出来です。パワフルで、重厚感があり、快適でエレガント。私は初代いらいずっと5シリーズの熱心なファンを自認していますが、i5にいたるまで、上記の美点が継承されているのを感じます。

同乗してもらったEPC会員のNさんはメガーヌRSオーナーだけあって、よりキビキビと走るクルマがお好みのようでしたが、どちらのクルマも、日本で競合を探すのはなかなか難しい。GRががんばっていますが、60年代からスポーツ・モデルを手がけてきたルノーに一日の長が。

話をi5に戻すと、最新の5シリーズを特徴づけているもう1つの要素がインテリア。ディスプレイのグラフィックスやライティングの凝り方はすごい。非レザーのビーガン・インテリアとともに、先のほうを駆けてます。

シングル・モーターのi5 eドライブ40 Mスポーツに対し、試乗車のM60 xドライブは最高出力192kW、250kWのモーターを前後に搭載。ただし電池容量は70.2kWhで変わらない。一充電走行距離はWLTCモードで前者が500km、後者が455km。


「異次元のコーナリング」桂伸一

EPC会員が同乗試乗した4駆のBEV、BMW i5 M60 xドライブの走りは、それはもう凄まじいスーパーカーのセダン版そのものだった。モーターの瞬発力、伸びのある劇的な速さはテスラを筆頭に十分に味わってきた。

0-100km/h加速が3秒切り、3秒前半が当たり前になり、それはもちろん凄いと思うが、瞬発過ぎてヒトの感性が追いつかない比現実的な速さに、もはや食傷気味。当然それはi5にも言えて、無闇に速いが、やはりエンジンのビートとサウンドともに速度と加速Gを常識的に盛り上げる自動車らしさが重要だ。

とは言えi5は、テスラには真似できないコーナリング性能の高さ、ハンドリングの正確さ、尋常じゃない横Gを生み出す。ともかく曲がる事に関する懐の深さは驚異的。ステア操作に応じ、駆動系とブレーキを巧みに制御して曲げに行く。ターンパイクを駆け上がりながら読者様と異次元のコーナリング性能にふたりで声をあげた。

いっぽう環境モードにより、高速走行は惰性が付く度に空走で電費を稼ぐコースティングへ。自然な切り替わりと戻りのスムーズさも感心する。

サスペンションはともに電子制御式だがM60はアダプティブMサスペンション・プロフェッショナルが標準装備に。


「獰猛と快楽の狭間」島崎七生人

BMW5シリーズは同社の中核をなすセダンで、最新モデルは1972年の初代以来、実に8世代目にあたる。5代目(E60)で斬新なスタイルを採り入れたことがあったのを除けば、一貫してクラス相応のオーソドックスで安心感のある仕上がりが持ち味。

試乗車はG60のコードネームがつく最新型をベースに仕立てられた電動車のi5 M60 xドライブで、前:後に192kW:250kWの計2つの駆動用モーターをもち、システム・トータルで442kW/795kWNmの性能を発揮。1充電で455km(WLTCモード)の走行を可能にしている。

美的センスで語らないほうがいいキドニーグリル(やリアクォーターの野球選手の背番号のような大きな“5”のレリーフ)は見なかったことにして乗り込み、運転してみると、獰猛と快楽の狭間といった、M60を名乗るだけある刺激的な走りが待っていた。まるでエンジンを載せているかのような、速度、状況によりリニアに変化する音の演出が入るのが“Mらしさ感”を倍増。電子制御スタビライザー付きのサスペンションは、安定感と快適性の両方を保証している。



写真=茂呂幸正(人物)/郡 大二郎(サブ)

(ENGINE2024年4月号)