厚生労働省によると、標準的な年金額は夫婦2人で2023年度は「月22万4482円」、2024年度は月23万483 円です。   そのため、収入が年金だけの場合は約20万円で生活していくことになります。ただ、年金が月に20万円だとしても社会保険料や税金などによって手取り額は20万円ではありません。月に20万円の収入だと考えていると、実際の手取り額が低いために生活費を見直す必要が出てくる可能性があります。   そこで本記事では、「夫婦で月に20万円の年金収入だった場合の手取り額を計算し、年金だけで生活できるのか」について解説していきます。

年金から引かれてしまうもの

年金から引かれてしまうものとしては、国民健康保険保険料や介護保険料、所得税、住民税などが挙げられます。
 

国民健康保険料

国民健康保険の保険料は、医療分、後期高齢者支援金分、介護分の3つの区分があり、世帯主の年金から天引きされます。それぞれ所得割と均等割があり、前者は所得に応じて、後者は一定の金額を世帯人数分支払う仕組みです。
 
例えば、大阪府大阪市の医療分は総所得金額から基礎控除43万円を引いた金額(世帯全員分)に8.78%かけた所得割と均等割3万798円(世帯全員分)の合計額を年間に支払うことになります。
 
また、後期高齢者支援金分は総所得金額から基礎控除43万円を引いた金額(世帯全員分)に3.09%をかけた所得割と均等割1万659円(世帯全員分)の合計額です。医療分と後期高齢者支援金分は所得によって減額される場合があります。
 
介護分に関しては、40歳から64歳までの人が対象で、65歳以降の人は介護保険料として年金から天引きされます。
 

介護保険料

介護保険料は、16段階に分かれた保険料段階によって保険料が異なります。第1段階から第5段階までは住民税非課税世帯、第6段階から第16段階までは住民税の課税世帯が対象です。
 

所得税

所得税も年金から引かれます。もっとも、年金の所得額から公的年金等控除や配偶者控除といった控除と社会保険料を引いた金額が課税対象です。公的年金等控除は、年金等の所得金額が110万円以上330万円未満の場合、110万円です。基礎控除は48万円、配偶者控除は所得金額の合計が900万円以下の場合38万円になります。
 

住民税

住民税も、年金所得の金額によって引かれる可能性があります。住民税は所得割と均等割があり、前者は社会保険料や控除を差し引いた所得金額に10%をかけたもの、後者は一律5000円です。
 

夫婦2人で月に20万円から引かれる金額

大阪府大阪市在住の66歳の夫婦2人で、夫が月15万円、妻が月5万円の年金額とした場合を例に計算していきます。
 
まず、国民健康保険料は医療分と後期高齢者支援金分が年金から引かれます。夫の収入は年金収入の180万円、妻は60万円です。夫は180万円から公的年金等控除110万円と基礎控除43万円を引いた「27万円が対象」で、妻は控除額によって0円となり、2万3706円が医療分の所得割です。均等割は3万798円×2人分です。
 
事例の場合は平等割と均等割が5割減額の対象となります。そのため、所得割と合わせて6万9664円が医療分です。
 
後期高齢者支援金分は同じく27万円が対象で所得割が8343円、均等割が1万659円×2人分で、こちらも平等割と均等割が5割減額されるので合計額は2万4249円です。医療分と後期高齢者支援金分の合計は9万3913円で、「月額は7826円」です。
 
次に、介護保険料は夫と妻がそれぞれ支払います。
 
夫は年金収入180万円から公的年金等控除110万円なので、所得金額は70万円です。そのため、6万7990円が介護保険料です。妻は3万3995円になります。合計10万1985円で、「月額8498円」が天引きされます。
所得税は夫も妻も控除を差し引くと0円になるので非課税です。
 
また、住民税も非課税となります。そのため、毎月引かれる金額は国民健康保険料の7826円と介護保険料の8498円の合計額1万6324円です。
 

手取り額は約18万円

月に20万円の年金収入がある夫婦の手取り額は事例の場合だと、1万6324円天引きされるので18万3676円になります。2万円近い金額が天引きされるので生活に響いてしまう可能性があります。そのため、ねんきん定期便の額面ではなく、手取り額を把握することが大切です。まずはいくら受け取れるのかを確認し、老後の生活に備えてください。
 

出典

厚生労働省 令和6年度の年金額改定についてお知らせします
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
国税庁 No.1199 基礎控除
国税庁 No.1191 配偶者控除
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー