親にとっては、子どもはいつまでも子どもであり、その行動や生活を心配するのも当然です。すでに社会人となっている場合は比較的安心感を抱けますが、しかし、収入があまり高くなければ、心配は尽きないでしょう。30歳を迎えようとしている子どもの年収が250万円の場合、転職をすすめた方がよいのか悩むのも無理はありません。   今回は、同ケースにおいて、平均的な年収と比較しながら転職の選択が最適かを考えます。

30歳前後の平均年収

国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」の結果によると、日本人の平均年収は458万円でした。
 
男性の平均年収は563万円となっています。25〜29歳の男性の平均年収は420万円です。30〜34歳の男性の平均年収は485万円となっています。これらの平均と比較すると、来年30歳を迎える男性の年収が250万円というのは、低い可能性があるでしょう。
 
・業種によっても平均年収は異なる
民間給与実態統計調査の結果には、業種ごとの平均年収もまとめられています。それによると、「電気・ガス・熱供給・水道業」は747万円と、ほかの業種よりも多い結果でした。
 
一方で、「宿泊業・飲食サービス業」の平均年収は268万円です。平均でこの額のため、同業種に従事しているのであれば、年収250万円は平均的ともいえるでしょう。年収が多いかどうかは、業種ごとの平均との比較も重要です。
 

転職で収入が上がるとは限らない

収入を上げる方法の一つとして、転職が考えられるでしょう。しかし、転職で必ずしも収入が上がるわけではない点は押さえておく必要があります。厚生労働省の「令和2年 転職者実態調査」の結果によると、転職により収入が上がった人の割合は39.0%でした。
 
それに対して、転職後に収入が減少した人の割合は40.1%となっています。もちろん、調査対象が異なれば結果も異なるでしょう。また、数年働き続けると、転職前よりも収入が増えるケースもあります。
 
ポイントは、転職により収入が上げられる能力や資格を持っており、現職で実績や成果を残せているかです。転職できたとしても、収入が上がらず、勤続年数が途切れることで昇進が遅くなったり退職金額が減ったりするリスクもあるでしょう。転職をすすめる場合は、そうした点も考慮しなければいけません。
 

年収以外にも目を向けてみよう

自分の子どもの収入を心配する気持ちは分かりますが、転職は最終的に本人次第といえます。年収が低くても仕事にやりがいを感じていたり職場環境に満足していたりする場合は、無理に転職する必要はないでしょう。転職の意思がある場合は、現職で実績を積み上げてからでも遅くはありません。
 
周囲や平均と過剰に比較するのではなく仕事や職場と多角的に向き合い、子ども自身に合っているかどうかで最終的に判断する必要があります。
 

転職するかどうかは本人の気持ち次第

30歳直前の男性で年収250万円は、平均と比べると低い可能性があります。しかし、宿泊業や飲食業に従事している場合は、そこまで極端に低いともいえないでしょう。親としては転職をすすめたくなる気持ちも分かりますが、転職で必ずしも収入が上がるとは限りません。
 
また、本人が収入よりもやりがいや職場環境などを重視している可能性もあります。結局は本人の気持ち次第のため、無理に転職をすすめるのは避けた方がよいでしょう。
 

出典

国税庁 令和4年分 民間給与実態統計調査−調査結果報告−
厚生労働省 令和2年転職者実態調査の概況
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー