就職する職場によっては給与口座を自由に設定することができず、会社が指定した金融機関の口座のみを給与口座にするというところもあります。そのため給与口座のためだけに指定の銀行口座を開設する必要があり、転職が多いと使用しない通帳がたまっているということもあるでしょう。   このように長らく使っていない口座のことを「休眠口座」といいます。休眠口座を放っておくと、引き出しができなくなり、最終的に国のものになるといううわさを聞いたことがある人はいませんか。本記事では元銀行員の筆者が休眠口座について詳しく解説します。

休眠口座とは

「休眠預金等」とは、2009年1月以降の取引から10年以上、入出金等がない預金等をいいます。休眠口座になると通帳やカードが「凍結」状態になるため、ATMや窓口での現金引き出しや通帳記帳ができなくなります。
 
10年以上取引のない口座がある場合、金融機関は預金者に郵送等により通知をし、預金者等の住所等が確認できない場合はHPで公告した上で、休眠口座として預金保険機構に移管されます。
 
預金保険機構に移管されるといっても、預金が国のものになるわけではありません。いったん国庫に入りますが、国庫に入ったあとでも預金者の意思でいつでも預金を引き出すことができるのです。
 

休眠口座になると困ることも

休眠口座に入っても預金は預金者のものですが、休眠口座になることで生じる預金者にとってのデメリットもあります。
 

すぐに引き出せない

休眠口座は預金保険機構に移管されているので、金融機関ではいわゆる「凍結」状態となっています。そのため休眠口座を復活させるには、口座復活の手続きが必要です。またその際に通帳やカードを紛失している場合は、通帳やカードの再発行の手続き、あるいはもう使用しない場合は解約の書類に記入する必要もあります。
 
筆者も銀行窓口にて口座復活の申請を受けたことがありますが、休眠口座となっている口座の当初の口座開設届を探し出し、本人かどうか確認する作業もあるので、申請から口座の復活まで最低でも30分はかかっていました。
 
口座復活に付随する申請の内容や窓口の混み具合、金融機関によって異なる細かい規定によってはさらに時間がかかることもあるでしょう。
 

手数料がかかる場合も

金融機関によりますが、長期間取引がない口座は未利用口座として手数料がかかることがあります。例えば、りそな銀行では2004年4月1日以降に新規開設された口座のうち、2年以上取引がない普通預金に関しては年間1320円の未利用口座管理手数料がかかります。
 
三菱UFJ銀行でも同様に2021年7月1日以降に開設された普通預金口座のうち、2年以上取引がない場合は年間1320円の手数料が必要になります。細かな規定や手数料は金融機関によって異なるものの、休眠口座や未利用口座には多くの金融機関で手数料が必要になることを覚えておきましょう。
 

不要な口座は解約するのがおすすめ

使わなくなった通帳は放置していても預金が失われることはありません。しかし休眠口座になってしまうといざ口座の残金を使いたいときに時間が必要となるだけでなく、金融機関によっては未利用口座として手数料がかかることもあります。
 
休眠口座、未利用口座にしないためには定期的に預金の預け入れや引き出しをおこなうようにしましょう。また今後使う予定がない口座については、無駄な費用をカットするためにも思い切って解約することをおすすめします。
 

出典

金融庁 長い間、お取引のない預金等はありませんか?
りそな銀行 普通預金口座の未利用口座管理手数料について
三菱UFJ銀行 未利用口座管理手数料(2021年7月以降に新たに普通預金口座を開設されるお客さま)
 
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級