2022年1月、レジ袋大手の「スーパーバッグ」が希望退職者を募集したことが話題を集めました。有料化に伴いレジ袋の販売が減少したこと、また新型コロナウイルスの影響などから、同社の経営が悪化したことが原因です。スーパーバッグは、全社員の約8%の人員削減に踏み切ります。

レジ袋の有料化は、2019年6月3日に当時の環境大臣が方針を示し、本格的に法整備が進んだ経緯があります。このことから、一部では「スーパーバッグの経営不振は国のせい」と非難する声が上がりました。

レジ袋有料化は誰が決めた?

レジ袋有料化を巡っては、環境大臣を務めたことがある小泉進次郎氏が批判のやり玉に挙がることが多いようです。しかし、実は小泉氏の在任期間は2019年9月から2021年10月で、レジ袋有料化の方針が示された2019年6月の環境大臣は原田義昭氏でした。

原田氏は2018年10月の就任直後からレジ袋の有料化について言及しており、同施策の議論を主導したとみられています。また2019年6月に開催されたG20大阪サミットにおいては、当時の経済産業大臣だった世耕弘成氏もレジ袋を有料化する方針を示しています。

このように、レジ袋の有料化は小泉氏が環境大臣に就任する前から確定的でした。小泉氏が発案者であるかのような誤解が広がったのは、小泉氏がレジ袋の有料化が実施された2020年7月に環境大臣だったこと、また2019年9月の国連気候行動サミットにおける“セクシー”発言が注目され環境大臣のイメージが定着したことなどが理由だと考えられます。

もっとも、レジ袋の有料化は政府が独断的に実施したわけではなく、民間からの要望も根強くありました。例えば日本スーパーマーケット協会は2005年からレジ袋有料化を求める要望書を提出しているほか、日本経済団体連合会(経団連)も2018年11月にレジ袋の有料化を盛り込んだ意見書を提出しています。国がレジ袋の有料化に踏み切った背景には、民間からの圧力も働いていそうです。

結局プラごみは減ったの?

有料化に伴い、レジ袋を利用する人は減っているようです。環境省によると、コンビニエンスストアやスーパーマーケットでのレジ袋辞退率は上昇し、使用枚数や国内流通量は大きく減少しました。

【レジ袋有料化の効果】

 

出所:環境省 レジ袋有料化(2020年7月開始)の効果

上記を見れば、確かにレジ袋の有料化には効果があったといえそうです。しかしこの施策はプラスチックごみ対策の1つとして導入されたのであり、レジ袋の利用量を減らすことは直接の目的ではありません。レジ袋の有料化は、プラスチックごみを減らす効果を持っているのでしょうか。

端的にいえば、レジ袋の有料化が実施された年はプラスチックごみが減りました。前年に850万トンも排出されていた廃プラスチックは、2020年に822万トンにまで減少しています。またリサイクルされず焼却や埋め立てで処理された量も、同じく125万トンから112万トンまで減少しました。

【廃プラスチックの総排出量と未利用量】

プラスチック循環利用協会「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(2021年)」より著者作成

ただし、廃プラスチックにおけるレジ袋の割合はおよそ2%といわれており、その有料化が単純にこれほどの減少をもたらしたとは考えにくいでしょう。プラスチックごみは近年減少傾向にあることから、2020年は単にその流れを引き継いだだけかもしれません。また新型コロナウイルスの影響によって経済活動が制限されたことも、プラスチックごみが減少した理由として考えられそうです。

大打撃パッケージメーカーの株価が急騰した理由

冒頭に紹介したスーパーバッグは、もともと原材料や仕入れ品の価格上昇などから利益が安定しない状況に陥っていました。そこにレジ袋の有料化や新型コロナウイルスの影響などから売上高が大きく落ち込み、2022年3月期まで2期連続の最終赤字となってしまいます。

【スーパーバッグの業績】

スーパーバッグ 決算短信より著者作成

スーパーバッグは経営不振からの脱却を目指し、2021年6月に中期経営計画を策定しました。不採算事業やコストの削減を進めつつ、環境に配慮した製品の開発や新規事業の創設などを目指すものです。数値目標としては、2024年3月期までに売上高260億円、営業利益4億円を目指すこととしました。

この取り組みは早くも効果が表れています。スーパーバッグは事業の見直しや固定費の削減に取り組み、2023年3月期に4億5000万円の営業利益を見込む予想を発表しました。市場も好感し、同社株式は大きく値上がりしています。人員削減まで断行したスーパーバッグの改革は、とりあえずは成功を収めているようです。

【スーパーバッグの株価】

Investing.comより著者作成

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。