香港の投資会社オアシス・マネジメントは2024年4月3日、花王に経営改革を求める提言を公開しました。声明では「花王の株価は1株当たり1万円を超え、現在の株価水準から76%以上上昇する」と明言しています。
1万円まで上昇するなら花王は上場来高値(9387円、2018年10月2日)を更新することになります。投資家の関心を集め、翌営業日は一時7%超まで買われました。
業績不振で株価は低迷 増配も投資家に響かず
オアシスは声明で花王の株価パフォーマンスの見劣りを指摘しました。
花王の軟調は2020年に始まります。値下がりは長期化し、直近5年間で約3割下落しました。同じ期間、TOPIXは69%上昇しています。
花王の株価低迷の原因と考えられるのが業績の悪化です。
花王は2019年12月期に営業最高益を記録しました。しかし翌期はコロナショックで苦戦します。売り上げは持ち直したものの利益の減少は続いており、2023年12月期まで4期連続の営業減益となりました。最終減益は2019年12月期から5期連続です。
今期(2024年12月期)は回復を見込んでいますが、コロナ前からは遠い水準です。
花王は減益が続く中でも増配を続けました。今期も増配を予定しており、連続増配記録は35に達する見込みです。なお2023年12月期の配当性向は158.9%でした。これは純利益を超えて配当を支払ったことを意味しています。
実力以上の配当で花王はなんとか「配当貴族」としての体面は保っています。しかし上述の通り、株価の回復には至っていません。投資家は、もはや増配だけでは満足しないようです。
花王は「理解ない」と反論 オアシスの提言とは
苦戦が続く花王ですが、オアシスは投資妙味を感じているようです。オアシスは花王が「キュレル」や「ビオレ」といった魅力的なブランドを多数所有していることに着目し、「潜在価値の宝庫」と評しています。
オアシスが公表する資料によると、オアシスと花王の対話は2021年6月から始まり、2023年9月以降はより強化してきました。しかし経営陣と意見が一致することはなく、公開キャンペーンに打って出たようです。
オアシスは現在の経営陣では花王のポテンシャルを十分に引き出せないと断じ、以下5項目を実行するよう迫っています。
① | 主要な化粧品およびスキンケアブランドの国際的な成長に重点を置く |
② | グローバルな経験を有する最高マーケティング責任者(CMO)または同等の人材を直ちに起用し、マーケティングに対する同社のアプローチの変革を行う |
③ | ブランディングおよびマーケティングの経験を有する社外取締役を任命する |
④ | 低採算のブランドおよびSKU※を削減する |
⑤ | 情報開示の透明性を向上させる |
※Stock keeping Unit:在庫管理の最小単位
オアシスの提言の翌日、花王は課題解決の視点を歓迎するとしつつ、以下のリリースで反論しました。
……(略)……オアシス・マネジメントの主張では、2023年度決算で示した積極的なポートフォリオ管理と構造改革について、残念ながら十分な理解がなされていません。花王は、中期経営計画「K27」において、主力ブランドへの投資によるグローバルな成長を追求しています……(略)……
「K27」とは花王が推進中の中期経営計画(2023年度〜2027年度)です。初期段階は構造改革を行い、その後に成長領域の拡大と新規事業で成長を目指しています。
【花王の中期経営計画「K27」の主な財務目標】
2023年度 | 2027年度 (目標) | |
営業利益 | 1147億円※1 | 過去最高の更新※2 |
海外売上高 | 6558億円 | 8000億円以上 |
ROIC(投下資本利益率) | 4.1% | 11%以上 |
EVA(経済的付加価値) | 149億円 | 700億円以上 |
※1.構造改革費を除いたコア営業利益(営業利益は600億円)
※2.過去最高は2019年度(2117億円)
花王は自社の計画を進める方針を改めて示した一方、オアシスは花王の計画を不十分と指摘しています。現時点では両者が歩み寄る可能性は低そうです。
しかし将来的には何らかの合意に発展するかもしれません。
オアシスは2024年4月8日、花王株式の3%以上を保有していると明かし、2025年の株主総会で株主提案に踏み切る可能性にも言及しています。オアシスが投資家の支持を集めるようなら、花王にとって無視できない存在となります。
花王がオアシスとの対話に前向きになれば、再び花王の株価が上昇するかもしれません。
花王は新NISAでも買える 成長投資枠の仕組みを紹介
将来の株価上昇を見込み花王への投資を検討している人は、新NISAの活用を視野に入れたいところです。新NISAではインデックスファンドなどが人気ですが、実は個別株式にも投資できます。
新NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2種類の枠が設けられています。どちらの枠も自由に選択できます。併用も可能です。
新NISAの2つの枠のうち、個別株式に投資できるのは成長投資枠です。年間240万円まで、累計では1200万円(つみたて投資枠と合わせて1800万円)まで投資できます。
【新NISAの概要】
成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
対象商品 | 株式 投資信託 | 一定の投資信託 |
投資方法 | スポット投資 積立投資 | 積立投資 |
投資可能額(年間) | 240万円 | 120万円 |
投資可能額(累計)(※) | 1200万円 | 1800万円 |
非課税期間 | 無期限 | 無期限 |
※両枠を合わせて1800万円が上限
ただし配当金を非課税で受け取るには「株式数比例配分方式」を指定する必要があります。配当金の受領方式の一つで、配当金を証券口座で受け取る方法です。
新NISAで花王に投資する際は、必ず株式数比例配分方式を選択するようにしておきましょう。