■要約



泉州電業<9824>は、独立系では国内トップの電線の総合専門商社である。仕入先は約250社、在庫商品アイテム数は約5万点に上り、「必要な商品を、必要な分だけ、必要なときに届ける」というデリバリー体制が強みである。自社開発のオリジナル商品で差別化を図っている。



1. 2024年10月期第2四半期の連結業績(実績)

2024年10月期第2四半期の連結業績は、売上高66,125百万円(前年同期比6.9%増)、営業利益5,104百万円(同18.6%増)、経常利益5,327百万円(同18.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益3,674百万円(同22.7%増)となり、売上高・利益とも過去最高を更新した。平均銅価格は、1,322千円/t(同8.1%増)であった。増収の主な要因は実需が堅調に推移したことに加えて銅価格が高値で推移したことによる。ただし、第1四半期に比べて第2四半期(会計期間)は、一部顧客向けが低調となりやや失速した感がある。製品構成の変化で売上総利益率は前年同期比で0.6ポイント改善し、販管費が同5.3%増と予算内に留まったことから営業利益は同18.6%増益となった。



2. 2024年10月期の連結業績(予想)

2024年10月期通期の連結業績は、売上高132,000百万円(前期比5.6%増)、営業利益9,600百万円(同14.7%増)、経常利益10,000百万円(同14.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益7,000百万円(同18.2%増)と予想しており、第1四半期決算発表時に修正した予想(営業利益9,200百万円、経常利益9,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,600百万円)からさらに上方修正した。平均銅価格は1,482千円/t(前期比20.3%増)との前提だ。自動車向けが堅調であることに加え、建設向けの利益率が改善しつつあり、さらに上半期にやや失速した半導体製造装置向けなどが下半期には回復すると見ている。銅価格については、最近の動きはやや乱高下しているため、今後の動きには一段と注意を払う必要があるだろう。



3. 中期経営計画:中計の目標である経常利益100億円は射程内で新計画発表の可能性も

同社は、2026年10月期を最終年度とする中期経営計画を発表している。主な重要施策は以前から掲げていたものと大きくは変えていない一方で、定量的目標として2026年10月期に売上高1,500億円、経常利益100億円、ROE10.0%以上を掲げた。しかし上記のように、進行中の2024年10月期の予想経常利益が既に100億円に上方修正されていることを考えれば、この目標が進行している期中に達成される可能性は高い。そのため2024年10月期終了時点では、新たな中期経営計画が発表されるものと弊社では見ている。新計画の内容及び定量的な目標がどのようなものか楽しみではあるが、単に定量的目標を達成するだけでなく、今後同社が質的にどのように変わっていくのかにも注目したい。



4. 株主還元と資本効率改善にも前向き

同社の財務体質は良好であり、加えて「今後は資本効率を改善し、まずはROE10.0%以上を目指す」としている。その実現のための具体策として、配当を継続的に増配しており、前期は、当初は年間80円配当を行う予定であったが、業績が好調なため最終的には年間110円へ増配した。さらに進行中の2024年10月期は、当初は年間120円の予定であったが、好調な上半期の業績を受けて年間130円(上期65円、期末65円)への増配を発表済みである。これで、実質11年連続の増配※となる見込みだ。



※2019年10月期は設立70周年記念配当を上期5円、期末5円実施。





加えて同社は、自社株買いも積極的かつ継続的に行っている。進行中の2024年10月期も既に2024年4月10日までに270千株(1,000百万円)の自社株買いを完了したが、さらに2024年6月から10月末までに追加で100千株(500百万円)の自社株買いを行うことを発表した。また2023年12月14日には所有する自己株式1,500千株の消却を行っている。このような積極的な株主還元と資本効率の向上に向けた同社の姿勢は、大いに評価されるべきだろう。



■Key Points

・独立系では業界トップクラスの電線総合商社。オリジナル商品で差別化を図る

・2024年10月期は前期比14.7%の営業増益予想

・中期経営計画の目標として2026年10月期経常利益100億円を掲げているが、2024年10月期中に十分に射程内



(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)