県内の学生生徒による特産品開発などを支援する「フクラムカード」の会員は年々増え、個人、法人合わせ1万9千件に迫っている。地域資源に目を向け、古里の振興を考える若者の取り組みを後押しする意義は極めて大きい。今後は会員と助成先の学校が交流する機会を積極的に設け、全国に誇る県産品の創出につなげてほしい。

 フクラムカードは県、県観光物産交流協会、日専連ライフサービスが連携して発行するクレジットカードで、利用額の一部を支援に充てる。東京電力福島第1原発事故による県産品の風評払拭に向け、2012(平成24)年に事業が始まった。個人会員は利用額の0・1%分、法人会員は0・6%分を高校生や大学生、専門学校生の商品開発と販売促進活動に助成している。2023(令和5)年度末の個人会員は1万8076人、法人会員は157社・団体の計1万8681件で、特に企業・団体の加入が伸びているのが特徴という。

 上限50万円で、年度ごとに助成先を6件程度選定しており、これまで延べ51団体が採択を受けた。ラズベリー、くるみ、ミカン、キクイモといった特色ある果実、野菜を菓子や飲料に加工する取り組みが目立つ。創意工夫によって地域の食材にあらためて光を当て、商品化する若者の挑戦は有意義で、大人側の後押しは将来の地域振興の基盤づくりにつながる。

 フクラムカードを活用した事業を深めるには、会員と助成先が結び付きを強める必要があるだろう。福島民報社が主催する「ふくしま経済・産業・ものづくり賞(ふくしま産業賞)」は、学生部門と企業の受賞者が懇談する機会を表彰式に設けている。学生生徒は企業の担当者から製品開発や顧客獲得、販路開拓の助言を受ける。目を輝かせて傾聴する姿に、産業界とのつながりを求める熱意が表れている。フクラムカードの関係団体も、法人会員から技術的な指導を受け、個人会員から商品開発の要望を聞く交流会を定期的に開いてはどうか。

 若い感性と企業の知見、消費者ニーズの融合は、新たな県産品創出の可能性を開く。若い世代の県外流出を防ぐためにも、カードを通した県民との交流事業を一層充実させるべきだ。(菅野龍太)