学びの本質を突いた詩がある。静岡県の中学校教員だった故蒔田[まきた]晋治さんが60年近く前、子どもの背中を押そうと作った。最初の一行と題名は「教室はまちがうところだ」▼〈まちがった答えを言おうじゃないか〉〈おそれちゃいけない〉と呼びかける。出された答えを〈ああじゃないか こうじゃないか〉とみんなで言い合う中で、本当のことが見つけられると明言する。正しい答えでなければならない。そう思ってはだめ。教室で小さくなって黙りこくるようになると注意する。〈はじめから答えがあたるはずないんだ〉▼蒔田さんは当初、教え子の学級新聞につづった。共感した同僚が、教員の全国大会の会場に張り出すと、参加者が次々と書き写し始めた。2004(平成16)年に絵本として出版され、全国に広まった。県内の学校でも読み聞かせなどで活用されている▼新年度が始まり1カ月余が過ぎた。新入社員は仕事に慣れただろうか。失敗が続き、壁にぶつかっている頃かもしれない。でも、めげないで。道をよく間違える人が一番よく道を覚えると説く人がいる。元気な笑顔が戻る連休明けになるといい。「教室」を「職場」に置き換えても、まちがいではない。<2024・5・6>