訳ありの農産物が脚光を浴びている。傷が付いていたり、形がふぞろいだったりしても、味は変わらずおいしい。通常より安く、物価高のご時世も相まって消費者の心をつかんでいる▼福島市飯坂町の果樹園が今月上旬、X(旧ツイッター)に投稿した。「これだけで毎日数キロも取れるのは困る。これ売れるかな?」。今季、サクランボの実がくっついた双子果[ふたごか]の収量が大幅に増えている。多い日で10キロも。昨夏の猛暑の影響で、二つに分かれた雌しべが発生したのが要因という。山形など隣県の産地でも確認されている▼「販売方法が決まったら教えて」「双子チェリーぜひ買いたい」といった反響が寄せられ、正規品の半値以下で販売を始めた。「特売」の話題は徐々に広がる。県内外から客が訪れ、連日売り切れるほどの盛況ぶりという。思わぬ特需に産地は沸く▼規格外の商品が売れれば、農家が涙をのんで捨てる分が減る。消費者が気軽に旬の味を口にする機会は増える。スーパーやコンビニの一角に設けられる「訳あり商品」コーナーが日常の風景として、ますます定着するといい。食品ロスが減り生産意欲が高まる「双子の効果」が生まれる。<2024・6・17>