国の文化審議会(島谷弘幸会長)は24日、盛山正仁文部科学相に対し、会津若松市の東山温泉向瀧の庭園を国の登録記念物(名勝地関係)に登録、二本松市の二本松城の旧二本松藩校・敬学館跡と内大手地区を史跡に追加指定するよう答申した。近く官報に告示され、正式決定する。県内の指定史跡は計52件、登録記念物は計2件となる見通し。名勝地関係の登録は県内で初めて。


 東山温泉向瀧は会津藩の保養所を継ぎ、1873(明治6)年に創業した。庭園は江戸時代からの土地割りを基礎に、明治から昭和初期にかけて整備された。客室棟がコの字形に囲み、高低差のある斜面にサクラや落葉広葉樹が植えられている。春のサクラ、夏のホタル、秋の紅葉、冬の雪見ろうそくと四季折々の景色をさまざまな角度から楽しめる。温泉旅館によって運営された近代庭園の事例として意義深いとされた。

 敬学館は1817(文化14)年に設置され、戊辰戦争で焼失した。幕末期の絵図で確認され、二本松市教委の調査で、敬学館で使用していたと推定される灯明具が大量に見つかり、存在が明らかとなった。内大手地区の跡地は未発見だが、絵図から大手門と隣接する場所と推定され、史跡を構成する重要な土地と判断された。2007(平成19)年に二本松城跡が指定され、今回で新たに5147・10平方メートルが追加される。

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 文化審は、後期旧石器時代から縄文時代草創期の石器や炉の跡が見つかった福井洞窟(長崎県佐世保市)を特別史跡にするよう答申した。旧石器時代の遺跡が特別史跡となるのは初めて。このほか10件の史跡指定、2件の名勝指定、37件の史跡・名勝・天然記念物の追加指定を盛り込んだ。

 また、1970(昭和45)年大阪万博の「日本万国博覧会記念公園日本庭園」(大阪府吹田市)など3件を登録記念物に、「大谷(おおや)の奇岩群と採石産業の文化的景観」(宇都宮市)を重要文化的景観に選定することを求めた。

 史跡・名勝・天然記念物計3376件、登録記念物135件、重要文化的景観73件となる予定。


■産業や観光の振興に

 室井照平会津若松市長 長い歴史の中で所有者が大切に残してきた会津東山温泉向瀧庭園が、国登録有形文化財の向瀧、平田家住宅に続き登録記念物に登録されることは大変喜ばしい。地域の財産として地域活性化、産業や観光の振興につながることを期待する。


■歴史資源保存へ努力

 寺木誠伸会津若松市教育長 今回、会津東山温泉向瀧庭園が登録記念物に登録されることは、歴史や伝統文化の保存・継承に努めている本市によって大変意義深いことだ。引き続き所有者の協力を得ながら、今後も貴重な歴史資源の保存に努めていく。


■日本の美しさ感じて

 平田裕一向瀧社長 毎日の手入れの積み重ねが評価され、うれしい。山と川に挟まれた傾斜地だからこそできた庭園で、季節ごとに違った顔を見せてくれる。水の音や風の流れとともに、日本の美しさを感じてほしい。心休まる庭園となるよう守り続けていく。


■価値の明確化図る

 三保恵一二本松市長 すでに国史跡に指定されている内城地区、大手門地区との連携を深め、史跡の持つ本質的な価値の明確化を図るとともに市民の貴重な財産であり、本市のシンボルでもある史跡二本松城跡のさらなる保護、保存、活用を図っていく。


■史跡保護へ意義深い

 渡辺惣吾二本松市教育長 江戸時代後期に整備された藩校敬学館跡と城前の防御施設である内大手門があったとされる内大手地区は、近世城郭としての機能が整備される様相がうかがえる重要な遺跡で、史跡二本松城跡の保護、保存、活用を進める上で意義深い。