福島県と県内市町村が2023年度に受け入れた地域おこし協力隊員数は313人で、前年度を32人上回り過去最多を更新した。県内では市町村の受け入れ態勢の充実などを背景に隊員数の増加傾向が続く一方、活動を終えた隊員がその地域に定住する割合は全国平均を下回っており、人口減少に直面する中、受け入れた隊員をどう県内定住につなげるかが大きな課題となっている。
 総務省が5日発表した。県内の隊員数の推移は【グラフ】の通り。23年度は県と52市町村が隊員を受け入れ、市町村別では楢葉町の21人が最も多く、田村市、桑折町、磐梯町が各15人、南相馬市、西会津町が各14人、喜多方市、二本松市、玉川村が各13人と続いた。都道府県別では北海道(1084人)、長野県(461人)に続いて全国3番目に多い。県によると、隊員の約1割が行政職員としてまちおこしに携わるほか、農業や伝統工芸の継承、民宿やゲストハウスの経営などで地域を支える役割を担っているという。
 任期後の定住課題
 県内では、10年度からまちづくりに外部の視点を取り入れるとして受け入れが始まり、特に東日本大震災以降は、受け入れる市町村側の協力隊への理解や態勢が整い、地域課題の解決に隊員を活用するなどの流れが出てきている。
 ただ、制度開始から昨年3月末までに県内で原則1〜3年の任期を終えた元隊員308人のうち、活動した市町村や近隣市町村に定住した人は193人。定着率は62・7%にとどまり、全国平均の64・9%を下回る状況にある。県によると、隊員が希望する仕事と実際の活動内容が食い違う「ミスマッチ」が要因の一つとなっており、任期終了後の働く場の確保なども定着が十分に進まない理由になっているという。
 県は本年度から、ミスマッチの解消に向けた取り組みを強化する方針で、3月には受け入れ市町村や元隊員でつくる「県地域おこし協力隊サポーターズクラブ」を設立。隊員の受け入れ態勢や定住につながった事例などについて市町村間で共有を進めるなどし、任期を終えた隊員の県内定着の促進につなげたい考えだ。
 県は「地域活性化には任期終了後も定着する人を増やし、地域のリーダーとして継続して取り組んでもらうことが重要だ」(地域振興課)としている。