酒類総合研究所(広島県)は22日、2023酒造年度(23年7月〜24年6月)の日本酒の出来栄えを競う全国新酒鑑評会の審査結果を発表した。本県は18銘柄が金賞を獲得、都道府県別の金賞受賞銘柄数では2番目に多かった。2年ぶりの「日本一」こそ逃したが、入賞銘柄数は31と全国トップとなり、「日本酒王国」の技術力の高さを示した。
 全国から828点が出品され、予審と最終審査の決審を経て195点が金賞に選ばれた。金賞受賞銘柄が最も多かったのは兵庫県の19銘柄。山形県が14銘柄で3番目、長野県が12銘柄で4番目だった。
 県内の金賞受賞蔵元では、記録の残る01酒造年度以降で、白井酒造店(会津美里町)が11回連続、千駒酒造(白河市)が4回連続で金賞に輝いた。
 福島市では、金賞受賞蔵元を招いたセレモニーが行われ、県酒造組合の渡部謙一会長や鈴木賢二特別顧問、内堀雅雄知事が18蔵元の功績をたたえた。祝福に訪れた市民らには、金賞受賞酒が振る舞われた。
 本県は、新型コロナウイルス禍で最終審査が中止となった19酒造年度を挟み、9回連続(12〜21酒造年度)で日本一を達成していた。昨年の金賞受賞銘柄は14銘柄で、全国で5番目だった。
 日本酒、王国の技...健在
 【解説】金賞銘柄数のトップとの差はわずかに一つ。総数18銘柄という数字は堂々たる結果だ。入賞銘柄数が31で全国トップという結果を見ても、9回連続日本一から全国5番目に沈んだ前回の衝撃を払拭し「日本酒王国」が健在であることを改めて示したと言える。
 ワインの世界では「当たり年」といわれる年がある。これは原料のブドウの糖分がどれだけ高く生育したか、つまりはブドウの品質に頼った結果だ。一方で日本酒に「当たり年」という表現はない。日本酒の味わいは不確定な原料の品質に頼るものではなく、コメを酒に変える職人たちの技によるものだからだ。
 前回は不運があった。全国的に使われる酒米の王様「山田錦」が高温の影響で硬く生育し、仕込みでの扱いが難しかった。前回トップの山形県は、約半数の蔵元が同県オリジナル酒造好適米「雪女神」を使い、山田錦の難を逃れた。前回2番目で今回トップになった兵庫県は、駄目だとなれば造り直しが可能な"体力"のある蔵元が多いという。翻って本県では、データと経験を基に杜氏(とうじ)たちが一発勝負の仕込みで高品質の日本酒を造り上げている。
 ある蔵元は「毎年同じ造りでは駄目。狙った味わいに調整するのが技」と話す。コメの特性を見抜き、理想に仕上げる職人の高い技術は、本県が世界に誇る大きな宝だ。
 消費量低迷の課題を抱えながら、各蔵元は高品質の日本酒を造り続けている。度数の低いものや、ラベルデザインをかわいいイラストにしたものなど、販売増に向けた試行錯誤も多い。その努力を知れば知るほど、飲めない人でも「福島の酒っていいよね」と感じることだろう。(阿部裕樹)
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 全国新酒鑑評会 1911年から続く国内最大規模の清酒鑑評会で、今年で112回目。酒類総合研究所と日本酒造組合中央会の共催。1製造場につき1点出品できる。研究所や国税庁の職員、醸造の専門家、酒造関係者らが香りや味を総合的に審査し、入賞のうち特に成績が優秀と認められた出品酒に金賞を贈る。