西郷村の林に県に無許可で盛り土をした上、中止命令に従わなかったとして、白河署は23日午前7時35分ごろ、森林法違反(無許可開発、中止命令違反)の疑いで茨城県つくば市、会社役員の男(59)を逮捕した。同署によると、県南地方を中心に県内で危険な盛り土が相次いで確認された問題で、容疑者を逮捕したのは初めて。
 逮捕容疑は、昨年12月上旬〜今年2月中旬の間、知事の許可を受けず、自らが所有する西郷村真船の林に1ヘクタールを超える規模で盛り土を造成するなどの開発行為を行った上、県から1月中旬に中止を命令されたにもかかわらず、2月中旬まで開発行為を続けた疑い。
 同署によると、男は無許可で開発したことは認めているが、中止命令違反については容疑を一部否認しているという。
 捜査関係者によると、男は建設残土とみられる土砂を受け入れ、所有する林に積み上げていたという。土砂は主に関東方面の県外からダンプカーで現場に運び込まれていた。県は、逮捕容疑となった1カ所を含む西郷村の3カ所、矢祭町の2カ所の計5カ所で県外から持ち込まれたとみられる盛り土を確認している。
 同署は、男がほかの盛り土の造成にも関与していた可能性を視野に入れて調べている。
 県は昨年12月、西郷村から相談を受け、中止命令を出したが、男が応じなかったため今年3月中旬ごろ、同署に刑事告発した。同署は県警生活環境課と捜査した。
 土砂受け入れ収益か
 県南地方を中心に県内で危険な盛り土が相次いで確認された問題は23日、西郷村の林で盛り土の造成が無許可で行われたことにより刑事事件に発展した。捜査関係者によると、容疑者の男は、自身が社長を務める茨城県の会社で土砂処分を手がけ、ほかの業者からも建設残土とみられる土砂を受け入れるなどして収益を上げていたとみられる。白河署などが実態解明を進めている。
 捜査関係者によると、男は他県で過去に盛り土を造成し、中止命令などの行政処分を受けていたという。同署などは、ほかに関与した人物の有無を調べている。
 危険な盛り土が見つかった問題を巡っては、県は3月、盛り土規制法に基づく規制区域に西郷村と矢祭町を指定した。逮捕容疑となった盛り土の造成は規制区域への指定前だったため、県は既存の森林法を適用して対策を講じたが、男が中止命令に応じず、刑事告発に踏み切った。
 規制区域は9月までに、県内全域に拡大される見通し。県は、今回の現場とは別に、盛り土がある西郷村真船地区の1カ所でボーリング調査をしており、結果を踏まえて改善命令の必要性や内容を検討する。
 西郷の山林、今も広範囲に
 逮捕容疑となった現場は西郷村真船地区の国道289号沿いで、山林の中に大量の土砂が盛られている。高さは10メートルを超え、山林の谷から大量の土砂が広範囲に積み上げられている。
 現場から約1キロ離れた場所に住む70代男性は、大量の土砂を運び込む関東ナンバーのダンプカーを目撃し「深夜でも日中でもダンプカーが通り、うるさかった」と振り返る。村独自の盛り土規制条例が昨年12月に制定されて以降、車両は見かけなくなったという。
 真船地区には高さ約10メートルの危険な盛り土がもう1カ所ある。近所の60代男性は「行政が調査を進めて、早く安全に住めるようにしてもらいたい」と話した。