台湾の半導体製造の大手「TSMC」の初となる工場が熊本県菊陽町に完成したことを受け、周辺ではさまざまな変化が起きている。

その1つが不動産価格の上昇だ。

東京ドーム4個分の巨大工場が町にもたらす“半導体バブル”の影響について、地元の不動産業者、アズマシティ開発の第一営業本部、秋吉潤副本部長に聞いた。

地価が2.5倍以上に高騰

ーーTSMCの工場が稼働したことでどのような影響がある?

地価が値上がりしています。

我が社の土地も、4、5年前は1坪18万円で取得できたのが、今の取引価格はだいたい50万円を超えています。

工場がある菊陽町の家賃もどんどん上がっていて、今では熊本市内よりも高くなっています。

約10年ほど前は、1LDKの間取りは5万円ほどでしたが、今では新築だと7万円を超えます。

ーー不動産業者としての対応は?

新規の建設が増えています。

現在はほとんど空室がない状態で、今後も需要が見込めることから、来年度3月までに約800世帯、20棟ほどの新築を予定しています。

土地が売りに出たら随時購入し、建設の計画を立てている状況です。

ただ、これだけ注目されているので、福岡をはじめ大阪や東京の業者の参入も増え、土地の取得がだんだん難しくなっています。

東京並みの通勤ラッシュ

工場周辺の家賃が上がったためやむを得ずほかの街に引っ越しをする人や、周辺道路の大渋滞など住民生活に大きな変化をもたらすTSMCの新工場。

近隣の店舗や従業員の採用にも変化が出ていると秋吉さんは話す。

ーー入居者はどういう人たち?

法人の従業員が大半を占めていて、半導体関連や建設会社の関係者が多いです。

もともとは、ほとんど外国人のいない地域でしたが、今は台湾の人たちが増えています。
そのため近くのショッピングモールでは外国人向けの商品棚ができたり、中国語を話す人が増えたことを実感しています。

ーーアズマシティも特別な対応をしている?

我が社の取り組みとしては、外国の方に対応できるように、外国人スタッフを1人採用して、4月から対応に当たってもらいます。

これまでは台湾の人が来た時、お互いに英語がちょっと苦手な場合はコミュニケーションに苦労し、現地の案内などで難しいものを感じました。

“半導体バブル”を実感

巨大工場は、菊陽町で働く人の時給を約1.5から2倍に押し上げるなど、文字通り“半導体バブル”をもたらしているという。

ーーバブルを感じる?

土地の値段が上がってきていることはもちろんのこと、我が社の福岡の支店にも問い合わせが増えていて、バブルなんだなと正直感じるところはあります。

これまでは「TSMC」と言う社名を出しても皆さん反応がなかったのが、今では月に4〜5件はその関連で問い合わせがあります。